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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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エクスキュート

 「わ、わかってる!!」


 「すみません。

 エンさんを、頼みます」


 僕には死体の処理の仕方なんて分からない。

 なので気絶させた数人が起きるのを待った。


 さすがに僕でも、起きてすぐに自分を倒した相手がいたら立ち上がれないのは分かっている。


 ⋯⋯だけど。

 


 ーー「『託す』」


 

 「──どうかできるだけ、優しくお願いできますか」


 「「「「えっ?」」」」


 「どうするのか知りませんが、安らかに、優しく、苦しまないように」


 彼は、表向きに見たら駄目な人だ。

 しかし実際は、全てが悪だけではなかった。


 死の間際、彼から見た記憶のようなもの。

 普通に受け入れていたけど、どこの場所だったのだろう。


 けど、あの二人が同じような人間であることは間違いない。


 ──もしかしたら。

 

 「⋯⋯⋯⋯」


 下でエンさんを担ぎ上げようとしている数人が目に入る。


 もしかしたら。

 この人達も"何か"⋯⋯あるのではないか。


 見ただけでは分からない人間のやって来たこと。


 僕は、表向きの事柄だけで人を判断していたのかもしれない。


 本当はもっと、根深くて、苦しくて、血反吐を吐く思いで生きてきた"生存の記録"なのかもしれない。


 「あ、あの!」


 ハッと集団に目を向ける。

 じっと見ていたからか、みんなの視線は怯えている。


 「こ、殺さないんすよね?」


 「はい。

 エンさんをしっかりと天へと送ってもらえれば」


 脚を引きつりながらも、彼らは街の中へと消えていった。


 「さて」


 思ったよりも時間が掛かってしまった。

 けれど調査をまだ続行出来る事には違いない。


 「もう少し進もう」


 そう駆け出し、僕もこの世界に溶け込んだ。







 「ん?」


 やっと帰ってきた。

 僕の帰るべき場所に。


 「あっ、エオー!」


 子供、そしてベルさん達が僕の方へと駆け寄ってきてくれる。


 「ただいま調査から帰りました」

   

 「詳しい話は後で聞くとして、とりあえずご飯を」


 にっこりと笑うベルさん。


 「調査はすげぇ重労働だ。

 まずは体力回復からだ⋯⋯ん」


 ぶっきらぼうにそう言うけれど、手にはオコン。


 「トリスさん⋯⋯もう少し優しく言ってくれても⋯⋯」


 「ぁ!?」


 オコンで作ったおむすびというやつだ。

 疲労回復に良いそうだ。


 手軽に作れるし、かなりの効果が期待できるものの、オコンは絶滅しそうだったらしい。


 自分で言うのもなんだけど、救世主だって言ってくれて満更でもないかな⋯⋯なんて。





 「そうかい。

 二十から上はやはり難しかったか」


 「俺が行った時もかなりの精鋭が並んでたんで、エオには重いと思ってましたが、お前よく行けたな」



 ーー「『エオ』」



 言うべきだろうか。

 あの時のこと。

 

 その後向かった場所で、実験をした。

 時を遡ること二十一番通りでの時だ。



────

───

──


 『まだ大人になって間もねぇな⋯⋯殺っちまおうぜ、俺達も奴隷が手に入ると思えば楽勝よ!』


 あの時、僕の頭の中に入り込んできた──使い方。


 『|断罪の短剣・鎮魂の記憶エクスキュート


 落雷の音と共に、僕の手にはエンさんの短剣がそこにはあった。


 『てめぇ』


 拳が迫りくる。

 けれど、一瞬の事だった。


 『っ!?ちょこまかと!』


 なんだ?

 なんか身体が⋯⋯少し軽い?


 僕が習ったのは、ベルさんから習った動きだけ。


 けれど今の回るような動き⋯⋯僕は知らない。


 『くっ⋯⋯』


 まただ。

 避けただけではなく、短剣を持ったまま相手の顎に僕の膝が入る。


 ここでもそうだ。

 明らかに僕の動きじゃない。


 もっと荒くて、戦ってきた人の⋯⋯


 『はっ⋯⋯』


 雷がそこで僕の身体に、走る。

 意味を少し"理解"した気がした。


 思考はいらない。

 とりあえず、本能に任せよう。


 『うっ⋯⋯』


 身体が勝手に動く。

 

 腕の構えが少し変だけれど、相手の頬に右、左、右右上って本来の僕の力ではない速度で入り込んでいく。


 もっと言うなら、外しても滑り込むような凄みがある。


 戦い慣れていて、場数を潜り抜けてきたような。


 『いい加減に⋯⋯』


 相手の攻撃を柔らかい体の動きで這いつくばりながら、顔に僕の蹴りが入る。


 そのまま腕を短剣で切り裂き、僕は直立で相手を見下ろしていた。


 『⋯⋯⋯⋯』


 『ゴホッ、ゴホッ!』


 なんだろう。

 まるで自分が自分ではないかのような。


 この負けないような感覚。

 一体なんだろう。


 "今なら何をやっても出来る気がする"。


 『っ、違う』


 そんな事の為に戦っている訳じゃない。

 


────

───

──



 「ベルさんのおかげで、なんとか」


 「んだよ、兄貴の強さなんてのは誰でも知ってるんだから⋯⋯そうですよね?兄貴」


 「何もなかったかい?」


 「え?」


 「エオの顔が、珍しく暗かったから」


 ⋯⋯鋭いなぁ、ベルさんは。


 「大丈夫ですっ!」


 大丈夫だ。

 僕は浪漫の為に強くなるのであって、あの時みたいにはならない。


 それに、まだまだやるべき事もいっぱいある。


 「⋯⋯⋯⋯そうかい」


 「ところでよ、お前、なんか強くなったか?」


 「へ?どうかしたんですか?」


 「なんか、なんつーか⋯⋯なんか変だよ」


 「変って?」


 「オーラって言うの?

 なんか人が変わったみてぇに憑き物が付いた⋯⋯っていうか」


 そんなに変わったのかなぁ?


 「まさか。

 どうしちゃったんですか?」


 「んー⋯⋯まぁいいか?

 でも絶対何かがおかしいと思うんだけどなぁ」


 「エオはエオだ。

 そこに何も問題はないだろうね。


 トリスもこう見えて勘が鋭い。

 くれぐれも何かあった場合はすぐに言いに来ること⋯⋯いいね?」


 「あ、兄貴」


 「はい!」


 そうだ。

 何かあってから言えばいい。

 それまで、みんなには内緒にしておこう。


 この事は。

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