調査<2>
さて、先程はルンデルバーンという勢力だったけど、そんな勢力いたかなぁ?
⋯⋯あまり記憶にないな。
「と、いけない」
戦争中でのんびりしているわけにも行かず。
ガンガンやって行かなきゃ。
「よいしょ」
そのまま五十から順に進む。
四十、三十と、しっかり調査していく。
「凄い光景だ」
五十は一番端ということもあり、激しいと言ってもここ程ではない。
三十番通りからは、言葉にするのも憚れる。
全員が常に殴り合い、農地からどれだけ奪い取れるか。
⋯⋯そこしか考えていないとまで思える人間しかいない。
水滴に映る自分の顔がそれを物語っている。
「⋯⋯ん?」
そんな中上から眺めていると。
奥の方で一人の大人と数人の子供が走っている。
遠くから見ているだけでは分からないんだけど、恐らく子供を守っている大人にも見えた。
「僕以外にも居たんだ。
──良かった」
大人は全員悪人という認識だった。
でもあれは、背負って走っているのを見ると、善良な人のようだ。
どうにか⋯⋯
「まずい」
手前からその大人を追う数人。
既に追われていたのか。
どうにかしないと。
「いや」
もう迷ってはいけない。
ここまでの情報は調査済み。
ここから先はまた行けばいい。
情報は、これ以上いらないと思う。
「行ってきます」
飛び降りて、追っている猟犬達を今度は僕が追う。
「チッ!」
「アイツ⋯⋯早え!」
追いついた!
「「⋯⋯っ!?」」
「何!?」
走る二人の顎を蹴り上げ、振り返る。
「早く行ってください!!」
「なんのつもり?
⋯⋯男に借りなんて作りたくないんだけど」
本当だ。
大人の女性?
でも今はそんなこと、どうでもいい。
「そんな事は後でいいでしょ!
早く行って!!
自分の命優先!」
「──変な男」
そう吐き捨て。
「アンタの名前は?
一応聞いとく」
「エオです!
貴女の名前は?」
「スザク、レーシャのスザク」
「レーシャのスザク⋯⋯分かった!
早く行って!」
「恩に着るよ」
「てめぇ!」
「っ!」
動き出した片割れの一人を空中で踵落としを入れ込み、床に倒す。
「そこまで。
あの人たちには追いつかせないよ」
「て、てめぇ!」
んっ?
「チッ、折角今が縛り時だってのによ!」
応援か!
「っ!」
くっ⋯⋯追加で五人。
中々だ。
「へぇ〜女と子供を庇う大人⋯⋯ねぇ?」
応援に来た一人の男が僕にそう言って、手には黒く揺れる短剣が握られていた。
恐らく夜だ。
「なんですか」
間違いなくこの人、強い。
みんながこの人に譲っている。
「なんだお前」
「だからなんですか」
「あぁ?
なんで庇うんだよ」
「当たり前の事です」
「⋯⋯助ける事が?
ハァ?頭大丈夫かよ」
ゲヒヒヒと笑い声が僕に全方位から向けられる。
「労働に利用価値を感じるのが弱いガキのまま縛った子供。
女はもう片方の役割。
それを助ける奴は馬鹿のやることだ」
「そうですか?
必死に逃げてましたけど」
「だからなんだ?」
「共存出来るじゃないですか」
「共存?馬鹿言うなよ。
あんな何も出来ねぇ足手まとい⋯⋯誰がわざわざ置きたがるんだよ」
笑い声が、僕を包む。
まるで人を人とも思っていない、そんな人間の笑い声だ。
「そうだろ?
一人で満足に飯も用意できない。
何かあれば大声で叫ぶだけ。
利用価値がある所に置いてやってるだけだよ」
話が通じないか。
「まっ、所詮は綺麗事だ。
世の中は弱肉強食。
みんな無意識にやってる事じゃねぇか」
ゆらゆら短剣を回しながら嗤って僕を見下ろす。
「村の良い所だよなぁ?
人間の生き方をこれとなく説明している。
──弱い奴はさっさと従え。
強い奴は君臨し続けろ。
なんてわかりやすい世界なんだってな」
「⋯⋯⋯⋯」
「女と子供を助ける?
利用価値のない捨て石じゃねぇか。
助けて何になる?」
「あなた方に利用価値がなくても、僕にとってはあります」
「例えばどんな?
あ、悪いな。
攻撃しないのは、時間稼ぎもあるが、それ以上にお前という人間が凄く今興味が湧いているからだ」
「⋯⋯どういう事ですか」
「見たことがない。
女と子供助ける大人の男。
犯して殴って言うことを聞かせなきゃ動かないゴミ⋯⋯どうやって助けようと思って、どうやって生活していくのかをな」
その眼は、本当にそう言っているような眼つきだ。
僕を品定めしている。
「女子供は僕達と同じ、人間です」
「んで?」
「生きていく価値があります」
「価値?どこにある?」
「価値を奪っているのはあなた方では?
ただの私利私欲でしょう?」
「私利私欲ぅ?
だから、あいつら自分たちで飯も用意できねぇ碌でもない存在なんだって。
それで俺達に対して穴向けるだけで食えるんだから十分だろ」
「殴る必要はありませんし、下に見る必要はありません」
「俺達がいなかったら生活できないやつに価値なんぞ感じん。
まっ、お前はきっと何もしてこなくても問題ない才能ある大人なんだろうよ」
「おい、エン。
殺るのか?」
「あぁ。
ただの理想を掲げた何もできない大人らしい」
両手の拳が燃える。
⋯⋯それも全員。
「まぁ、別に良いがよ。
結局世の中──」
⋯⋯⋯⋯来るっ!!
「強え奴が掟を定めて、強え奴が全て決めんだ。
お前みたいな奴がしゃしゃんじゃねぇゴミ虫が」




