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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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知っている

 ──え?


 「えー⋯⋯と⋯⋯」


 風が、ピタッと止んだ。

 

 「今、吹いてなかったよね?」


 勘違いにしては凄く指定通りの場所だ。

 

 「⋯⋯⋯⋯こんにちは?」


 疑問混じりの問いかけ。

 しかし返事は返ってこない。


 「まぁ風を吹いてくれたってことは、お話ができないってことだもんね」


 どうしよう?

 でも、これで少しだけ晴れた気がする。


 「あっ、痛くないですか!?」


 もしかしたら根っこを踏まれたりして怒っているかも?


 そう思って触ってみると。


 「あれ?」


 "エオ"


 頭に浮かぶ、僕の名前。

 思わず根っこを見てしまう。


 「僕の名前、呼びました?」


 "エオ"


 というよりも、なんで知ってるんだろう?

 

 "19"


 「じゅうきゅう?」


 確か、じゅうきゅうっていうのは、昔の数え方だったはず。


 「あ、19って読むんだ。

 ということは、何かが19なんですね」


 気付けば正座をしながら僕は植物とお話?をしていた。


 "叶う"


 「叶う?」


 "エオ、好き"


 「え?本当ですか!?

 僕も好きですよ!」


 好きというのは愛情表現だ。

 植物のみんなも、人を好きになったりするんだ。


 新しい発見だ。


 "でも、ニンゲン、嫌い"


 「僕⋯⋯ニンゲンですけど⋯⋯」


 "エ、オは、19。だから"


 19って何か意味が違うのかな?

 僕の知ってる数の数え方と、植物さんから見る19は違うのかな?


 「19ってなんですか?

 僕が19っていうのは何か意味があるのでしょうか」


 "ニンゲン、の世界の呼び方、分からない"


 "19、は、エオ、ニンゲン、だった"


 ⋯⋯"だった?"

 話がドンドン分からなくなっていくけど。


 「僕は人間ですよ?」


 "もう、エオ、しか、いない"


 そうお話すると、気付けば何かが僕を包み込んでいるような感覚がある。


 美味しい風というか、なんというか。


 "エオ、私、達は、知っている"


 違う声?

 もしかして、植物のみんなの声が?


 立ち上がって周りを見る。


 「実はみんなお話出来るんですか?」


 "終わり、y、hw"


 「ん?なんて言いましたか?」


 なんて言ってるのか分からない。


 "エオ、ヤひy、19、ヤひy、は、終わり"


 「終わり?僕が?」


 "これ、で、最後"


 「最後?最後というと⋯⋯」


 なんだろう?


 "知ら、なくてもいい。エオは19だから"


 「んーそうなんですね。

 ところで叶うっていうのは?」


 "エオ、叶えたいこと、ある"


 "ここにある花、⋯⋯で、叶う"


 色々な植物が突然僕に語りかけてくる。

 叶う?叶えたいこと?


 「⋯⋯ベルさん?」


 もしかして、"そういう事"?


 「ありがとうございます!

 痛みはありませんか?」


 "ない、けど、これ、一つだけ、エオの作る土、美味しい"


 「土⋯⋯あぁ!皆さん土が好きなんですね」


 今度違う場所でも作ってみようかな。

 土か⋯⋯色々やってみようかな。


 「本当にありがとうございます。

 まさかお話できる日が来るなんて」


 "でも、ニンゲン、は、お話、出来ないよ"


 「⋯⋯僕はニンゲンだよ?」


 何か意味があるのかな。


 "エオ、は、19だから"


 「んー、その19が分からないのですが⋯⋯色々あると思いますからいつか教えてくれる日を、待ってます!


 ⋯⋯もう少ししたら摘ませていただきますから、そのときはまた来ますね」


 屈んで礼を言うと、ゆっくりと穏やかな風が吹いた。


 







 「遂に頭がおかしくなった訳じゃ無ぇんだな?」


 次の日。

 僕はトリスさんとベルさんに、昨日の出来事を話した。


 だがトリスさんの反応はまぁ、当たり前と言えば当たり前だと思う。


 ⋯⋯何が起こっているんだ?

 って。


 「植物との対話⋯⋯確かに聞いたことがないね」


 「兄貴、信じるんですか?」


 「信じろと言うにも何も、この世界には到底理屈では通らない事が数多く存在している。


 例えば、ここは南の場所だが、チーシャ率いるあちらでは、"天国の階段"と呼ばれる場所がある」


 「⋯⋯天国ってなんですか?」


 「何も苦痛を感じない場所だと言われているね。


 大昔の人が作った現実逃避の概念に当たるものだ」


 「そうなんですね」


 「天国の階段は面白くてね。

 どうやら"陽の光"と呼ばれるここにはない謎の"光"というものによって、私達は階段を上がろうとするとその光という存在に跡形もなく焼かれてしまうんだ」


 「光⋯⋯といえば、大昔にあったとされるこの世界にはない色⋯⋯でしたよね?」


 「そうだ。

 暗いというのも、この光の世界にいた存在がかつて居たからこそ、暗いという表現をしている事が多い。


 現在は処刑用に置かれているけどね」


 なんて使い方だ。

 ⋯⋯とは言えない。


 「何か言っていたかい?」


 「はい。

 もしかしたら、ベルさんの病気が治せるかも⋯⋯と」


 二人の空気が一瞬で変わる。


 「どういう事だい?」


 「ぼ、僕があの場所で読書をしていたのは、ベルさんを治したいと思って知識を応用する為にやっていた事なんです。


 ⋯⋯そしたら植物さんが、「叶うよ」って」


 二人は顔を見合わせている。


 「嘘にしては出来過ぎだな」


 「私もそう思うな」


 「後は、僕の事を19って呼ぶんです」


 「「19?」」


 「なんかヤひゥーって言ってる気がしてるんですけど、多分発声というか、言葉が理解できないんだと思います。


 人間の言葉で言うとヤひゥーってなるですけど」


 「なんだろうね、それ。

 面白い」


 「植物が喋る⋯⋯ねぇ」


 「終わり、とか最後、とか言ってて」


 「終わり?エオが?」


 「はい⋯⋯」


 その後、あった事を全て話したが、今まで一番理解できなかったのか、話は全く進まなかった。


 しかしベルさんはまた夜の時のように、考え込んでそのまままた本を読み出していた。


 ⋯⋯申し訳ないことをしてしまったかも。

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