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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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そうして人は上がっていく

 「⋯⋯っ?」


 あっ、トリスさんだ。


 「トリスさーん!」


 やっと帰ってきた。

 時間にしたら大したことなかったけど、長かったなぁ。


 「エオ、しっかり帰ってきました!」


 「っ、ばーか。

 帰ってくると思ったさ。


 ⋯⋯お疲れ」


 拳を突き合わせ、トリスさんが指し示す場所へと向かう。


 「ベルさん!エオです!」


 「⋯⋯あぁ、エオか。

 入って」


 扉を開けて中へ。

 ベルさんの部屋って、なんだか物があまりなくて落ち着かなそう。


 ⋯⋯どうなんだろ?

 僕もいつかお部屋を貰ったら意外と使わなかったりするのかな?


 「帰りました!」


 「そうか、お帰りなさい」


 ──お帰りなさい、か。


 「はい!帰りました!」


 「ん?

 なんでそんなにニコニコしているんだい?」


 「誰かにお帰りなさいって言われるって⋯⋯なんだか嬉しくて!」


 「エオは面白いね。

 でも気持ちは分かるかな。


 居場所があるというのは、我々にとって非常に個人が感じるもの以上に大事な事だからね」


 居場所という誰かの本を読んで、家族になるとみんなでいってらっしゃいと言ったり、お帰りなさいって言うことは普通だと知ったから。


 「あ、これ!」


 先生から返信用の手紙をもらったんだ!

 慌てて渡す。


 「んん。ありがとう」


 開けて中身を確認している。

 ゆったりと読み進めていくベルさんを見て静かな時間が過ぎていく。


 「エオはやっぱり聡明な子なんだね。

 サヴァンが褒めているよ」


 「⋯⋯本当ですか!?」


 頷きながらベルさんは柔らかい笑みを浮かべてくれる。


 まさか先生に褒められる日が来るなんて!


 「このままどんどん先へ進んで行ってくれることを願っているよ」


 「はい!」


 あっ。でも。


 「ベルさん!」


 「ん?」


 それでも報告はしないと。

 

 「あの⋯⋯えーっと」


 分かってはいたけど、勝手に使ってしまったし。


 怒られよう。


 「どうしたんだい?

 話してみないとわからない」


 「──力を使いました」


 長い言葉はいらない。

 結果だけ言えばいい。


 「⋯⋯⋯⋯」


 瞬きの一瞬だけど、ベルさんから力強い視線を感じる。


 そして手紙の擦れる音だけが聞こえる中。


 「⋯⋯そう」


 「え」


 怒られるとばかり。


 「ん?」


 「え?あ、あぁ⋯⋯」


 「怒られると思ったかい?」


 素直に頷く。

 すると紙を置いて、納得したように僕を見上げる。


 「顔」


 「え?」


 「何か理由があったんじゃないかい?」


 「はい」


 「それが分かったから構わない。

 私がエオに言ったのは、力を誰彼構わず使う事は止めなさいと言っただけ。


 顔を見ればすぐ分かるよ。

 エオのような子が、なんの理由もなしに使うはずがないだろうってね」


 そこまで考えてくれて。

 

 「ありがとうございます!」


 「理由を聞いておこう。

 何故使ったんだい?」


 「自分の浪漫の為です」


 「うん。

 君の浪漫は全員が友達になる事だったね?」


 「僕は大人になりました」


 「うん」


 「先生の酒場からここまでの道のり。

 手順に従って帰ろうとしました」


 「うん」


 「しかし、恵みから子供たちが降りてきて、猟犬達が向かいました」


 「そうか、エオはああやって見るのは大人になってあまりなかったね」


 「はい」


 「ごめんね。続けて」


 「帰りながら、子供たちが走り回ってる音と追いかける声が聞こえました。


 最初は無視しようとしました。

 僕は自由にさせてもらっているけど、僕はここの人間。


 みんなの迷惑になりたくないし、思いやりを忘れない。


 だからこそ、下を向き続けました。

 しかし無知な子供たちは僕に救いを求めました」


 「それで使ったのかい?」


 力強く首を横に振って、僕は答える。


 「それでも最初は無視しようとしてました。


 それでも考えました。

 自分と同じ子供。


 掲げていた僕の浪漫は、みんな友達なること。


 でも、気付いたんです」


 「ん?」


 「僕がやろうとしていたことは、友達が助けを求めたのにそれを振り払う行為だって」


 「⋯⋯⋯⋯」


 「目の前の大人達とも友達にならないといけないけれど、その思考力はまだない。


 けど子供は未来がある。

 見捨てるとは違いますけど、ただでも──なんの為に覚悟を決めたのかって」


 「⋯⋯⋯⋯」


 「そこでベルさんの言葉を思い出しました。

 力を使う時は今だって」


 「⋯⋯そうか」


 「僕は、自分と同じ子供を作りたくなくて、でも、自分はそういう立場ではないと思った結果⋯⋯こうなりました。


 でも悔いはありません。

 ありがとうございます!」


 「立派だね。

 そうやって、考えて行動を決める大人がどれだけいる事か」


 「教えてくれたベルさんには感謝しかありません」


 「それは努力の成果さ。

 ──そういえば」


 「はい?」


 「グランとバズウが、帰ってきたら一緒に収穫やろうと言っていたよ。


 折角覚悟が決まったんだ。

 ここらへんで息抜きをしてきなさい」


 ⋯⋯本当に良い大人の人だ。


 「ありがとうございます!!」


 一礼し、僕は農場の方へと駆け出した。

 これから、もっともっとみんなの笑顔を増やしていくために。


 その為にはまずみんなから笑顔を出させないと。

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