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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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比較

 更に訓練の日々は続く。

 トリスさんもなんだかんだ言いながら、子供達の面倒を見るのが慣れなのか⋯⋯それとも上手くなってるのか。


 多分両方かな。

 まぁ僕が言えたことじゃないんだけど。


 崖訓練をしている子供たちを助けながら何処か嬉しそうな顔をしているトリスが好きだ。


 朝。

 僕は崖訓練をかるーくしてから、ごはんの準備。


 本来なら僕がやることではないのだけど、子供たちには調理器具や危ないものが多すぎる。


 みんなのご飯の仕込みや未知を既知にする為、率先してやっている。


 今では毎日本二冊を読めるようになってドンドン知っていることが増えて行く。


 僕としては、これほど嬉しいことはない。


 調理が終わると農場の手入れだ。


 と言っても、僕のやり方では単純で、耕したりなどは本当に軽くしかしないので、収穫して新しい種を植えて終わり。


 異常がないかを確かめ、次の農場へ。

 この間子どもたちと接しているのもあって時間は結構かかってしまうけど。


 そして帰宅したらお昼ご飯。

 村では信じられないけど、大人になるとご飯は3回も食べられるって昔の自分に言ったところで信じるなんてことはしないだろう。


 食べ終わって、午後からは訓練だ。

 ただ今日はベルさんの体調が良くないから、トリスさんがやっている訓練を眺める事にした。







 「グラグラ、夜の調子はどうだ?」


 そこには口からこれでもかというほど血を吐いているグラン。


 ⋯⋯初めてグランが負けているのをちゃんと見た気がする。


 フラフラ膝を付いて今にも死にそうだ。


 「本当、手加減って言葉知らんすかね」


 「あ?俺が?

 ──する訳ねぇだろ」


 その時、僕には見えている。

 その背後を狙う、ニバの姿が。


 静かに。

 ただトリスさんの背後で狙い打とうと拳が動いた瞬間。


 「⋯⋯筋は悪くねぇな」


 「ぎぇっ」


 屈んで回りながらニバの顎を的確に蹴り上げる。


 ──今、ニバから凄い声が聞こえたけど。


 「はぁ⋯⋯お前らは相変わらずやることが単純でつまらねぇよ。


 なんかねぇのかぁ?」


 







































 ──想起せよ(クオリア)


 聞いたこともない低いその声に、僕はグランを見る。


 弾ける雷と共に、グランの手元には一本の鉄の棒が具現化していた。


 「いいねぇ」


 トリスさん、顔が嬉しそうにしわくちゃになっている。


 「俺は使わないでおいてやる。

 好きにやれ」


 「っ!!」


 覚悟の決まったグランが走り出す。

 やっぱり、速度が子供と大人では全くの別物。


 走っただけで土埃がすごい立つ。


 「っーなぁ。

 中々得物の扱いが上手いじゃねぇの。

 どこで習った?」


 見えない。

 けど、トリスさんが煽っているのはわかる。


 「習った事なんか──ねぇよ!」


 土埃を切るグラン。


 けど晴れるとそこには、振り下ろしに合わせ、トリスさんが脚で鉄の棒を弾き飛ばしながらグランの顔へと変な体勢から拳を一発おみまいしていた。


 あ、鼻血が。


 「っー!」


 「お前は卑怯な戦い方が得意なようだ。

 エオとは正反対だ」


 「⋯⋯だろうな」


 「土を投げたり、視線を逸らそうとしたり、そこで伸びてるちんちくりんすら囮に使おうとするその精神⋯⋯好きだぜ」


 「は?」

 

 生きるということ。

 その地獄では卑怯すら武器になる。

 ⋯⋯勉強になる。


 「そんな顔すんなよ。

 褒めてやってるんだから」


 「あんたバケモンだよ」


 「そりゃ12歳のガキにこの俺が負けたら⋯⋯それこそ笑いモンになっちまう。


 戦争の時代に⋯⋯兄貴程じゃねぇが、あの戦いの世代を生きた俺達が、今のこんなヌルい時代で負けるわけがねぇ」


 確か本で勉強した。

 今から500年前、本当の最初はもはや分からないけど、その時代ですら毎日が縄張りの取り合いの日々だってこと。


 村はなく、ただただ殺戮をする日々だと。 

 そんな人からすれば、村なんて場所、鼻で笑ってしまうのだろう。


 「ほら、来いよ。

 少しはマシになったところをよ」


 それからは圧倒的だった。

 グランの攻撃は当たることはなく。


 ただ力がグランを土に伏させる。


 「まぁまぁ、なかなか筋はいいな。

 今回のガキは」


 パンパンと手を払い。


 「エオ、お前相変わらず夜が使えねぇのか?」


 僕のところへやってきては、軽口を叩かれる。


 今一番気にしてるところだというのに。


 「ハッ、気にすんなよ。

 どう考えても、お前の夜は普通じゃなさそうだしな」


 「やっぱりそうなんですか?」


 「あぁ。そうだろーよ。


 普通グラグラとちんちくりんのように、大体最初のやり口を通過すれば使い方や能力の詳細が頭では理解できるようになるんだよ。


 どんなに馬鹿でもな。

 だがお前の場合はそれすら沸かず、なんなら知らん人間に会ったんだろ?


 今まで色々なやつを見てきたが、そんなやつ見たことねぇ。


 サヴァンだって最初は本には驚いたけど、実際のところ使い方はすぐにわかったみたいだしな」


 ⋯⋯あれ?

 もしかして僕のことを。


 「ほら、お前は優秀なんだから。

 グラグラの看病してやれ。

 あ、そこのちんちくりんもな」


 「「うぅ」」

 

 トリスさんを見上げる。

 ⋯⋯うん。

 

 励ましてもくれてるし、面倒くさくもあるんだね。

 

 「はい」


 「話がはえーじゃねぇか」


 「励ましてくれてありがとうございます」


 きっと優しい人でもあるんだろう。

 

 「⋯⋯なんだ、そのヘラヘラした顔は」


 「なんでもないです」


 本当僕は、つくづく優しい大人に拾われたんだろうなと思う。


 僕の野望の為にも。

 そしてこの勢力の目的も。


 ──僕が叶えられるようにもっともっと、頑張るんだ!

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