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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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35/70

北、六八番街

 「おい⋯⋯ッ!?」


 バキッ──!


 「ガァアアアアア!」


 床に崩れ落ちる一人の男。


 しかしその手を掴む⋯⋯雑に縫われた外套を羽織るもう一人の男が脚で肩を踏んづける。


 「んで?

 そろそろ答えてくれよ」

 

 顔は見えないが、深く被る外套の延長である顔部分が笑い声で揺れている。


 「し、しらない!!」


 「知らねぇだぁ?」


 外套を羽織る男は首を傾げる。


 「ほ、ほんとうだ!!

 俺はただここに来てお前を襲えば女と飯が貰えるって聞いて⋯⋯」


 グリュ、とその場に肉肉しい何かが擦り潰れた音が静かに余韻を残す。


 ──まるで絶叫の宴(パレード)だ。


 外套を羽織る男は髪を掴み、屈んで視線を合わせその顔をゆっくりと、1発ずつ殴り続けていく。


 「ほぉっ!!」


 「はい、"ダウト"」


 「ひょおっ!!!」


 「早く」

 

 勿論深く被っているのだから、表情は読めない。


 しかしだが、僅かに少し上ずり、震えている。

































 「俺唯一の""友達""が待ってんだよ」


 「とも⋯⋯ギャァアア!!」


 殴った拳を揺らす。

 すると眼下に広がっていく滴たる血。


 「本当⋯⋯俺達が夢見た世界にこれからどう変えていくんだ?」


 男の顔は原型を留めてはおらず。

 ただそこには。


 ただ、ただ──力があった。


 「吐け、依頼主は誰だ?」


 「⋯⋯※@※※<※@※※」


 「はぁ、駄目だ何言ってんのか分からねぇ」


 どうしたもんかなぁとガックシ頭を少し倒し、すぐに何かを閃いたようにまた上げる。


 「あぁ、そうだ」


 「へぁ?」


 「お前、誰か道連れにしたいやつはいるか?

 情報を共有しているやつだよ」


 「へ?」


 「ほら、今、お前がこうなっているのは誰のせいだ?」


 にじり寄る顔。


 「仲間で守ろうとしているんだろう?情報」


 「だ、だめだ!」


 「ちげぇよ」


 「え?」


 「仲間の中でお前より立場が上のやつがいるだろ?


 お前が吐けば、俺がちょっと遊んでやるよ」


 「⋯⋯⋯⋯」


 「ん?


 知ってるぜ?毎日毎日、わけも分からずあんな殴られて、踏まれて、尊厳は何処だって話だよな?


 土を耕して毎日毎日飯作らされて。

 どうだ?


 お前の周りで、上手く行ってるやつ──いるんじゃねぇか?


 お前の心に俺も応えてやりてぇよ。

 俺もやりたくてやってるんじゃねぇんだからさ」


 少しの沈黙。

 すると。


 「ここから⋯⋯少し離れた所に賭博場のダイヤがある」


 「おぉ」


 「責任者のイカルを⋯⋯⋯⋯」


 「おぉ、イカルな?

 ソイツは情報を持ってんのか?」


 「俺よりも頼みごとを引き受けているし、関与はしているはずだ⋯⋯これでいいだろ!?


 もう!もう!!」


 返事は虚しいビチャ!という風を歪め、切った音で終いだ。


 そこには横たわる人間だった肉塊。


 それをヤンキー座りをして、ただ眺める外套を羽織る男。


 「はぁ⋯⋯本当、くそったれだな」


 立ち上がり、背を向けて出口に手を掛けた時だった。


 「悪く思うな。

 お前の願いは叶えてやるからよ」


 そう一言残して、軋む扉をくぐる音だけがその場に残った。


 







 「おっ、それだ!」


 ⋯⋯賭博場。


 なんでもありなこの場所で、中央にある六角形の舞台で戦う人間を他所に、男たちが両手に女を抱き抱えながら優雅に眺めている。


 「そういやよ、ミテアの野郎最近随分おとなしいじゃねぇの」


 「あぁ?まぁ言われてみたら確かに?」


 「強そうなやつに片っ端から声掛けてぶっ潰しては、傘下に入れてく⋯⋯まるでイカれたガルだ。


 誰が好き好んで戦いたがるんだ?

 こんな勢力持ってよ、どう考えても損しかねぇ世の中でよ」


 数人の人間がそう語る中、出口方面で事件が起こる。


 「⋯⋯おい、なんか向こうで争ってねぇか?」


 少し見回し、部下の一人を呼びつける。


 「見てこい」


 スタスタ走っていくのを見つめ、鼻で笑う。


 「どいつもこいつも使えん野郎共だ。

 ここまで面倒みてやってんのに、仕事一つ満足にできないなんてよ」


 「あんまり言ってやるな。

 猟犬に頭がまともに回る人間がいるなんて思ってる方がイカれてる」


 「⋯⋯ハッ、どうだか」


 だが。


 「「「「おおっ」」」」


 二人の目に映る⋯⋯出口から部下の男が撃たれたように吹っ飛び、六角形の舞台にそれは磔のようにぶつかる光景だった。


 「おい、誰だ?」


 「客じゃねぇな」


 二人が立ち上がると、女達の顔が青ざめ、震えてすらいる。


 「「相手は?」」


 すぐ側に使える右腕たちが耳打ちする。


 「一人?

 なんだ、あいつらだって弱い奴じゃねぇだろ」


 「おおっ、イカルあれじゃねぇ?」


 「ん?」


 入口からイカルに向かって歩いてきている只者ではない空気。


 ──ほぉ?

 

 「なんだなんだぁ?

 最近はこの街も随分落ち着いたと思ってたが」


 「イカルの全盛期はまだまだだろうしな?」


 隣の"男"が横目でそう言う。


 「⋯⋯全くだ」


 しかし。

 イカルは内心警戒をかなり引き上げていた。


 なんだコイツ。

 夜の気配が"ねぇ"。


 ⋯⋯にしては力が強えなんてもんじゃねぇぞ。


 人二人を引き摺り回しながら来てるくらいの怪力はある。


 まぁよく見るタイプではあるが、夜を感じない奴は初めて見る。


 「おい、えれぇご機嫌だな、背丈からしてまだ大人になったばっかりか?」


 足が止まる。

 すると掴んでいた二人を投げ飛ばし、イカルを射貫く。


 「返事はなし⋯⋯か?」


 どうやらないらしい。

 目的は?


 情報が何もねぇ。


 拳を固めると、肩から燃え上がるような黒い炎が肘を伝って拳に到達する。


 「世間知らずだがなんだか知らねぇが、俺はイカルってんだ。


 この辺りじゃ有名なんだがな。

 俺は喧嘩は買うが、勝ったら全てを奪う奴だ。


 安易に来たんだったら帰りな。


 これくらいの後始末は幾らでもしてやる」


 食料なら腐るほどある。

 これくらい大したことはない。


 「歩き出す⋯⋯なら本物の挑戦者とみなす」


 瞳が燃える。

 闇炎が揺れ、周囲の人間に緊張が張り詰める。

 

 「うお、鳥銃のイカルだ」


 一人がそう呟くと、湧き上がりのボルテージと共に伝播していく。


 「さぁ、お前の夜を見せてみろ」


 「⋯⋯⋯⋯」


 「無視か。

 俺は自分が商品の時は最大限客を楽しませたい主義なんだがな」


 「⋯⋯⋯⋯」


 「仕方ない」


 久しぶりに動かすな。









































 ──いっちょ、殺り会おうぜ、新星坊主!!!

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