訓練<1>
そういえばなんだけど。
僕達に日付という感覚や時間の感覚があまりなかった。
少し前から覚えたことではあったんだけど、1日に時間があって、1年という時間で区切られているらしい。
12個の月があって、それらを細かくすることでいつかというのを分かりやすくしているんだって!
凄いよね、誰が作ったんだろう。
よくよく考えてみれば、そうだよね。
僕達って12歳っていう時間があるわけで。
ね?そうだよね。
先生頼りに過ごしていたから勉強してハッとした。
3回回るって事は、僕達は9歳の時にここにやってきたんだ。
みんなそうらしい。
周りもみんなそう。
と、いうわけで。
⋯⋯僕は目の前の広がる新たな大人を見て嬉しくなっている。
「おら、やってみろ」
トリスさんが子供たちを集めては僕の時みたいに教えている。
「ねぇ!ねぇ!
エオって大人になったのに、夜は使えないの!?」
隣に走ってやってきたウルにねだられてしまう。
⋯⋯い、痛いところを!
「ぼ、僕はまだ何故か使えないんだよね!!」
「そっかぁ」
体を丸めて寂しそうにしている。
「僕が夜を使えたら?」
「うん!
エオの夜がみたい!」
あぁ、そういうことか。
「──そっか」
少し嬉しくなってしまうな。
村の中ではデンデラ人気がありすぎて、僕なんて誰も見ていなかったから。
確かにウルとバズウは昔から僕に付いてきてくれていたし。
「エオ達のように光が降らなかったよね、ニバとグラン」
そうなんだよね。
でも多分だけど、僕が考えるに、村の外に絶対出すようにされたモノなんだと考えた。
だからこそだ。
「おぉ、お前女か」
「だからなんですか!」
「あァ?」
「あっ、ごめんなさい」
しゅんとしているニバを見るのは久しぶりだな。
「てかエオに感謝しろよ?お前」
「え?」
「女はほとんど夜をの開放をすることなく生涯を終える。
資源として全うする奴らがほとんど。
エオが言わなければ間違いなくお前は終わってただろうな」
「だからなんすか?」
グランが前に出た。珍しい。
いつもはどんな言葉にもヘラヘラしているのに。
「あ?」
「エオが英雄なのは誰もが知っている事実でしょ?」
「女の身で夜を与えられる事がどれだけ凄いのかってのを分かってねぇやつがほとんどなんだよ、ガキってのは」
「⋯⋯っ」
「お前とエオは他のガキに比べて頭が良い。
だがエオがいなければお前はただ少し頭が良いだけのガキに過ぎん。
だから言ってやってるんだ。
エオはお前らまでちゃんと見てる。
お前らもそれなりに考えろよ、そう言いてぇだけだ。
特に女──お前はな」
ちなみに僕は何も言えない。
何故ならここで匿う事が僕の取引した内容で、指導方法は僕は何も言えない。
ただ、乱暴にしないで欲しいとだけは言ったけど。
「はい、必ず役に立ちます」
「女、先に言っとくぞ?
男の世界に入るということは、甘えも同情も、一切ないということだ。
それでも夜を使うか?」
トリスさんの問いに、ニバは頷く。
僕は応援することしかできない。
⋯⋯頑張って!
「じゃあ始めるぞ?」
二人の背中に手を置き、トリスさんの夜が入っていく。
黒い風が、吹く。
「「っ!」」
「俺の夜が入っていくのがわかるか?
分かったら頷け」
二人は頷く。
「ドロドロとして、じんわり広がっていく感覚を持て。
背中のとこからすこーしずつ上と下に広げて行け」
だが、グランもニバも、顔から凄い汗をかいているだけ。
あれ?僕はすんなり行ったけど。
人によって違うのかな?
「ふっ、やっぱり特別だな」
一瞬僕の方を見て鼻で笑われた気がする。
な、なんですか!
「アイツはもうやってたぞ」
「「⋯⋯⋯⋯」」
ちょちょ!
あんまりやめてくださいよ!
「お前らとエオは違う。
それだけは忘れるな?
最近のガキ共はエオと自分たちは同じだという見方をしているガキが多いが、アイツは多分天才側⋯⋯兄貴のような類の人間だ。
お前らはアレを目指す必要はないが、代わりに力を磨け。
アレに近づく為には、こんなところで止まってる暇はねぇぞ」
二人は一生懸命やっているけど、それでもただ汗をかいて終わり。
「「っあぁ!」」
10分くらいやっていた。
けど全く進んではいなかった。
「な?
エオ、本来はこうなんだよ」
ニヤニヤしながら聞かないでくださいよ。
「僕は特別ではありません!」
「特別さ。
だから兄貴が目をかけている。
そもそも俺にあの時間、場所に行けと言ったのも意味がありそうだ」
⋯⋯知らないよ、そんな事は。
「まぁそんな顔すんなよ。
褒めてんだから」
「は、はい」
「ほら、続けるぞ」
それから二人の夜開放までに、時間にすると1ヶ月は掛かった。
僕がたった数時間も掛からない内に終わってしまったことがどれだけ普通じゃなかったのか⋯⋯トリスさんの意味を真に理解したのはその開放が終わってからの事だった。




