自然と触れ合ってみる
それからすぐにトマトを収穫し全員で食べた。
一言にすると、水よりも美味しい水だ。
齧り付くと水がこれでもかというほど溢れて、この一つの食べ物だけで全身が生き返る様な気持ちになったし、事実そうなってると思う。
⋯⋯それは言い過ぎかも。
ごめん。
ベルさんは勿論、トリスさんもトマトを見て目をギラギラさせてたのを見ると、やっぱり食べ物の品質や量が僕が頭で考えているよりも凄く多いんじゃないかってことが一つ思ったし、多分そうなんだと思う。
トリスさんと会ったあの時。
周りにいた人で村の子どもたちとあまり変わらない体つきだったし、少し力がある人も、食べれてるんだろうなってわかる差がある。
この差の事を格差って言うんだって。
食べ物がある人とない人。
力がある人ない人。
力はどうしても僕にはどうすることもできないっていうのは考えたら分かるし、夜のことも分からない、ましてやあの水一面で会ったっきり⋯⋯何も僕の夜は分からずじまい。
──けれど。
僕は。いや。
僕にしか出来ない事がこれではっきりした。
やっぱり友達を作って、みんなで分け合う。
これでいいし、その土台を作ることができるのは、今のところ考えると僕だけっぽい。
トリスさんとベルさんも、僕のやり方を聞いてもあまり納得いってなさそうなところを考えると、どうしても今までのやり方や考え方のようなところが止めてしまっているのだと思う。
最近凄く時間があるし、勉強をしていいよと言ってくれる二人だからこそなんだけど、こういう事を考えるといっぱい頭で悩みというか、考える事が凄く増えた。
勿論そんな簡単なことだと思ってはいない。
けれど考えることがどんどん必要になっていく。
例えばこの話もそう。
"大人と子供"──。
僕達のような子供は新しい事をドンドン発見していくけど、大人のみんなはもうある考え方や意見をそう簡単には変えられない。
それはきっと、その時あった自分たちの考え方が合っていたからだし、多分それでどうにかなっていたからなんだと思う。
でも僕は違う。
"その場をどうにかする"事が目的ではない。
"みんなから飢えを取るため"にやりたい事だ。
だからこそ、今までのやり方とは違うからどうしようもない。
ベルさんは凄く歩み寄ってくれてるけど、トリスさんは駄目そうだった。
それでも結果という答えが出ているからうんうんとはなっているけど。
「うん。
やっぱり自然と触れ合ってみよう」
最近考え過ぎちゃって頭がぼうっとする時がある。
僕は最近、いつもの事を終わらせると、すぐに足は山へと向かうんだ。
*
「んー!」
僕は山が好きだ。
心地いい風、心地よい匂い。
「ザラザラしてる」
木っていうんだって。
あの草も、同じではないけどもし大きくなったらこんな風になるのかな。
「こんにちは」
自然は"意志"を持ってる。
ベルさんは本を教えてくれながらそう言ってた。
でもすぐに関係ないけどね。
ベルさんは少し寂しそうに言う。
⋯⋯喋りもしないからこそ、僕は聞きながらそうとも思いつつも、違うだろうとも心の中ではそう思ってた。
植物は生命。
僕達人間も生命。
そう考えると、不思議だ。
同じ生命。
僕達が喋っている言葉とは違う言葉で喋っているかもしれないじゃない?
言葉はもっと丁寧だったけど、そう聞くと、ベルさんは言葉に詰まっていた。
困らせるつもりは全く無かったんだけど。
と、木に触れる。
「んー」
豊かにしよう。
そう思って、友達を増やすため、そして平和っていう一つの場所へと向かう為に必要なこと。
だけどその度に顔を出してくるのが格差、生命、価値。
強い人はそれだけで価値があって、弱い人は価値がない。
⋯⋯本当にそうなのかな?
風に吹かれながら、僕は二人分くらい入っていそうな木の前に座って語りかける。
「おかしいと思わない?
僕達も、君たちも、同じ生命なのに」
なんで価値の差があるんだろう?
それをなんでそう決めているんだろう?
その方が楽だから?
その方が"誰かが得をするから?"
「誰が?」
──強い人だ。
村でいっぱい見てきたじゃないか。
強いということは敵から身を守れる事であって、外敵を押しつぶす事もできる。
それを簡単にするには?
先に敵を倒すのが早い。
そうする事で弱い人達に暴力を与えて無理やり取ってこさせる。
それが⋯⋯今の人間?
「それって、どうなんだろう?」
でも、立場を考えなければならないよね。
強い人だって面倒くさいわけだよ。
だから取りに行かせる。
それを無理やりやらせていれば自分が楽をするから。
──だったらご飯を分ければ?
僕達が大人になる前、やってたように。
でも、あの子達が恐れていたのはデンデラ。
自分たちの縄張りにすれば良いものの、デンデラがいるから何もできなかった。
分け与えるだけでは駄目。
力も必要って事だよ。
「はぁ〜!」
寝っ転がると、思わず本音が漏れ出てしまう。
「みんな⋯⋯なんでそんなに戦うのかな」
空はあんなにキレイなのになぁ。
「ねぇ、自然さん。
あ、いや、友達って自然も友達になればいいのでは?」
⋯⋯良い事じゃないか?
「僕はエオって言います!
名前は?」
数秒の風が吹く音しかせず。
⋯⋯うん。
分かってた。
それでも横目で根っこを触りながら僕は喋りかける。
「僕達ってなんで争うんでしょうか」
ぶつけてるだけなのかもしれない。
「みんなで笑いあってご飯を食べる事って駄目なんでしょうか?」
少なくとも僕の今思う事を。
「殴り合うことが駄目ではないと思うんです。
でも、今のままじゃ誰も笑えないというか⋯⋯こうなんて言えば良いんですかね、強い人だけが得をするというか。
──あぁ!
別にそう言うことではないんですけど。
ただなんて言うんでしょう。
あ、幸せって言葉を知りました!
心が満たされて笑顔が溢れたり、誰かに優しくしたり出来るらしいんです!」
反応はない。けれど。
「僕はそんな風に変わっていくべきなんじゃないかって。
でも、どうもそうはいかないみたいで」
トリスさんは分かりやすく僕とは合わない人間だ。
戦いたがっているし、ロマンの為なら全部壊す怖さもある。
でもそれで良いのかな?
僕だけが幸せでは駄目だ。
みんなが心から満たされるようなモノにするべきで。
「どうしたらいいんでしょうか」
はぁ、最近情報がいっぱいあり過ぎて、困っちゃうな。
「よっと」
立ち上がって木に挨拶をする。
「僕ばっかり話してしまってすみません。
いつかお話ができたら待ってます!」
今日もまだ、やる事が残っている。
僕は足早に走っていくが、その答えが案外近付きつつあるのがその後分かることになる事になるとは⋯⋯まだこの時の僕は気付いていなかった。




