集
「これから大変だね」
「ははは。
僕の願いが叶って良かったです」
視線の先には、"子供"たちだ。
僕が願ったのは、村の中にいる自分たちの縄張りにいた子供たちの回収、そして共に進む事だった。
⋯⋯あのまま再会できないのは辛いから。
「エオ」
隣に立っているベルさんに一礼しながら現れたのはグラン。
「どうしたの?」
「あ、いや⋯⋯さ」
頭を掻きながら言葉を考えている。
珍しい。あのグランが。
「ありがと⋯⋯な」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯え?」
突然過ぎた。
僕の頭は一瞬言葉の理解を得る前に止まってしまっていた。
「なんだよ!
ありがとう!」
「なんで怒ってるの?」
色々言いたいことはあるけど、とにかく皆を集める事に成功した。
──トリスさんは嫌そうだけど。
「賑やかになるねぇ。
エオは聡い子だからこれほど未来に満ち溢れた声を聞くことになるとは」
「はい。
これからこの声を広げていけるように」
そうだ。
まだ何も始まっていない。
大人になれないということは、夜を使えないことと同じ。
今回ハッキリしたのは、大人になったら、突然身体能力が急上昇するという事だ。
崖の訓練もそうだし、夜もそうだ。
出来ることが一気に増える。
だけど、目の前にいる子供達はまだまだ成長段階。
使えるようになるまではどうすることもできない。
「エオ、デンデラは?」
「そんな気まずそうに聞かないでよ」
笑いながら僕はそう返すしか出来なかった。
トリスさんが色々調べてくれたみたいなんだけど、結果は何も見つからなかった。
どうやら分かったのは、12歳になると村にいる子どもたちは強制的に飛ばされるみたい。
そこはどこに飛ぶのか完全にわからないみたいで、探すのは困難になる。
デンデラの事だ。
きっと生きている。
「しっかし」
遠くからトリスさんがやってくる。
ちゃちゃを持って。
「これ、本当にエオが作ったのか?」
トリスが色々な子供に聞きまわっている。
嘘は付いていないけど、それでも確信が欲しいみたい。
「ほんとだよ!
エオは凄いんだよ!!」
「そうだよ!
おじさんもエオを馬鹿にするの!?」
「えっ!?
あっ、いや⋯⋯てかてめぇ今俺の事をおじさんとか言いやがったか!?
──このクソガキが!!!」
どうやら追いかけっ子が始まった。
意外と面倒みというか、色々良いのかもしれない。
あれだけ強いのに、トリスさんは凄い人だ。
「さて、ちゃちゃの話は行く前に聞いた。
この場所で出来そうかい?」
「3年試した結果になるのでまだ分かりません」
「私の感覚だが、トリスの後輩の話によると村と外での差はかなりあるみたいだから、もしかしたらこっちで同じ手法を取ったら早くなるかもしれないね」
「⋯⋯と、僕は信じているんですが」
今はこの交渉に恥じない働きをベルさんに見せないと。
*
「エオ!おはよう!」
「あぁ。
おはよう、ニバ」
相変わらず元気だ。
最初に会った時は少し顔がやつれていたけど。
「何かやることはない?」
「そうだね、ちゃちゃをあっちの方に埋めてくれる?」
この山という存在は面白い。
どうやら自然は村の土と同じ性質を持っているらしく、やり方は変わらない。
おかげで僕の手法が通じる可能性が高い。
しかも、土の範囲が広い。
まだこの場所は枯れている範囲が狭くて、最初から必要な草が生えている可能性もあるから無駄になる可能性も高い。
「エオ」
ニバが向かっている間、ベルさんが僕のところへやってくる。
「体は大丈夫なんですか?」
確か、トリスさんの話によると、心臓っていう部分が損傷?傷付くだったかな?
どうやら動くだけでも危ないって言ってたけど。
「夜で補助しているからね。
それよりも」
ベルさんの言いたいことはわかっている。
農場1号であるこの場所に既に植えて早4日。
「枯れていない土地で試すと早くなるというのはまだ分かりませんが、少し感覚が」
「感覚?」
「はい。
最初に生えてくる草が出てくる直前、なんかスーッとするような匂いというか、感覚があるんです」
「確かにそう言われると少し匂いが違うね」
僕はこの農地1号を見つめる。
お肉も限りがあることは分かっている。
ベルさんと約束したのは早い段階で結果を見せること。
「エオー、帰ってきたよー」
と、ニバがベルさんを見て、ちょっとピクッとする。
まぁそうだよね。
大人をいっぱい見てきてるから。
「ってあれ?
エオ、なんか小さいのあるよ?」
「「っ!?」」
指差すニバの元へと向かうと。
「⋯⋯っ!」
ほんのちょっとだけど、小さいけど伸びる草のようなものが見える。
手で少しだけ掘る。
⋯⋯間違いない。
「ベルさん!!
草が生えました!!」
「本当かい!?」
「まだ4日なので正確な事はこれからになりますが、僕の手法で3年掛かった村ではこっちでは4日ほどで生えるかもしれません」
びっくりしたのか、ベルさんは屈みながら完全に固まっている。
それもそのはず。
今の所ちゃちゃしかわからないけど、大人の農作業は少なくとも回収まで数ヶ月かかるものだから。
長いと年を跨ぐということは、僕のやり方なら飢える人が減るということだ。
「天が与えた才能なんて易しい。
──鬼才だ。
この世界が始まって、誰も導き出せなかったやり方だ。
もしかしたら⋯⋯本当に私達が座を奪い、頭として制覇できるかもしれない」
声が高くなっている。
ずっと求めていた事だからか嬉しそうだ。
それを見て僕も嬉しくなる。
そうだよ。
僕は間違っていない。
みんなが食べられるのなら、こうして奪わなくて良いんだから!
「エオ」
ベルさんは僕を見て、肩に優しく手を置く。
「君を拾って良かった。
さぁ、革命の準備だ」
これからみんなでやるんだ。
この場所から!!
「──はい!!」




