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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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球体

 「⋯⋯っん」


 「おう、目が覚めたか?」


 あっ、あれ?

 僕は寝ていたのか。


 「す、すみません」


 「構わねぇさ。

 どうやら夜の使い方で事故ったんだろ?」


 「事故⋯⋯?」


 「あー、ほら、なんかあったんだろ?」


 そう言われて、自分に起こった出来事を思い出す。


 ──っ、そうだ!

 

 「そうだトリスさん!」


 「お、おぉ。どうした?」


 「人に会ったんです!」


 「⋯⋯人?」


 起き上がってトリスさんの両腕を掴む。

 そうだ。


 僕はあのよく分からない場所で、僕のような顔をした人と。


 「なんだ人って」


 でも、トリスさんはわからない顔をしている。


 ⋯⋯駄目か。


 「エオ、ひとまずはご飯だ」


 「兄貴、足大丈夫ですか?」


 「あぁ。これくらい」


 「ベルさん!」


 僕は一瞬で起き上がって頭を下げる。

 

 「私にも責任がないわけではない。

 ご飯を用意した。


 エオ、こちらに来なさい」


 「はい!」








 「人に会った?」


 「そんな事を言うんです。

 へn──」


 「エオ?」


 「無視された⋯⋯」


 「最初から説明してもらってもいいかい?」


 困った顔をして隣で少しずつ食べるトリスさん。


 ごめんなさい。

 そして向かいに座ってゆっくり食べるベルさんに聞かれて、僕はあったままの事を話した。


 「ふん⋯⋯なるほど。


 "何もなかった"空間。

 下には水が広がっていたが落ちることはなかった。

 

 こちらを見てはいないが、何かを見下ろすように立っていた。


 気付けば人は居なく、そこには光る何かがあった。


 特徴は丸い、光る、グレーではないがそれに近い色をしていた。


 水のような通るもの。

 恐らくだけど、透き通るということだろうね。


 そして人がいて、その人は自分の似た顔をしていた。


 それは私より凄まじい気迫を持っていて、夜の威圧も強力。


 そしてエオに向かって喋りかけ、意識を失う」


 わからない言葉がいくつもあるけど、僕は全てを話す。


 「んでも、人に会うなんて俺聞いたことないっすよ?」

 

 「⋯⋯残念だが例外は世の中に沢山ある」


 「例外?があるんですか?」


 「あぁ。

 私も聞いた話だからね。

 だが、これは一部のみにしか伝えられない」


 あぁ、駄目なのか。


 「トリス、お前は?」


 「俺っすか?

 俺は雷っす」


 「⋯⋯雷ってなんですか!?」


 僕は立ち上がって聞く。

 なんか凄そうな言葉だ!


 「そうだね。

 雷は、現象の話だ。

 ただ、"ここ"にはない現象だから難しいけど、バチバチ光る夜を使う人間がいるだろう?


 アレを雷と一般的には呼ぶ」


 「アレを雷って言うんですね!」


 「本当、アイツの生徒だな」


 トリスさんがなんか言ってるけど、僕はそれよりも貰った木札に刻む。


 「私は宮殿だ。

 エオはその丸い物と言ったか⋯⋯。

 恐らく球体」


 「球体⋯⋯なんか変っすよね?」


 「僕って変なんですか?」


 「いや?

 変⋯⋯というよりも、通常、夜というのは能力で言えばかなり限定的なものなんだ」


 「限定的?」


 「拳に夜を纏わせる。

 足に纏わせる。


 武器を出す。

 武器に纏わせる。

 基本は身体強化が中心だ。


 ただ稀に、サヴァンのように本が出てきたり、私が知っている限り、特殊な夜を使えるようになったところで、使い方や象徴となるモノはどれも似通る。


 それこそ私が知っている"最近"の頭で最も強い男であるキングは、全身に行き渡らせることが出来て、手が付けられないほどの強者だ。


 加えて夜の容量も段違いだ」


 「はい」


 ⋯⋯知らない言葉、知らない人間。

 ドンドン増えていく。

 もっと勉強しないと!


 「しかし、使い方もわからない。

 象徴となるモノも君に似た人間が出てくる。

 あるのは球体。


 箱に入っていたのかい?」


 あっ、そうだ!

 なんか文字が書いてあったんだ。


 「なんか変な文字が書いてる箱でした」


 「文字⋯⋯刻印のことか?」


 「書いてもらえるかい?

 分かるところでもいいから」


 僕は突然思い出した文字をとりあえず書いてみる。

 こんな感じで、そうそう。


 「これです!」


 できた物を見せると、トリスさんは無反応でご飯食べ、ベルさん──


 「エオ」


 「は、はい?」


 「君は村出身だね?」


 な、なんか突然、声が低くなって怖い。

 どうしたんだろう?


 「は、はい」


 「本当にその中でこれを見た?

 正直に答えてほしい」


 僕の手をギュッと握って、ベルさんが聞いてくる。


 「は、はい」


 返事を聞いたベルさんは少し頷いて、深い深呼吸。


 「そうか」


 「な、何か変な事が?」


 「いや。大丈夫だ。

 ただね、この夜は⋯⋯」







































 ──誰にも言わないように。


 「えっ?」


 「私との約束だ」


 指をくっつけて僕はベルさんと約束する。

 なんだろう?

 やっぱりいけないものだったのかな?


 「はい!」


 「使い方が分からないなら、ゆっくり付き合っていくしかないだろうね。


 サヴァンも最初は苦労したそうだよ」


 「そうなんですか?」


 「あぁ。

 使い方は分かっても、制御や指定、様々なルールがあるんだ。


 ただ、使い方すら分からないのも初めて見るからこそ、慎重に進めていこう。


 トリス、しっかり面倒を見てくれ」


 「⋯⋯了解っす」


 「それじゃあ、今日から肉体を強くすることから初めないといけないね」


 そう笑うベルさん。


 だけど僕は、その顔からは想像もできないほど地獄のような目に遭わされる事になろうとは、この時の僕は分かってはいなかった。

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