畑
──"98"。
「ハッ!」
何?なんか夢を見ていたの?
全身がピリッとしたんだけど。
胸を起こして周りを見る。
まぁ誰も僕を起こしているわけでもなく。
僕と同じかそれ以下の子供たちが寝ている。
⋯⋯みんなで身体を寄せ合って。
「エオ、起きたか」
「デンデラ!」
「よっ」
隣に座るとデンデラは服の中から変な色をした点々が付いているパンをくれる。
「デンデラ」
「ん?」
「これってなんでみんな食べないの?」
「うわまずっ。
ん?そりゃ簡単だ。
⋯⋯もう食えねぇからだよ」
「でも僕達は食べるけど」
齧りながら鼻で笑って僕を見る。
「これは、食べれない状態になったパンで、俺達のようなガキが唯一食べられるパンでもある」
デンデラが言うには、パンはしばらく置いておくとこうやって腐っていくんだって。
だから普通の大人たちは食べない。
「前も説明しただろ?
それに、昨日も夜とか、サヴァンさんの言ってたことも忘れてたじゃねぇか」
「ごめん⋯⋯」
溜息をつかれてしまった。
「はぁ。まぁいいって事よ。
実際、エオ以外に俺の隣が誰も務まらないんだからな」
僕とデンデラは"同子"って呼ばれてる。
色々難しくて忘れてしまっているけど、一つ覚えているのはこの世界に産まれる時、凄いでかい穴からいっぱいの子供たちが落ちて来るってこと。
それは今でも変わらない。
大人は何が目的なのかが全く分からないんだけどね。
話がズレたかも。
そう、僕達はそれで、この村に辿り着いて年が変わって"もう少しで3年"⋯⋯大人になる。
「そういえばさ、この村ってなんで大人が入れないんだろうね?」
この僕達が村と呼んでる場所。
どれくらい広いかな?
とにかくいっぱいの子どもたちが入れる場所なんだけど、入る所になんか変なモノがあるのか、僕達はなんなく入れるんだけど、大人が入ろうとすると、壁みたいになって弾かれているのを何度も見ている。
「サヴァン先生が言ってたなそれ」
「そうなの?なんて言ってた?」
「恐らく夜の有無だろうって言ったぞ」
齧ってそう言うデンデラ。
「⋯⋯こんなモノ食えたもんじゃねぇ」
「駄目だよ、ちゃんと食べなきゃ。
デンデラは凄い強いんだから。
⋯⋯護ってもらわないと」
「⋯⋯あぁー?
頭使うエオが食えよ」
「じゃあお言葉に甘えて」
貰って一口。うん。
⋯⋯何も言えない。
「な?不味いだろ?」
「まぁね。
でも、僕達が食べられる食糧は多くないから」
「今日のご馳走は、飴玉と、あとはサヴァン先生の作ってくれたあの変なスープ。
あれ美味かったよなぁ」
「そうだね。
それと懐に隠した僕の採ってきた野菜少しと誰かの肉だね。
でも僕達はそれより、どうにか食料をここの全員分持ってこなくちゃいけないんだけど⋯⋯それに悩むよー」
「なんかずっとエオってあそこの土を何かやってるよな?
⋯⋯わざわざ触らせないようにして」
「確かサヴァン先生だったかな?
僕達の村って土が枯れてるらしいんだよ。
だから僕達が種を蒔いても意味がないって言うんだけど、でもあの時隣の人の土地の人に話を聞いたらさ」
「うん」
「なんか肥料っていうのがあればどうにかなるらしいんだよね」
「肥料?なんだよそれ」
「なんか動物のうんことか色々。
栄養になる部分があればいいんだって」
一緒に枯れた土地を見てデンデラに説明する。
「うんこ?俺達のじゃ駄目なのか?」
「駄目なんだって。
それでここに来た時に色々試したんだけど、僕的に何となくこれだ!っていうのがあって、今実験してるんだ」
「なんだよ、興味出てきたな」
「⋯⋯長くなるよ?」
「じゃあいいやー!
俺興味ない事頭に入らねぇタイプだから」
首後ろに手を回しててくてく消えていくデンデラ。
⋯⋯ていうかタイプって何?
「どうしよう」
「ねぇ!エオ!」
「エオ!」
「グラン、ニバ」
グランとニバは僕達より少し後に入った子達だ。
二人とも11歳で、遠征には数え切れないほど行って、生きて帰ってきてる僕達の中では強い仲間に入る。
「エオ、また土見てるの?」
「うん」
ニバがしゃがんで見下ろしながら僕を見上げる。
「これさ、確か2個前の年になんか草さん生えてすぐに枯れちゃった所だよね?」
「そう。
先生の近くの人たちに聞いても、肥料以外の答えを教えてくれないからね」
「でも全く変わらないね」
グランとニバが屈んで何も生えていない土を見つめる。
「でも僕の予想だとね」
「「⋯⋯?」」
見上げる二人。
「この草って1個前と違うんだよね」
「どういう事?」
「グラン、これ見て」
僕は近くのとっておいた草を見せる。
「あ、2個前の草だ」
「そう、それとこれ」
2つを並べてグランとニバに見せてみる。
「あっ!」
ニバが何か分かったように手を上げながら笑う。
「なんだよ、どうかしたの?」
「グラン!
この草さんとこの草さんはここの形が違うよ?」
「えぇ?」
目を細めてグランがよく見ている。
「あー⋯⋯確かにちょっと違うかも」
「そうだよね?エオ!」
「⋯⋯さすがニバ」
「ほら!見てよグラン!」
「⋯⋯そんな細かいところを見れる二人が凄いと思うけど。
それで?エオ」
やかましそうにニバの顔を手でどかして聞いてくる。
「そう。
2個前と1個前で生えてる草が違うんだよ。
それで三個目の年になる今さ、また違うのが生え始めてるの。
しかも、ここの土だけじゃなくて少し生えているところが広がってるの分かる?」
土の場所を手で見せて二人に説明する。
「あっ!本当だ!
小さい草がいくつも生えてる!」
「⋯⋯本当じゃん」
「これ、別に僕達何もやってないじゃん?」
「「うん」」
「肥料って言うのを蒔いてないじゃん?」
「「うん」」
「なんで生えてるの?」
「「んー⋯⋯⋯⋯」」
悩み始めてしまう二人。
「それでさ」
「うんうん!」
ニバが凄い勢いで食い付いている。
「こっち来て」
二人を連れてこの村の一番端っこの場所にある秘密の場所へと連れて行く。
「⋯⋯見て」
「「⋯⋯⋯⋯え」」
二人は言葉を失っている。
そう。
この二人に見せているのは、芽が出ている畑だからだ。
「なにこれ!?」
「本当に芽が出てる」
「僕の予想が正しかったら、もしかしてだけど」
「うんうんっ!!」
「必要な草が生えてるんじゃないかな?って思ったんだよね」
「「必要な草?」」
「そう。
先生の知り合いみんなに聞いたんだけど、草取っちゃうんだって。
というか取らないといけないんだって」
「なんで?」
「枯れる原因だからって言ってた」
「⋯⋯でも生えてるよ?ここ」
「そうなんだよね。
僕もそれが不思議で、今凄く悩んでるんだ。
けど、予想が合ってたら、もしかしたら今まで村の中でご飯を作れなかったっていう事が変えられるかもしれないって思ってあの日からずっとやってたんだ」
「凄いな、エオ」
「えー、そう?」
ちょっと嬉しくなっちゃうな。
昨日散々だったから。
「凄い凄い!!
もしかしたらここに植えたモノが食べられるかもしれないってことでしょ!?」
「そういうこと。
ニバもグランも、僕達が生きていたらどうなるか分からないけど、少なくとも僕が居なくなる前に、これを作れたらって思って」
「「⋯⋯⋯⋯」」
あれ?なんかちょっと変な空気?
「ニバ、エオがいないと嫌だ!!」
「そうだぞ、エオ。
俺達みんなエオとデンデラがいるから何とかなってるだけじゃんか」
「えー?そんなこと無いよ」
「デンデラは身体。
エオは頭脳⋯⋯なんてよく言うじゃん?
デンデラは強さを見せて、エオはこうやって違うところで凄さを見せつけてる。
今も毎日とんでもない子供たちがあの変な場所から降ってきて、大人たちに捕まってる。
エオとデンデラが居ればもしかしたら⋯⋯なんて言ってる奴らもいるくらいだぞ?」
「そんなに期待されても困るところはあるけど⋯⋯」
ちょっとむず痒い。
「そう。
話を戻すけど、ただ、芽が生えたって事は、この植えたゴミって言われた種なんだけど、どうなるかは僕も知らない。
食べられないかもしれないし、食べられるものかもしれない。
だから二人共⋯⋯この事はしばらく喋っちゃ駄目だよ?」
真剣に話すと二人は黙って頷く。
「もし上手く行ったら⋯⋯デンデラと4人で食べてみよ?」
「おう」
「うん!」




