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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
子供編

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1/17

エオとデンデラ

 こんにちは。


 一応ですが、あらすじを読まれていない方がいると思いますので、ご一読いただいてからの読み出しでお願いします。


 作者もあらすじを読まないタイプなので念押しさせてください。










































 ──地獄とは、一体なんだろう?


 「オラッやれやれ!」


 ──生きるとは一体、なんだろう?


 「助けてぇぇェェエエ工!!」


 「お前は黙って媚び売っとけばいいんだよ」


 嫌になる。

 いや、むしろそんな事を思うのは今の所──"僕だけ"。


 他の子供たちはそんな事を言わない。

 僕からしたらこの世界は、おかしい。


 「ほら、まだこんなんでも容赦しねぇぞ?

 むしろ興奮すんだよ」


 思わず目を伏せる。


 「あぁ」


 耳にこべりつく叫び声。

 聞こえる。

 

 あぁ泣いてる。

 うっ⋯⋯殴られてる。


 あ、小石の音がしたから蹴った。


 どうしようもなく頭を抱える。


 ぼくは、僕は⋯⋯どうしたら良かったのだろうか?


 遠征で同じ組になった女の子。

 仲間⋯⋯いやそうじゃなくても、ここに来るまでに見てきた。


 「オラッ!」


 右は⋯⋯見れない。

 あの子が泣いている。


 隙間から左を見る。

 見えるのはそこら中でいっぱいの⋯⋯殴り合いの喧嘩。


 「俺はキャを賭けるぜ!」


 みんなは、"今日"を生きるというのは簡単なのだろうか。

 

 え?僕?


 んー。

 少なくとも⋯⋯僕にとっては"地獄"だ。


 今日を生きるというのはとても難しいことで、力が必要。

 

 僕達の生活には労働、力、そして人が必要だ。


 そして関係なくいつも行われる縄張り争い。


 他にもご飯は誰かから取ったり盗むことが当たり前で、女の子は今も見た通り。


 満たしたかったら無理やり剥がすか自分の縄張りの頭となって、物にするか。


 理解できない。

 なんでこんな世界なのか。


 一体なんで──僕は目の前で起こっている事をただ眺めて、隠れたゴミ溜めの中からただ息を潜めているんだろう。


 「だれ⋯⋯かぁっ!いやぁだぁ!」


 ただ、黙って見ることしか出来ない。

 少し空いた隙間から、覗いて事が終わるのを待つことしか⋯⋯できない。


 自分は無力だ。

 "先生"の言葉で言うなら、"非力"だ。


 「エオ」


 呼ばれる。

 背後から。


 「小声で話すぞ?

 ソルジがああなった以上、俺達が見つかるのも時間の問題だ」


 そう。

 頭では分かっているけれど、頷く事しかできない。


 「いち、にの、さん、で行くぞ」


 あぁ。

 こうしてまた、目の前で寝食を共にした仲間を生贄にして⋯⋯僕達は進むのか。


 もう笑う事しかできない。

 そう。ここが。


 ──"この世界の掟"なのだから。


 生き残る為に必要な事。


 「あぁ⋯⋯クッソいいわ」


 「アニキ、やっぱり集めましょうよ今度から」


 「やめろよお前。

 でも、悪くねぇな」


 「──さん!」


 ただその光景を眺め、会話を聞いているとごみ溜めの中で、合図が鳴る。


 「ん?」


 こっちに気付いた。

 僕達を見つけると、それは⋯⋯それはほっぺたが嬉しそうに動いている。


 ⋯⋯気持ち悪い。


 「今だ!!!」


 勢い良く飛び出して、僕達は全速力で散り散りになっていく。


 「エオ!!

 村までの道程を忘れるな!!


 何かあったら、また集まるぞ!」


 「うん!!」


 黒髪の僕より少し大きい男の子で、前髪を上げているこの子が──デンデラ。

 

 「⋯⋯後でな!」


 「また!!」


 お互い別々の方向へと走る。


 「クソッ!

 やっぱり仲間がいたじゃねぇか!!」


 もうどれくらいだろう。

 探し回ったせいで足が痛い。


 「っはぁ⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯ぁ!」


 どれだけ疲れても。


 「っく!あぁ!」


 目の前は行き止まり。

 ということは確かここを⋯⋯曲がる!

 

 「ぁ⋯⋯ハッ⋯⋯ハッ」


 土が柔らかくて上手く曲がれない!

 それに息が出来なくて(ここ)が大きくなって痛い。


 だけど、やっぱり。


 「山がいっぱいだぁ」


 いつもそうだ。

 疲れている時って、なんだか幸せな気持ちになる。


 デンデラが"テンション"が高まってるって言ってたっけ。


 ていうか"テンション"ってどういう意味なんだか。


 でも先生が言ってた気もするけど。


 「わぁ⋯⋯」


 見上げると空はいつも変わらず、綺麗。

 山も固そうなのがいっぱい。

 

 「っ〜!!!

 ⋯⋯もっ⋯⋯くっ!!!」


 走っていると土の中にあった何かが刺さる。


 「んぐっ⋯⋯!」


 なんでかわかんないけど、足の裏が痛いと、目の下が痛い。

 

 黒い雷⋯⋯先生が言っていた。

 空を走る雷が、僕を飢えた目で全力で追いかけてくる。


 ──逃げなきゃ⋯⋯!


 走り続ける。


 「あはぁっ⋯⋯!はぁ!はぁっ⋯⋯はぁ!!」


 生きる為に。 

 僕達よりも下の子がいるんだ。

 まだ⋯⋯まだ死ねない。


 「──帰るんだ」


 恥ずかしいけれど、僕には夢がある。

 この地獄で叶えたい⋯⋯ことが。


 けど辛くてどうにも出来ないこの状態で死ぬことも出来ず、今日も僕達は──この地獄で生き抜く為に。


 「エオぉぉ!!!」


 「っぁ──」


 走りながら横を振り向くと大声で叫ぶ逃げ遅れた仲間の一人が見えた。


 数日だが、一緒に苦楽を共にした名前も知らない男の子。


 「やっと見つけたぜー」


 既に数人に捕まっている。

 

 「⋯⋯⋯⋯っ」


 数人に囲まれて髪を掴まれている。

 数秒もしない内に顔は腫れ上がって、掴まれて宙にぶらりと浮いてる。


 「はは!

 今回のは威勢は良いがそれだけだな」


 ──ごめん!

 でも、生きないと。


 そう決めた僕は⋯⋯僕は、走る。


 あの子の顔は見えない。

 けど、どんな顔なのかはもう、見てきた。


 「誰かァァァァ!!!」


 「あっはははは!

 誰も助けに来ないって分かったら急に怖くなったかぁ?


 これからよろしくなァ!」


 少しづつ消えていく泣く声。

 そして、大人の笑う声。


 「はぁっ⋯⋯はぁっ!!」


 僕達が、僕達が⋯⋯何をしたっていうんだ!!


 「ハァッ⋯⋯ハァ!ハァ!」


 右に曲がって、次の大っきい所を曲がって⋯⋯角⋯⋯っ!?


 「っぁっ⋯⋯がッ!」


 曲がったすぐ近くの樽に足が!


 「エーオーくーん」


 一瞬距離を離していたのに!

 

 「つっー!」


 足が引っかかったのか。

 最悪だ⋯⋯!


 「さっき君の事を、あの前髪上がってる子が言ってたよね?


 エオくんだよね?」


 「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァハァ」


 (ここ)がどうしようもないほど膨らむ。


 目の前にはこれからどうご飯にしようかと悩む大人の垂れ下がる目と口。


 「結構活きが良さそうだね」


 顔を近付け、低い声で耳元でそう言ってくる。


 全身がビクッとして、震えて、今にも爆発しそうだ。


 「た─────」


 ⋯⋯"助けて"?


 自分の口から出かけた言葉。

 "助けて"、なんてとても言えない。


 だって自分は今まで何人の仲間を見捨ててきた?


 ──数え切れない。


 なんでだろう。

 自分の番だからだろうか。


 ⋯⋯こんな時に村のことを思い出す。


 隅っこで過ごす時間。

 みんなで泥が付いたパンを齧り合って過ごした時間。


 石を投げて楽しんでた時間。


 ──笑いあったあの時。


 「ハァ⋯⋯ハァ、ハァ」

 

 「やっぱみんなビビってるじゃん。

 大丈夫だよ。


 なんにも怖くない⋯⋯⋯⋯怖くない」


 小石に言っているように嗤う大人。

 動物みたいに嗤ってる。


 「大丈夫。お友達も⋯⋯じきに──」


 


























 

 大人の背後に影が映った。


 「うりァァァァ!!!!」


 背後から⋯⋯デンデラが道端の刃物みたいに尖った石で首を刺した。


 「ぐっ⋯⋯!!!

 さっきの前髪!なんだ!?

 くそが!コイツ!!」

 

 噴き出す血を眺める。


 「デンデラ?」


 「エオ!早く立て!!」


 驚いてそれどころじゃない!

 そ、それに腰が抜けて立てない⋯⋯!どうしよ!!


 しかもまだ足の痛みが。


 「立たないと死ぬぞ!!早くしろ!!」


 なんで。

 なんでいつも僕は、大事な時に⋯⋯!


 「っっ!ほらっ!」


 デンデラに担がれる。

 なんとか立ち上がり、僕達は走る。


 「エオ!大丈夫か!!」

 

 「ご、ごめん⋯⋯!

 いつも大事な時に──」


 言いかけたその時、デンデラは少し笑ってそれ以上言うなと口元をピンと張った指で押さえていた。


 「村はあっちだ!」


 そう。

 こんな地獄でも、あそこに見える門があれば。


 「⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ」


 走って、走って。

 僕達はようやく──安全な場所へとたどり着く。


 「「っぁあっ!」」


 隙間に二人同時に飛び込んで、僕達の村へと帰ってくる。


 数回お腹を打ちながら転がって、地面に倒れる。


 「ぅぐ⋯⋯っ」


 そして僕は、たえたえの息苦しい世界の中、綺麗な空を見上げる。


 「⋯⋯また、生き延びた」


 「エオ⋯⋯!

 お前、なんであそこで転ぶかなぁ!」


 「いたたたたたた!」


 少し首を絞めてきては笑うデンデラ。


 「まじで今回は本気で死ぬかと思ったぞ」


 「ご、ごめん! 

 それに⋯⋯」


 「分かってる。ソルジとダヴだろ?」


 「うん」


 まだ9歳の⋯⋯村の中でも新入りだった可愛い男の子。


 「アイツは良いやつだ。

 だが、相手と逃げる通路が悪かった⋯⋯ただ、ただそれだけだ」


 「ねぇ、デンデラ。

 あの力⋯⋯僕達は使えないの?」


 僕達には使えない⋯⋯あの大人たちは手に何もない所から剣を生んだり、足が早くなったりする。


 「夜のことだろ?」


 「夜?」


 聞き返すとデンデラが溜息混じり、地面に大の字になって空を見上げる。


 「前にサヴァンさんが言ってただろ?

 俺達子供は、1番街と20番街の真ん中⋯⋯あの暗闇から産まれるって」


 「そうだっけ?

 サヴァンさん話が早くて難しいからわかんないや」


 「そう。

 俺達子供は、大人にとって必要で、俺達が落ちたあの日から3回目の日、12歳になると夜を使えるようになる。


 今必死になってる俺達の目的は、夜を使えるようになるまで生きること。


 それが全てだ」


 鼻くそをほじくりながら喋るデンデラ。

 それを同じように寝っ転がって僕は思う。


 デンデラがいなかった僕⋯⋯今頃死んでたよ。

 

 「ダメダメだ」


 「ふっ、おい⋯⋯そんな顔すんなって!


 エオのおかげで、子供たちが統率とれてんだし、揉め事も減っただろ」


 「そうだけど⋯⋯」


 「まぁ戦利品はあったしな!

 ほら、見ろ!」


 ポケットから、小さい飴玉。

 それが2つ。

 

 ⋯⋯あの子も食べたかったよなぁ。

 なんて。


 「あ、というかそれ、前から食べたかったやつ!」


 「ふっ!どうだ!

 俺だってやるときはやるんだぜ?」


 「すごいよデンデラ!!」


 嬉しくなって隣にいるデンデラへと飛び込む。


 「おっい⋯⋯いきなり飛び込むなよ」


 「あっ、ごめん!」


 相変わらず僕は感情が上手くいかないや。


 「いいよ。

 それより──」


 真剣になってるデンデラの視線を見た時。

 僕は何も言えずにただ眺めるしかなかった。


 「全然帰ってこねぇ」


 「うん。

 僕達だけ?今回の遠征は60人はいたのに」


 「くそっ! 

 これからもっと増えるってのに⋯⋯食料をどうすりゃいいんだ!」

 

 「考えるしかないよ。僕も考える」

 

 みんなが生き残る方法を。

 戦う力はないけど、こういうところで戦うんだ!


 「エオのそういう所、俺は好きだぜ」


 完全に僕をアテにしている顔だ。


 「そ、そんな顔しないでよ」


 「頼りにしてんだから!

 本番でやらかすけど」


 「あ、あはは」


 ──"地獄"。

 けれど見上げる空はいつも一緒だ。


 この地獄でなんとか生き抜く為に、今日も戦う。


 仲間を、大人達から守る為に。


 「ん」


 デンデラに拳を突き出される。


 「どうしたの?」


 「必ず⋯⋯生き残るぞ」


 そっと僕達は寝ながら、空を見上げ拳を突き合わせる。


 ⋯⋯そうだ。

 

 「うん!」


 こんなこの地獄で──僕は今日を。

 明日を迎えるために、生きていく。

 

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