酒豪
自分の身体がこれでもかという程震えるのがわかる。
「⋯⋯あ?」
たった一息。
しかし、吸う頃には僕を見下ろして嬉しそうに笑う。
ご飯見つけた僕らのように。
「なんだ、こんな所で。
見た所まだ大人になって時間が経ってねぇのか?」
そう言うと、次々と大人たちがやってくる。
まずい。
⋯⋯まずい。
どうしよう?
考えるんだ。
「おっ、本当じゃん。
なんでこんなところにいんだ?」
「てか、もしかしてコイツ、大人になったばっかじゃね?」
「確かに。
どう考えても体でかくねぇもん」
「でもよ、コイツ子供の癖に割と飯食えてるよな?
結構有望なんじゃね?将来。
おい、ダルトンコイツ捕まえてあっちで教育したってくれや!」
⋯⋯え?ここは裏み──
「⋯⋯何を驚いてる?」
裏道は、子供の通路だと思っていた。
大人の入れない所だと。
僕は大人に頭を掴まれ、何もすることもなく浮いていた。
周りを見ると、僕がいた場所らしき所が凄い事になっている。
⋯⋯あぁ。
そういう事か。
僕はなんて馬鹿なんだ。
ただ四角い建物を壊さないために入ってこないだけで、この場所では当たり前なんだ。
裏道は子供の道ではなく、ただ追わないってだけだったんだ。
そう思うと僕の頭の中はミチミチ音を立てて冷たくなっていく。
息をする瞬間、血が止まった気がする。
そしてさっきまで温かい自分の身体が冷え切って。
──あぁ、どうしよう。
「おい、なんだ?」
さっきの大柄の大人が僕を見る。
ちゃんと目の前にいると、大きいなんてものじゃない。
樽がそのまま高くなったようなもの。
圧が違う。
大人に勝てない理由。
それは身体の大きさも関係している事がこの時冷えきった自分の頭は勝手にそう理解した。
「こんなところにガキ?
誰だこんな所に放置している奴は」
よくよく見ると、村とはまるで違う。
⋯⋯あれは肉だ。
それを色んな大人が飲み食いしている。
これでもかというほど。
──僕達の見ていた世界とはまるで違う。
「どうやら誰も知らないみたいですわ」
手を擦りながら一人の大人が伝えている。
「ん?
では、大人になったばかりの村出身か⋯⋯どうりで」
どういう事?
この大人は僕をじっと見つめる。
「んー⋯⋯」
違和感がないのを見ているのかな?
何を考えているんだろう?
「恐怖はあるのだろうが、今まで見てきた中でも最も冷静でこの俺がこの中で強いと知っている。
知性があるな。
そこら中に転がっている大人とはまるで別物だ。
冷静に俺を見てどうするべきかを考えている目。
稀に見るタイプの子供だな。
このタイプの夜は特殊に偏りがち」
な、なんだ!?
なんでそんな早いんだ。
「んー⋯⋯」
そこへ一人の大人が。
「ど、どうやら、彼処にいる男がこのガキの育ての親だと」
僕にそんな人はいたのだろうか?
などとは思うけど、この大人と一緒に僕も見つめた。
「ちょっと!!
備蓄してる肉がなくなっちゃうでしょ!?」
「fffwwwww!!
ふっ⋯⋯ァァ⋯⋯ッッ!!久しぶりの肉だぁ!!」
声にならない喜んでいる叫び声が聞こえる。
ムシャクシャ食べている姿は、お腹が減っている僕らと変わらない。
ゴクゴクと水を飲み干し、両脇には女の子。
「ねぇ、トーくん、いつになったら良いのぉ?」
「ンぁ?そりゃノッた時だろ。
この間だってやる事はやってんだからいいんだろぉ?」
「えー!
でも私ぃ、取られちゃうかもぉ」
「知らねぇ⋯⋯俺が欲しかったら女の力を見せてみろってんだよ」
肩に手を回して、これでもかというほど僕が見てきた大人の振る舞い。
もちろん体は大きいし、筋肉がある。
デンデラがもし大きくなったらああいう形になるのかな。
「──オイ」
大柄の大人が、見下ろす。
「アァ?」
「俺が誰だか分かってんのか?テメェ」
「南四番街⋯⋯こんな昔と違ってカスみてぇに小さいこの町でイキってるドン・ゴじゃねぇの?」
その目を閉じた瞬間だった。
──何かが、僕の全身をゾワッと駆ける。
ドォォンと、空からドン・ゴに向かって黒い弾けるモノ。
その時僕は気付く。
⋯⋯これが、大人の、夜。
「おい、オメェこの辺で見ねぇ顔だな?
俺に挨拶もなしに飯食ってるんじゃねぇぞ?」
凄い。
先生とは全く違う種類だ。
出てる量も、質も、人によって違うんだ。
僕も⋯⋯出来るのだろうか。
「オイオイ──ヤメとけよ。
喧嘩を売る相手を間違えてるぜ?」
「テメェ───!!!!」
その手は机だったものを吹き飛ばした。
煙で何も見えない。
だけど耳が割れそうな音と風が僕のところまで伝わってくる。
「感触がねぇな」
その後ろ。
ゴクゴク飲むもう一人の大人の姿だ。
「俺は嫌いな事がある。
女との時間を邪魔してくる馬鹿と、」
──身の程知らずのバカ男だ。




