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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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18/21

地獄

 「おい、今日アイツとアイツらで戦わせろや」


 「何言ってんすか、猟犬同士で戦わせたら面白いんじゃないですか?」


 な、なに?

 

 「わ、ワルシャ」


 「ドチ、」


 何が起こってる?

 あの夜のような光の後、気付けば裏道で僕は立っていた⋯⋯ぽつんと。


 すぐに分かったのは、ここは村ではない。


 裏道も時間が経っているものだし、何より見覚えがないからだ。


 そして、見える目の前には見たこともないような場所。


 先生が言っていたような四角い建物。

 それらがいっぱい並んでいて、言葉で説明するのはなんとも言えないんだけど。


 ⋯⋯こう、女の子が凄いことになってたり、男の子が血だらけで寝っ転がっていたり、それに小さい声で"助けて"って。


 それに。

 

 「っ⋯⋯っう!」

 「俺、戦いたくないよ!」


 僕には娯楽というものはわからない。


 けど先生が言っていたのは、僕らの内戦が常に外では行われていて、それが娯楽の一種と言っていたのを今思い出したところだ。


 僕のような二人の臆病な男の子が手を構えて戦っている。


 それを見たこともないような大柄で、デンデラみたいな筋肉をした男たちが女の子を大量に横に置きながら眺めている。


 ──と、というか!

 大人の女の子を初めてみた!


 ⋯⋯あぁそんな場合じゃないか。

 僕は咄嗟に考えを巡らせてまとめる。


 知らない場所、大人。


 つまり──。

 僕は今"外にいる"。

 

 この事実が遅れて全身の震えと怖さを思い出させ、固まってしまうまでに時間など掛からなかった。

 

 ──どうしよう?


 今まではデンデラがいたし、何かあれば誰かが近くに居た。


 けど今は。

 ""一人だ""。


 その瞬間、目の前で行われている戦い?

 いや、見世物は重たいよく聞く音を鳴らし始めた。


 「うっ⋯⋯!」


 「おらいけっ!!いっちまえ!!

 仲間なんだろ!?」


 「うらっ!殴り合え!!

 犬が一丁前に逃げようとするとどうなるか⋯⋯そこで土食べてるお前らに見せてやるぞ」


 え?土?

 少しだけ身を乗り出してよく覗くと。


 「んぐぅー!!ぅぅー!!」


 本当に土下座の体勢で土を食べている。


 確かに僕達の中でもあの体勢はよくしていた。


 けど、あの状態で土を食べるってどういうこと?

 

 ⋯⋯駄目だ。

 助けるとかの段階を飛んでるとすら思う。


 「なぁ、ナギ」


 「はい、旦那様」


 「アイツら⋯⋯どっちが勝つと思う?

 もしこの賭けが当たったら──今日は元気に夜の飯は豪勢にするぞ!」


 その言葉を聞いた大人の女の子はぴょんぴょん小さく喜びの姿を見せている。


 「本当ですか!?」


 「あぁ。俺の女だからな。


 女の戦いを勝ち抜いた奴に何も与えねぇのは男の沽券に関わる」


 女の戦い?

 どういう⋯⋯?


 「ごめん、ドチ」


 声が聞こえる。

 戦ってる二人だった。


 一人の大人の男の子が覚悟を決めたように両手を構え、これでもかという黒い、風のようなモノが溢れる。


 この目で初めて見る。

 先生とは違う⋯⋯夜。


 胸の辺りからバチッとした黒いモノが肩を通って、肘を通って、最後は指先にまで黒いモノが集まる。


 「想起(クオリア)⋯⋯」


 「ワルシャ──想起(クオリア)!」


 二人とも体の強化の夜なのかな?

 拳に黒いものが集中している。


 「おおっ!!!いいぞ!!」


 見ていた男の大勢がその近くにある恐らく空いた樽の中に何かを入れている。


 ⋯⋯あれはなんだろう?

 と、すぐの事。


 黒いバチバチ言ってるものが片方のお腹に当たる。


 その弾けるものは背中を貫き、その向こうにある空中まで飛んでいった。


 だがもう一人も負けていない。


 「⋯⋯っ!?」


 まるでデンデラのように一瞬の間に脇に拳がズブッと入っている。


 「うっ⋯⋯ブっ⋯⋯!」


 口から吹き出す血。

 とてもだけど、僕は見ていられない。


 だが。大人は違った。


 「ハッハハハ!!

 いいぞいいぞ!もっとやれ!」


 「仲間同士の戦いだ!

 まさか加減すら忘れちゃうんだからな!!」


 嬉しそうな声。

 応援するような声。

 馬鹿にするような声。


 どれも本当に生き物として同じなのか聞きたくなるようなモノが──僕には見えていた。


 二人とも疲れているのにもかかわらず、ボロボロになるまで戦い、その応援の中、一人の男の子が顔から土に倒れた。


 「⋯⋯ハァ、ハァ、ハァ」


 立っている人も限界といった様子だ。

 空を見上げ、何かを呟いている。


 そんな喜びの中、大柄の男の人が立ち上がり、倒れている方の髪を掴み上げ、持ち上げる。


 大人の恐ろしさ。

 僕はそれを目の当たりにした。


 片手で髪を掴んで持ち上げられる腕力。

 

 「ワルシャ、お前には何が"聞こえて"いる」


 ⋯⋯どういう事なんだろう?


 「⋯⋯ごめん、ごめんなさい」


 ワルシャという人が死にそうになっている中、謝っている。


 「お前は誰に謝っている」


 「オリビア⋯⋯」


 「おい、オリビアという奴はこの中にいるか?」


 大柄の男の子の声に静まる。

 しかしその呼びかけには誰も応じない。


 「ふん、やはりか」


 そう言うと持ち上げた腕で捨てるように投げ飛ばし、また椅子に座った。


 そしてその投げられた男の子は──僕の近くに飛んでくる。


 「っ!!!」


 ま、まずい!今見られたら!?


 見下ろすと、ワルシャと呼ばれる男の子のなんとも言えない姿を見せられる。


 言葉にはできない身体。

 その姿に見逃すなという圧すら喋りかけられているような。


 「オリビア⋯⋯ごめん⋯⋯俺が馬鹿だった⋯⋯俺はただ君と⋯⋯でも、お金が無くて⋯⋯衝動的に君⋯⋯を⋯⋯」


 お金?"なんだそれ?"


 ただ、そこまで言った時、ワルシャという男の子は息が止まった。


 「はぁ⋯⋯使い物なならねぇ犬───」







































 

 ───あ。

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