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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
子供編

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15/16

 「持ってきたぞ」


 ここしばらくで一番の出来事だ。

 年長者だけではなく、縄張りの子どもたちみんなが集まる。


 「粉で味がするってどういう事なんだ?」

 「分かんねぇ」


 ⋯⋯僕も楽しみだ。


 "味がする粉"。

 今まで聞いたことがない。


 まぁ確かに、大人が食べているものの中には天の食べ物かな?と思うものはあったけど、粉で味がするってどういう事なんだろう?


 「よーし、集まったな」


 デンデラが現れ、全員の顔を見ながら歩いてくる。


 「とりあえず年長者組の特権として、俺達が先に食べる。


 呼ぶから集まれ。

 エオ、グラン、ニバ、バズウ、ウル、ダイ、ウマ、ショイグ、アレノ」


 僕達は手に持つちゃちゃを齧りながら前に出る。


 するとデンデラが左の端にいる僕の横に立つ。


 「どうやらこの中に入っている硬い入れ物に塩というものが入っているそうだ」


 デンデラが少し触れただけで高い音が聞こえる。


 パッと見、どう考えても武器か何かだとばかり思ってたけど、これが水を汲む入れ物だとは。


 「使い方は少しかけるだけで良いそうだが、エオ⋯⋯最初はお前だ」


 そう笑いかけてくる。

 なんだかんだ優しいなぁ。


 「全員聞け!」


 声を張ると視線はデンデラと僕に。


 「そもそもエオがいなければ、ここまで遠征に行かずに済むことはなかった。


 この数年、沢山の仲間が亡くなった。

 沢山の仲間が大人に捕まり、今どうしているのかもわからない。


 そんな事を防ぐためにエオは、笑われながらも必死に尽くしてくれた。


 結果、こうして全員の食を一人で受け持ち、誰にも頼らない方法でこの地獄で最初の功労者となった。


 大人の言葉だが、功労者というのは頑張った人間という意味だ。


 さっ、功労者くん」


 チラ見されて、僕はただ待つ。

 

 「おおっ、なんか変な匂いだな」


 僕も嗅ぐと。


 なんだろう?

 なんかしょっぱい。


 「これをちゃちゃにかけるって事でいいんじゃねぇのか?」


 と、少し指で摘んで僕の入れ物に粉をかける。


 「あっ、デンデラ」


 「ん?」


 かかったちゃちゃをデンデラに嗅がせる。

 

 「っ、おっ?」


 「なんかちょっと水が出てきてるよ!

 しかも、ちゃちゃが美味そうになってる!」


 煙が上がる中、僕はみんなに見せる。

 そして一口。


 「⋯⋯⋯⋯っ!!!」


 しょっぱいのとこのちゃちゃの水っぽい感じが合わさって凄い美味しい!!


 「デンデラ、食べて!」


 「そんな顔するエオなんて見たこと⋯⋯」


 どうだ?

 美味いぞ!!


 ギュン!とデンデラの視線は僕をみた。

 そうだろうそうだろう?


 「うめぇ!!なんだこれ!」


 「みんなも食べて食べて」


 デンデラはすぐに年長者組にその味のする粉をかけていって食わせる。


 「⋯⋯っなぁァァァァ!?」


 全員がむしゃむしゃ食べまくる。

 一瞬でちゃちゃがなくなってしまい、もう一つと言う事に。


 それを見ていた子供達は当たり前だが、自分も早く食べたいという雰囲気が強まっていく。


 「とまぁ、年長者組を見れば分かるが、こういう味の粉だ。


 年長者組に感謝しながら食うことだ。

 さっ、次はお前らの番だ」


 そう言って子供達にドンドン回していくデンデラだった。







 「おっ、デンデラ」


 食事会があってしばらく。

 僕が収穫をしていると、隣にやってくるデンデラ。


 「どうだ?」


 「上手く行ってるよ。

 そっちは?」


 「土地を少しずつ広げているが、特別問題なさそうだな」


 今は少しずつ自分たちの範囲を広げて行っている最中だから問題がないか心配してたけど、上手く行ってるようだ。


 「ただ、今僕が見ている限りだと、ずっと広げるのは無理だね。


 僕が見ていたのがこの辺りだけだから」


 多分、土地として使えるのはこの辺なんだろうなーとは思ってる。


 とにかく僕はこの畑を通して成長のさせ方は理解出来た。

 

 「とにかく種を植えてみて」


 「植えるのか?」


 静かに頷く。


 「うん。

 多分だけど、この植物に適した物を土がくれると思う」


 「まぁとりあえず難しい事はわからんが、植えてみる」


 まだ分かっていないことは多い。


 けど一つ分かっているのは、この土というか自然は、無駄なものがない、というのが今のところの僕が思う結論だ。


 「というかもう少しで俺達も12歳になるな」


 背を向けたデンデラの声。

 少し寂しそうでもある。


 「ん?

 僕達はいつか旅立つ時が来るからね。

 どうなっちゃうのかな?」


 「先生は何か言ってなかったのか?」

  

 「んー、それは先生にも聞いたんだけど、分かんないって言ってた」


 「ふーん。

 外はどうなってるんだろうな」


 「大人の世界は怖いよ?

 地獄じゃないの?」


 「だよな。

 俺達もこうしてやっと中で過ごせるようになったってのに⋯⋯もう時期って思うとよ」


 見上げるとデンデラの視線は僕らよりもあとに入った子供たちだった。


 「また戻っちまうんじゃねぇかって」


 「⋯⋯あの頃に?」


 無言で頷く。

 僕達のあとにはグランやニバ、ウルやバズウもいる。


 きっと繋いでくれるとは思うけど。


 「まだ分からないよね。

 でも、間違いなく変わって行くと思う。

 

 ⋯⋯これから」


 「だと良いがな」


 短くそう言うデンデラの視線は、何処か変だった。


 何かあったのかな?


 「なんかあったの?」

 

 「⋯⋯いや?ただよ。

 俺達の知らないことがまだまだ多いってのが現実にはあるってのが分かると、この先どうなるか不安にもなってな」


 「らしくないね」


 「⋯⋯そういうエオこそ、どうなんだ?」


 「ん?」


 「大人になったらどうするつもりなんだ?」


 手を止めて空を見上げる。 

 確かになぁ。


 夜が貰える。

 大人になる。

 ここから出ていかなければならない。


 どれも変わっていくものだ。

 外の世界はどうなって行くんだろう。


 「まだ決めてないけど、ただ⋯⋯」


 「ただ?」


 「もし出来るのなら、みんなが笑って過ごせる世界にしたいっていうのが僕の決めた中の一つとしてある夢」


 みんなが。

 みんなが笑って、誰からも奪わなくて済むように。


 戦わなくてもいいように。


 「そっか」


 デンデラも空を見上げる。

 そうだ。


 「大人の世界の頂点に立ったら──僕達の世界は作れるのかな?」


 「⋯⋯ふっ。

 よく言うぜ」


 僕達はそうして空をゆっくりと眺めた。


 そう。この時からだったのかも知れない。

 何でもない存在だった僕の運命が、ここから一気に変わったのは。

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