人はそれをコネと言うらしい
それから一緒に市場を歩いているんだけど。
「あら坊っちゃんこんにちは!」
「やぁ、元気しているかい?ミスタバサ」
「新しい玩具でも拾われたんですか?」
ずっと色んなお店というのを回り、同じようなやり取りをもう何度も聞いている。
今もそうなんだけど、店の人が言葉を返しているんだけど。
──どうにも僕には返している声が変に聞こえる。
まるで下げているというか。
何処か心の中で馬鹿にしているというか⋯⋯何というか。
「っははは!
やはり気づいたか!」
でも本人は気付いていなそう。
⋯⋯というか。
「えーと、名前⋯⋯」
「ゲンジ様だってっ」
「あぁありがとうございます」
脇を小突かれ痛い。
どうやら護衛という役職らしいんだけど、すっかり仲良くなったのはこの護衛の人の一人⋯⋯アライさん。
「ごめんなさいゲンジ様」
「ん?どうした?面白い貧乏人」
「え?僕は貧乏人ではないんですけど」
「フンッ、この俺様から見ればお前もエヒリムも変わらん」
どうやらこの人は凄いお金持ちらしい。
道中確認もアライさんでしたんだけど、どうやらそれは間違いないみたい。
「それで美味しい食べ物って?」
「この俺様の威光を見せることに必死なっていたな。
こっちだ!」
威光⋯⋯確か威張ることだったよね?
え?僕に威張ったところでなんか意味があったのだろうか?
*
「ようこそ、ゲンジ様」
「うわぁ⋯⋯綺麗ですね」
見たことないような模様が沢山。
「これ、絨毯って奴ですか?」
「シルク製で⋯⋯かつ手織りだ。
さすがだな」
「お褒めにあずかり光栄でございます」
シルク?
手織り?なんだろう?
「こっちだ」
長い道を歩いて、一際目立つ星のような部屋に入る。
「ここが我が家専用の部屋でな!
いつでも使える」
「へぇー、そうなんですね!」
「⋯⋯なんだ?
貧乏人にとっては見たことすらないだろう?」
なんだが、ゲンジ様の顔色が変だ。
「はい⋯⋯見たことはないんですけど」
「どうした?ハッキリしないか」
「え?あ⋯⋯彼、エヒリムさんや他の市場のみんなも食べれたらいいなぁって」
西では凄くこう⋯⋯自分の思った事は言ってはいけないような雰囲気があったんだけど、でも言いたくなった。
なんかみんな、思ったことが言えないのかな?って思うところがあったり、人と人が話すのにお金がいるんじゃないかってくらいなんか一人一人が分かれているというか。
「⋯⋯何故そんな貧乏人を気にする」
「失礼だと思うんですけど、ゲンジ様は言葉の使い方が良くないと思います」
一瞬イラつきのようなものがゲンジ様ではなく護衛の方から飛んでくるような気がするんだけれど、今までの積み重ねのようなものがあったからか、僕は進んでしまう。
「気にするも何も、お金を持っているから偉いのですか?」
「⋯⋯何を言う。
そうであろう」
とは言いつつも、ゲンジ様は大きい椅子に座る。
「何故そこに座る。
向こうだ。向こう」
僕はすぐ近くに座る。
顎で指示してくるんだけど、僕は動かない。
「何なのだお前は」
「これからご飯を食べるんですよね?」
「⋯⋯そうだ」
「離れてたら話せないじゃないですか」
「っ?それがなんだ」
「食事というのは仲良くするためのモノですし、生きていて味わえる最高の感覚の一つです」
するとゲンジ様は何か変なモノでも見たかのように僕を凝視する。
「お前、本当に面白いやつだな。
──気に入ったぞ。
その態度と言い、全く俺様に対して下心すらない目が特に」
「面白いかは分かりませんけど、僕はこんなに広い机は要らないと思います。
ゲンジ様が目の前にいるのにわざわざ離れるなんて無いと思います」
「⋯⋯ほう」
「美味しいモノは知りたいですが、誰と食べるかも凄く重要です」
「フンッ」
それからすぐに、料理が出てきた。
「お前は知らなそうだから、説明してやる」
小さい器に乗っかるモノがアフレという奴らしい。
「なんだこれ!?」
「繊細で舌触りが良いだろう?
他とは比べ物にならない」
そして次に野菜。
僕達の玉と呼んでたものは全て西では野菜らしいんだ。
「このソースっていうのが流れるように野菜と絡んでて良いです」
「お前は食の何たるかが多少は分かるようだな」
次にスープ。
温かいお水なら知ってるけど、これは初めて見る。
「卵を色々な作り方で表現したんだと。
結構評判がいい」
「結構どころじゃないですよ!
どれも凄く美味しいです!」
「っ⋯⋯そうか」
「ところでゲンジ様はなんで案内してくれるんですか?」
「なんとなくだ」
なんとなくでここまでしてくれるとは思わないけど。
「なんとなくでここまでやらないと思いますけど」
「まぁ、正直に言えば」
片腕を机に預けて、遠い目で窓の向こうを眺めながら。
「──自分の事を何も知らない人間と関わりたいというのが本音だろう」
「自分の事を知らない?」
するとハッとすぐに笑って下を向く。
「こんな事初対面の奴に話すなんて俺様らしくないな」
「⋯⋯別にいいのでは?」
深い溜息混じりに頬杖をついては僕をチラッと見つめる。
「不思議なやつだ。
知性を感じるのに、常識はない」
「褒めてます?」
「あぁ。
伝わらないのであれば褒めている」
「もっと真っ直ぐ言ってくださいよ!
優しいんですから!」
すると驚いたようで。
乗ってけていた顔がガクッとズレる。
「優しい?俺様が?」
「え?はい」
躊躇もなくそう言うと、ゲンジ様は笑って何かを飲んでいる。
「本当、お前は何なんだ」
でも口は笑っている。
「確かに口は悪いですし、人を下げるような事を言いますが、人の細かい事に気づいて説明してくれるし、言葉は悪いけど合わせようとしてくれています」
「⋯⋯フッ」
なんだろう?
所々に顔から感じる。
この人はとても"寂しそう"だ。
*
「コレは?」
食事が終わり、僕はそのお店の前で謎の紙を貰った。
正直、紙が当たり前のようにあるのには凄く驚いているんだけど、それだと僕が南の人だとバレてしまう。
「俺様の家の住所と、通れる身分証だ」
「住所?」
「ん?
お前はそんなことも知らないのか」
と言いながらも、教えてくれる。
「あっ、ここに行けばゲンジ様がいるのですね」
「そうだ」
「あっ、じゃあ今度美味しい物が出来たら持っていきます!」
「っ、馬鹿が」
「今日はありがとうございます!」
「ついでだ。
行くぞ」
凄い。
動物が走ってるー。
「またー!」
折角今日はご飯を貰ったし、西でもちゃちゃを流行らせようかな?




