閑話:問題がないとそれはそれで暇なのだ
──ダンッ!
集会場の扉が開く。
「んぁ?」
ケイとグラン、そしてチェシェやクレナなどの幹部たちが扉の方を見つめる。
その先には、幼いレイネシアが笑顔で入って来た。
「おはよーございます!」
「「「「おはよう」」」」
エオが居なくなってもうすぐで二ヶ月になる。
最初の数日こそ彼らの気持ちは暗かったものの、二ヶ月も経てば少しは元に戻る。
「何の会議ー?」
レイネシアがグランの足上に座る。
「今日は食料の分配?状況と、新成人となる奴らの夜の確認だ」
すっかりレイネシアも関係者だ。
最初こそなんでこの子供が?という疑念があったのだが、今では集会に参加しても誰も疑問が挙がらなくなっていった。
⋯⋯それには訳がある。
「ちゃちゃの件でほーこくを挙げたい四十三番通りと、二十六番通りの管理者に会いたいそーです!」
「おー、そんな事言ってたのか」
「うん!」
通りコミュニティの中心にレイネシアがいつの間にかいるのだ。
気付けばエオの近くにいる為か、傍から見れば大量の知識と急速に進化していくエオの隣にいるレイネシアもまた、スポンジの如くエオの脳内を聞いては学ぶということを絶やさない。
「えーっと、なんだっけ⋯⋯」
レイネシアは悩む。
「そう!
四十六番通りのおじさんがね、通り限定のちゃちゃを作りたいって言ってた!」
「許可出していいんじゃないかしら?」
「面倒くせぇ⋯⋯」
「グラン。
エオが居なくなってからたるみ過ぎでは?」
チェシェとクレナの視線は中々に厳しいものである。
しかし毎日女遊びに耽り、闘技場で叫び散らかし、ご飯を食べて終わる⋯⋯そんな生活を送っているのが現在のグランという男なので当人は何も返せず。
「ん?だってよぉ⋯⋯」
全員の視線を受けるグラン。
「ここ二ヶ月これと言って何も問題がねぇじゃねぇかぁ!!」
なぜか悲痛に聞こえる叫び。
全員の呆れたような溜息が集会場で広がる。
「っ、あなたねぇ⋯⋯」
「グラン、分かるぞ。
⋯⋯分かる」
男と女で明確に意見が分かれている。
「ここ二ヶ月で何があった?
分配、分配⋯⋯ちょっとしたいざこざ。
新しい事をやるから良いか⋯⋯みてぇなことばっかじゃねぇか!
エオがいた時はよぉ⋯⋯」
グランの言葉に各々様々な事を浮かべる。
世界の解明への一歩。
水不足の解決。
新しい事が増えていくこと等々。
「ん?」
グランはそこで気づく。
「てことはアイツがいると危険?」
「「「「「ぷっ⋯⋯!!」」」」」
何気ない一言で集会場は笑いの渦に包まれる。
「そりゃねぇぜグランお前!!
アッハハハハハ!」
「っ、なんだとてめぇ!」
「大事にしてる奴が実は危険なんじゃねぇかって真顔で言うなんてどんだけおもろい頭してんだよ」
笑いすぎて涙を拭うケイ。
「頭になる奴ってのは大抵どっかイカれてんだよ」
「まぁ、分からなくはねぇけどよ?
でもアイツが問題を持ってくるからこう⋯⋯俺達楽しかったんかな?ってよ」
「とは言えあなたの言いたい気持ちは分からなくはないのが苛つきますけど」
チェシェが沢山の荷物をまとめている中、席を立つ。
「おい、どこに行くんだ」
「帰るんです。
分配の話はもう詰め終わっているでしょう?
退屈だと言うなら早めに終わらせてあげようと思って」
「おいおい、怒らせてぇ訳じゃねぇんだぜ?」
「ケイ、別に私は怒ってないわ?
ただ、言い分も少し理解できてしまうから」
「あっそ。
じゃあ今日は終わりだな」
席を立つケイ。
それに続いて次々に立ち上がる。
「えー!終わり!?」
早々に終わる集会にレイネシアが嫌そうに降りる。
「チェシェの所で会議しておいて後で言ってくれればいい」
「え!?本当!?」
「あぁ」
「やったー!」
トコトコ走り去っていくレイネシアを見送る男達。
「アイツ、あんなちっこいのにもうあそこまで考えられんのすげぇよな」
「おい、てめぇ木板忘れんなよ」
少し視線を落とし気づいたケイが顎で言う。
「お前もうるさくなってきたな」
「馬鹿言うな。
こういうのは最低限やってるから言えることだっつーの。
お前ももう頭の近くにいた頃みてぇに居るんだったら幹部を降りろ」
「ハァ?」
「そうだろ?」
溜息混じり再び座っては脚を組み、オコン茶を飲むケイ。
「お前気づいてんのか?
今お前の周りにいる奴ら、全員お前の地位に擦り寄ってきてんだよ」
「⋯⋯⋯⋯」
無言でグランは視線を逸らす。
「今の幹部がなんで選ばれてんのかわかってるだろ?
最低限やってりゃあいいけど、このままじゃ」
立ち上がり、グランの肩を軽く叩くケイ。
「お前より仲の良いニバの方が使えるだろうよ」
「っ!テメェ」
「事実だろー?
俺達幹部はそれ相応の責任って奴が付くから貰えるもんも多いってもんでもあり、俺達はそういう普通から離れた新しいモンを目指そうとしてる奴らだからこそ、今やらねぇと後で面倒な目に遭うってもんだ」
言い切ったケイはそのまま去っていく。
この場所一人残されたグラン。
座り吐息混じり⋯⋯周囲を見回しながら、鼻で笑う。
「ハッ、仕事をしねぇ⋯⋯か。
つまんねぇだよな⋯⋯お前がいない場所ってのはよ」




