偽物と本物
「な、なんだお前!」
⋯⋯ん?
僕と彼の間に、数人の人が割り込んでくる。
「ゲンジ様になんのつもりだ!?」
「ゲンジ⋯⋯様?」
「っ、き、貴様!
無知にもほどがあるぞ!」
僕の前にいる人が大きな声でそう言ってくる。
「それはごめんなさい。
でも、気になるんです」
「貴様に言う必要はない」
「違うんです、そこの⋯⋯」
名前、なんだっけ。
「ゲンジだ!この馬鹿者!」
「あーそうです!
ゲンジ様の髪色が明るいんですけど、なんで明るいんですか?
⋯⋯特殊な何かがあるんでしょうか?」
なんかどこかひんやりとしたモノを感じる。
けど、僕は気になるんだ!
髪色が黒くない人を見たのは二回目だから。
「そ、それよりっ!!」
なぜか僕を見上げて前にいる部下っぽい人に隠れながらゲンジ様は顔色を変える。
ちなみに僕の疑問は一瞬でなかったことにされた。
ちょっと悲しい。
「その貧乏人と貴様はどんな関係がある」
彼を見る。
どんな関係⋯⋯関係?
「困っていそうだったので、一本残しておいたパンナをあげた仲です!」
そう。
やっぱり食事はイイよね!
人間が一番生を感じる時間だしね!
と、見下ろすと。
「⋯⋯⋯⋯」
彼の顔色が悪い。
まるで頭を見た時のような。
「大丈夫?
お腹空いたならパンナもう一本買ってこようか?」
今持っているお金は、商人さんから頂いた最低限を生き抜くお金であり、あと一月程で僕は家を出るという計画になっている。
なのでつまりこのお金は今、僕のだ。
「え?あっ」
「貴様!
この貧乏人の味方をするのか?」
彼が俯いていると、この人は捲し立ててくる。
「なんですかさっきから。
貧乏人貧乏人って。
何かの言葉なんですか?」
「え?」
「「「「え?」」」」
⋯⋯え?
何故か言われている彼までもがえ?と首を傾げている。
なんの話なのか。
「貴様⋯⋯貧乏人の意味が分からないのか?」
っ、あれ?
そんな言葉、聞いてないんだけどな。
「いやだなー!
知ってますよ!」
ここは知ってるフリをしよう!
「なんかの雑貨の名前ですよね?」
「違うわ馬鹿者!!」
ゲンジ様に一瞬で突っ込まれてしまった。
どうしよう。
「金がねぇって意味だよ、デカイ奴」
小さい声で間にいる一人の人が僕に囁く。
「金がねぇって⋯⋯」
「あぁ。
お前もしかして⋯⋯東の奴か?」
「え?うん」
ここは従おう。
「だと思ったぜ。
前も居たんだよな。
⋯⋯東のど田舎出身であんまり金を理解してない奴らが」
「つまりお金がなければ貧乏って言われてしまうと?」
「そりゃそうだろ」
⋯⋯??
「なんで?」
「なんでって⋯⋯お前」
その時、ゲンジ様が僕との会話に気付いて割り込んでくる。
「貧乏人に生きてる価値なんてねぇからだよ」
僕の前に立ち、見上げ、そう⋯⋯言い放ってくる。
「お金がないから生きてる価値がない?」
ーー俺、明日も生きていられるんだ!
ーーなぁエオ、水あったぞ!
ーー馬鹿!それウンチや!!
「人はそもそも生きてるだけで価値があるんです。
お金で人を測るなんてどうかしてると思いますが」
僕が発した言葉に彼らはざわついている。
何か変なことを言ったのだろうか?
──むしろ僕からしたらこの人たちが変なのだが。
「お前⋯⋯面白いやつだな」
ゲンジ様は僕の上から下までを見てどうやら何か考えている。
と、それよりも。
「パンナ、僕の食いかけだけど食べる?」
「え?あ、⋯⋯いいの?」
ちょっと申し訳なさそうに言う彼に僕は迷わない。
「食べな食べな!
あっ、じゃあさ、他に美味しい食べ物って知ってる?」
屈んで彼の隣に座る。
「え?」
「ん?だから他に美味しい食べ物」
西は分からないけど、南はその通りにしかない通り限定の美味しいのがあったりするんだよねぇー。
オコン塩味。
南も負けてない!
⋯⋯多分。
「そんな貧乏人に聞いて何になんだか」
僕達の会話に呆れているようだ。
なんかなんでこの人達いるんだろう?
「ということは、ゲンジ様は知ってるんですか?」
「知ってるも何も、市場の三分の一は俺の系列の店だからな、土下座するなら教えてやる。
⋯⋯まぁ?お前みたいな綺麗事ばっかり言う奴にとってはでき──」
「え?お願いします!!」
なんだ?
この人優しいな。
「っ、え?」
「「「「ええっ?」」」」
西はイイなぁ!
土下座すれば教えてもらえるのかぁ!
簡単だ。
「ま、ままままて!!」
「え?土下座すればいいんですよね?」
隣の彼ですら驚いている。
「恥ずかしくないのか?」
え?どういう事?
「なんでですか?
土下座をすれば教えてくれるんですよね?」
簡単じゃないか。
土下座さえすれば美味しいものを教えてくれるんでしょう?
「⋯⋯⋯⋯」
彼は僕を見て、何処か遠い目をして俯いてしまった。
「ハッハハハハ!
背が高くて顔を隠すような人間がプライドがないなんて面白いやつに出会ったようだな⋯⋯俺は!
良いだろう!
直々にエンファレンズの次期代表となる男が教えてやろう!」
「はい!ありがとうございます!!」
今度は土に穴を空けるほどおでこを叩きつける。
「っ何をしてる!怪我をしてしまうぞ!」
「え?なんで心配してくれるんですか?」
「っ、えい!貴様!さっさと来い!!」
⋯⋯悪い人じゃないんだろうけど。
僕は後ろにいる彼を見下ろす。
「彼は⋯⋯」
「エヒリムの事か?放っておけ。
あのような貧乏人に価値はない」
「ごめんね!あとで聞きにくるから!」
「貴様!
あのような貧乏人と関わるな!」
というものの、何処か彼を見る目が優しいのは一体なんでだろう。




