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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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閑話:子然

 「んぁ〜!」


 よく寝た。

 最近あまり寝れてなかったから、なんだか良い気分だな。


 「エオー!起きて!」


 「レイネシア」


 「うんっ!おはよ!」


 ⋯⋯レイネシアの件も、まだまだ解決には程遠いか。


 手を引かれ、そのままいつものように朝ご飯。


 「今日はね、みんなで作ったの!」


 最近、どうやら食の集まりなるものがよく開かれているみたいで、前もちょくちょく呼ばれたんだよね。


 「食事同好会(エオルア)だっけ?」


 「そう!

 エオの名前から食べ物をもっと美味しく出来る方法とか、新しい事を取り入れるんだって!」


 ⋯⋯素晴らしい事だ。

 食べる事よりも、どうやって美味しくしようかと考える人が増えたということだ。


 「うんうん。良いことだね。

 女の子達も料理をする人が増えたって言ってたよね?」


 最近は女の子達の夜も、開放できるようになって来ている。


 主に料理に関連した夜や、片付けの夜、主に作る事に方向が向かっている。


 ただ、思った以上に攻撃的な夜も多いから、そこら辺はなんとも言えないところだ。


 「ニバが凄い料理ができるんだよ!」


 「へぇー意外」


 目の前の塩味のちゃちゃと共に言葉を返すんだけど。


 ⋯⋯え?ニバって料理が出来たんだ。


 前までちゃちゃを握り潰してた感覚が強いんだけれども。


 「グランが大笑いしてたよ!

 怪力女が料理女になったって!」


 その会話、頭に凄い浮かぶよ。

 馬鹿にしたように笑うグランとムキになって怒ってるニバの二人が。

 

 「はははは。

 レイネシアはそう言えば、料理するの?」


 「うん!

 ニバと一緒に!


 その飲み物も私が作ったの!」


 今日の朝ご飯は塩味のちゃちゃとそのままでふっくらするオコン。


 そして暖かい飲み物。

 

 「これ凄い良いよね。

 身体の中から温まる感じとか」


 「でしょでしょ!?

 これもエオマルって名前にしたの!」


 「なんで僕の名前っぽいの」


 思わず笑ってしまった。

 料理になると僕の名前が異常に多くなる現象がこの南では増えている。


 「そりゃあエオは食べ物を創った人として有名になったからだよ!


 ──みんなそう言ってた!」


 ⋯⋯あぁ確かにそうか。

 そう言われたらそうかも。


 「食べ終わった?」


 「ん?うん」


 「今日も畑行くの!?」


 「勿論」


 僕の中心は畑だからね。


 「行こー!」


 どうやらレイネシアは今日、僕に付いてくるらしい。







 「随分変わったよねー」


 「そうなの?」


 通りを歩きながら、僕は昔を思い出してレイネシアに喋る。


 「うん。

 昔はね、そこら辺に人が転がってたり、よく分からないものがいっぱいあったんだよ」


 そう考えると今は少しだけマシになったのかな。


 転がる人の量は減ったし、臭いも減った気がする。


 「でも今もまだあるよね?」


 「そうだね。

 これからも減らし続けないとね」


 と、歩いていると、レイネシアの前に腐った食べ物が落ちていた。


 「なにこれ」


 「ちゃちゃが腐ってるね」


 かなり時間が経っていそうだ。


 「っ、レイネシア?」


 突然、レイネシアが落ちていたちゃちゃを拾う。


 「腐ってるから食べられないよ?」


 「そうだけど⋯⋯」


 黙りこむレイネシアに僕は訊く。


 「どうしたの?」


 「これ、拾っていつも捨ててる穴に入れたら駄目かな?」


 「⋯⋯あー、良いと思うよ」


 「それに、拾ったら胸のここが広がるような感じがあるよ!

 

 みんな無視してるけど、もしかしたらみんなで拾ったらこの通りってもっと綺麗になるよ!!」


 その言葉に、凄く僕は感動を覚えた。

 ⋯⋯確かに。


 いつも僕はやっていた事だけど──確かにみんなでやれば。

 

 「それ、凄くイイね」


 「うん!


 だって、みんなで拾ったら転がるものは減るし、それが凄い気になれば、どうやったら転がるのが減るのかも考えるようになる!」


 レイネシア⋯⋯僕といる事が多いからか、最近こういう考える事を言ってくれることが多くなった気がする。


 「じゃあ、まずは僕達からやろっか」


 「うん!」


 いつもなら畑に行く流れだったんだけど、今日は違う。


 「あれ、ダンライオスが何か新しいことやってるー!」

 

 僕とレイネシアを見て子供たちが寄ってくる。

 両手には骨だったり、腐ったもの、他にも人の死体の一部がある。


 「何やってるのー?」


 「レイネシアがね、凄い良いことを言ったんだ。


 "みんなでコレを拾えば、通りがもっと綺麗"になるって」


 「「「「へぇー!」」」」


 「そうしたらみんなの心も大きく強くなるんだってね⋯⋯ね?レイネシア」


 「う、う、うんっ!」


 恥ずかしそうなレイネシアを横目に、子供たちが目を輝かせている。


 「じゃあ俺もやる!

 強くなるんでしょ!?」


 「そ、そうっ!

 やってて気持ちいいよ!」


 「私もやる!

 確かにきたないなーって思ってたから!」


 僕達で始めた事。

 それがたった数分もしない内に十人近くまで増える。


 「エオ、お前何やってんだ?」


 そこに現れたグランとケイ。


 「二人こそ」


 「俺達はこれから、闘技場の監視。

 そっちは?」


 「ほら、レイネシア」


 肩を軽く触れる。


 「そ、その!」


 前に出て恥ずかしそうにするレイネシア。


 「「⋯⋯?」」


 首を傾げる二人。


 「通りを綺麗にしたらみんなが大きく、強くなるから落ちているお肉の骨とか汚い物を拾おうってエオには、話したの!」


 「なんだ⋯⋯良い事じゃねぇか。

 なぁ?」


 ケイを見るグラン。

 小さく頷きながらケイは笑ってすぐ近くに落ちていた骨を拾い上げて懐にしまう。


 「あぁ。

 今のガキ共はすげぇよな。


 俺らの時なんてどうやってアイツを殺そうかとか、メシ奪おうとかしか考えてなかったからな。


 争いがなくなると別の考え方も浮かぶって事だ⋯⋯良い事だ」


 それ、子供に言っても伝わらないんじゃ?


 「てめぇも拾えよ、グラン」


 「はいはい」


 拾い、グランとケイはそのまま歩いて行く。


 「二人も拾った!」


 「⋯⋯うん」


 嬉しそうにするレイネシアを見て、僕は心が暖かくなった。


 こうして人は良い方向に向かうのかな。

 これからこうやって後の子供たちが新たな考えを創り、また新しい僕らへと変わる。


 壁もあるだろうけど、みんななら超えられるだろう。


 「子供と自然、両方がかけ合わさったら⋯⋯無敵だね」


 「自然?」


 「自然を見て、子供たちが新たな事を思いつく。


 そうしたら次はまた、新たな子供が。

 ⋯⋯そうして僕達は道を進む」


 道は止まらない。

 

 「じゃあ名前付けようよ!」

 

 「名前か⋯⋯」


 ご飯の時もそんな話してたよね。

 

 「んー」


 「あ、じゃあ!」


 そう言ってレイネシアは立ち上がって、笑って僕たちを見る。


 「星禅(せーぜん)は!?」


 「あ、いいねそれ」


 「でしょでしょ!?

 みんなで拾って大きく強くして、お空に還すの!」


 ⋯⋯出来ることなら、後に落ちる人間たちも続いてくれれば嬉しい。


 「みんなで南の伝統にしよっか、じゃあ」


 「思いついたのレイネシアちゃんだから後にレイネシアの名前が残るんじゃない!?」


 子供達に囲まれ、イイなぁと言われる光景。

 僕はこの日、僕以外に初めて僕みたいな子が産まれたんじゃないか⋯⋯なんて思ったりした。


 あ、ちなみのこの後、ちゃんと畑に行ったから安心してね。

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