短い旅立ち
「待て待て待て!!」
集会の場。
そこで今、とんでもない程暴れ回るみんなの姿があった。
「エオ!!
どういうつもりだ!?」
「頭!何考えてんだ!」
「そうですよ!
南の座を背負う者が、容易く下に回るようなことがあってはなりません!」
グランは壁を破壊し、ケイは机を蹴り飛ばす。
チェシェとクレナは怒鳴り、ウルやバズウたちは扉前で俯いてる。
「い、いや、みんなの気持ちは分かるんだけど」
「駄目だ!
お前がいなければ南はまた変わっちまう!」
そう。
僕は商人さんとの話で色々と考えた。
このままでは勿論安定して悪くない方向に進むことはできる。
けど、今の僕達でやれる事は多くない。
──食糧問題、水問題、そして人の問題。
それら加えて"世界"の問題と"僕自身"の問題と、問題という所だけでもこれだけ頭に浮かぶ。
前半の三つは時間さえ掛ければ問題ない。
けど後半に関してはどうにもできない。
悩んだ。
悩みに悩んだ。
けど、僕自身感じてる違和感。
世界に感じている違和感や東西南北への違和感もある。
文明と呼ばれたり教養と呼ばれたり、そしてまだ会ったことのない貴族という存在。
知識欲がないか?
⋯⋯そう言われれば無いとは言わない。
けれど、世界の問題はどうしてもズラす事が出来ない。
既に僕達の通りや街に入れ組んでいて、僕達のやり方では理解出来ない手法を使っている可能性が高い。
何故なら僕達を"野蛮人"と呼ぶくらいの差があるのではないか?という事がすぐに浮かんだから。
どんな夜を持っているのか?
どれだけ僕達との戦力の差があるのか?
武器や防具以外の道具があるのかもしれない。
違った考えや使い方もある⋯⋯そう考えれば、行かない理由がない。
「けどさ」
「俺は聞かねぇぞ、折角上手く行きだしてんのに」
自分の椅子を蹴って、グランが立ち上がる。
「折角良い道に向かってんだよ、俺達は」
全員が口を閉ざす。
「ねぇ、グラン」
僕は言う。
「あ?」
「そこまで考えてくれてて嬉しいよ」
「お、おう」
「でもさ、僕の理想は、僕が居なくても成立する事なんだよ」
「⋯⋯どういう意味だよ」
そう。
僕の願い。
「みんなが戦わない。
みんなが奪わない。
それらの中に僕は含まれていない。
それはグラン?君も含まれている。
言ったでしょ?
僕達人は、自分ではない誰かに依存をしだしたら駄目だって」
「⋯⋯⋯⋯っ、」
「苦しい時とか辛い時はいいよ?
そういう話ではないから。
⋯⋯けど、僕が言ってるのはこの大きい括りの話だ。
僕がいるから奪わない。
僕が強いから怯えて言いたいことが言えない。
そんなの、今までの頭と何が違うの?
人間の本能を利用した⋯⋯動物と変わらない摂理を使ってる」
絶対にそれは駄目だ。
僕が頭だからみんなが従うのは駄目。絶対に。
「下に回ってはいけない⋯⋯それもそうだし、みんなの意見は分かる。
けど、今の問題を解決する方法が、西にはあるかもしれない」
「にしたってよ⋯⋯時期が悪いぜ」
ケイが横目で言ってくる。
「悪いかな?
安定しているってことは、裏を返せば時間をかけられるとも言えるよ?」
「それは都合が良すぎるように感じますが」
「チェシェとクレナは分かるでしょ?
──今僕達は、世界を敵に回している可能性が高いかもしれないって」
「「⋯⋯⋯⋯」」」
「前提から見て、僕達以外の地域に住む人達は移動できると見るべきだと思う。
けれど僕達はそれができない。
つまり、彼らは僕たちを攻撃することが出来て、僕達は攻撃ができない。
戦力も、どれくらいの差があるかも分からずに」
これを解決するにしても、商人さんに借りを作るわけにはいかない。
「頭としてやれる事。
それは、頭が居なくても成立するみんなの笑顔と生活を創って、そしてそれを⋯⋯流れを、見せること」
一人一人確認する。
「ケイはみんなをまとめる重要な人だ。
けれどどこか偏った考え方もある」
「⋯⋯んだよ」
「グランは性格がありえないくらいひん曲がってて、いつも僕を揶揄う」
「ハッ!」
「けど、誰よりも勝ちにこだわる。
──それがどんなにかっこ悪くても。
ケイの偏った考え方も、勝ちに繋がる風に持っていける」
「⋯⋯⋯⋯」
「チェシェは頭が切れる。
けど考え方が硬くて、頭至上主義という女の子が嫌いな考え方にまとまりがち」
「⋯⋯⋯⋯」
「クレナはお姉さんが好きだけど、意外とお姉さんの意見の粗を探すのが上手い。
それで、自分の意見がなくて、いつも困った顔をしてる」
「そ、そんなことは」
「ウルはバズウも、昔とは違って成長した。
ウルは僕といつも勉強しているから、少しずつだけど僕の考え方が分かるようになってきた」
「うん!エオが頑張ってるから!」
「バズウは力任せな考え方だけど、今は違う。
けれどどれかを決めるのが苦手になっちゃっている」
「やべぇ隠してたのに」
「ほら、見てよ!
みんな同じに見えて、みんな違う考え方をしてるんだ。
火と水。
火が強すぎたら水を少し足せばいいし、水が強すぎたら少し火を入れれば水が空に上がってく。
僕達人間はこれだけ色々な事が出来るんだ!
決めることも、未来を見ることも、今を考えることも、過去を思い出すのも!」
僕はみんなを見ながら立ち上がって笑う。
「ね!?
僕はみんなと創りあえる世界がもう始まってるんだ!
みんな一人一人、違くて、喧嘩はしてしまうけど、そのぶつかり合いすらも僕達の個性だ!
そんなみんなで考えて、ぶつかり合っていけば、いずれ僕の考えはみんなの中に在る。
そしたら僕が居なくても廻るんだ!
輪は一つの根を通って転ぶ、そしてみんなの生活を整えるために!」
そうしたらみんな、みんなさ。
「はぁ⋯⋯⋯⋯」
集会の場でとんでもない大きい溜息が。
「グラン?」
「分かったわかった」
なんか呆れられてる!?
嘘でしょ!?
「ま、だから付いていくんだろうよ」
グランのその言葉に、みんなが何故か頷いてる。
何!?
どういうこと!?
「エオ、行ってこいよ。
その間、俺達は全力でここを守る」
と、突然みんな何!?
「頭、西の調査⋯⋯頼んだぞ」
「コホン、エオ様、よろしくお願いします」
「お願いします」
みんな次々に僕を見ては納得したような顔で見上げられる。
「え?う、うん」
ど、どういうこと!?
「ほら、そしたら酒盛りしようぜ。
どうせ商人は明日もいるんだろ?」
「え?」
あれ、肩が。
「「そしたらエオを連れ回すぞ!!!」」
あ、僕終わったかも。
今日の予定が⋯⋯!
「イヤァァアアアアア!!!!」




