機会
着替えて商人さんの所へと向かうと。
「おおっ、凄っ」
「相変わらずどんなやり方でこれだけの物を持ってきてるんだか」
「ねぇエオ!
知らない植物がいるよ!?」
いつ見ても凄い。
⋯⋯その一点に尽きると思う。
四角⋯⋯だっけ?
最近覚えた図形。
さん、よん。
全部で四つの角があって、高さがある。
掃除したのか整理したんだろうけど、問題はそれをどうやってここまで持った来たのか。
彼らの手元や周りには一切の荷物を持っている感じはしないし、何か苦労しているような感じもない。
⋯⋯一体どうやって運んでいるんだろうか?
前回は気付かなかった⋯⋯彼らの力。
商人さん達は言わないし、僕達も聞かないけれど。
あんなに小さい身体でどうやって運んでいるんだろうか。
──凄く気になる所。
「気に入っていただけましたかな?
南の頭殿」
「はい!
しかし、何もお返しするものがなく⋯⋯」
「ハハハ!何を仰るかと思えば。
友好の印だと思っていただければと思ってるだけです」
食い気味に言ってくれる商人さん。
本当だろうか?
前回の話でも思っていた事だけど、ナルが言っていた。
ーー商人と名乗る奴らは一人残らず自分達可愛さに何でもやるぞ。
「⋯⋯⋯⋯」
確かに怪しい。
しかし、何が狙いなのかもわからないから詰める事もできなければ、恐らく僕達よりも頭が良いからこそ深い何かがあったとしても分からないという差を感じる。
現にこうして──頭が良いと言われているのが"僕だけ"というのが答えだろう。
そのまとまっている中を見ると、知らない食べ物、そして武器や防具。
「有り難いんですけど、これでは返せないのが」
あの時商人さんは自分から腹の中を話してくれたというのもある。
「いえいえ全く問題はありませんよ」
けれど、商人さん達に遅れを取らないように何かをしていくべきではある地点ではないだろうか。
⋯⋯と言っても現状では何も返せるものがないんだけど。
──しかも。
「あ、商人さん」
「ん?
どうかなさいましたかな?」
「西についてお聞きしたいことがありまして」
そう、借りを作りそうになっている。
*
「そうでしたか」
器を置き、水を飲んだ商人さんが吐息混じり悩んでいる。
「あの話から一変、かなり大事になりましたな」
一連の出来事を全て話した訳ではないが、あの後大規模な裏切り者を見つけたということを話した。
どうせその内漏れる事だから。
「西⋯⋯でしたか」
「失礼なのですが、西とはどんな場所なんでしょうか?」
「んー⋯⋯頭殿にどう説明してすれば良いか⋯⋯難しい所ですね⋯⋯」
顔から滲み出ている壁に向き合ったような顔に、僕は止める。
「まだ聞けるような段階に達していなかったですか」
「いえ、そういう訳でもない」
「そうなんですか?」
「えぇ」
水をまた飲んで、商人さんは切り出す。
「この南にはないものをどう説明すればいいのかが分からない、と言えばいいですかな?
例えば物に価値があると言ったところで、何がなんだか分からないと思います」
「⋯⋯価値?」
それは塩とかの話って事なのかな?
「えぇ。
例えばこの机」
軽く叩いて説明をしてくれる。
「これに⋯⋯例えば10ライオスという価値を付けましょう」
「はい」
「この価値を付けた事で、これを10ライオスで払わないといけないんです」
「でも10ライオス持ってません」
「さすが頭が良い」
⋯⋯え?そうなの?
「じゃあどうやって10ライオス手に入れるのか⋯⋯そういう話になりますね?」
「はい」
「それを労働という南では一般的な事で10ライオス分の働きをする事で、手に入れる事ができます」
「その働きで価値を手に入れて、机を手に入れるということですか?」
「そういう事です。
そしてそれは──様々なモノに価値があります。
労働、食べ物、こういう物や道具、多種多様です」
何気なく説明してくれたその時。
僕の頭の中は一気に様々な事が繋がっていく。
「頭殿?」
「一つ聞きたいのですが、それは武器や防具などは関係しているのでしょうか」
「っ、」
一瞬驚いたように商人さんは笑う。
「えぇ、武器や防具は主流です」
⋯⋯当たりだ。
ということは、様々なところで既に、西が関わっているという事になる。
「そうですか」
どうしよう。
様々なところに西が関わっているせいで、気になってくる。
「商人さんの予想でいいのですが」
「ん?えぇ」
「僕が街を越えるという選択肢はあるように見えますか?」
以前言っていた資格や強制力があったとして、この人たちから見て僕が動けるのかどうかというのは凄く気になるところだ。
「ほう」
なぜか商人さんだけではなく、その後ろの配下?下の人たちまで驚いている。
「本当に面白い人だ」
「お世話になっているとは思うので、あまりこういう事は突っ込むところではないというのは分かってはいるつもりなのですが」
「うんうん⋯⋯私の独断と偏見で言えば、イケると予想しております」
「え?」
「ただし頭殿だけですが」
⋯⋯やっぱりそうなっちゃうか。
「予想していた、ように見えますね」
「なんとなくは」
僕個人としては、前々から西は見ておかなければならない場所であり、危険極まりない場所であるということは決まっていた。
けれどどうに手段が欲しい。
⋯⋯そう思っていた。
「どこまで踏み込んでいいものか」
僕は悩む。
「どうかしましたかな?」
「もし商人さんが構わなければの話ですが⋯⋯」
──僕が頭としてやらなければならない事が決まる。
「西に、行くための手段を取引でも構わないのですが、教えてはいただけないでしょうか」




