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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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残滓

 「「野蛮人?」」


 「⋯⋯フンッ」


 何かスッキリしたのか、まるで別人のように背もたれに寄り掛かっている。


 「野蛮人っていうのは?」


 「殺せ。

 ⋯⋯それでいい」


 「おいおいどうした?

 さっきまでの焦りは」


 ──いや。


 「グラン」


 僕の声を察したのか、グランがすぐに子供であるレイネシアを持って座る。


 「多分この人、もう恐れてない」


 「⋯⋯⋯⋯っ」


 動揺するグランとその一連の行動を見ていたジッと僕を見つめるマークさん。


 「お前⋯⋯」


 「おい、頭に何様のつもりだ」


 そんなグランの言葉も聞かないままマークさんは続ける。


 「なるほど。

 昔に南を"警戒"しろというのはどうやら本当らしい」


 僕とグランの顔は完全に行方不明だ。

 なんの話なのかすら全く見当がつかない。


 「感情の機微が深い。

 人の裏を的確に読み取る。

 加えて寄り添える。


 理解し、ある程度の思考力がある。

 お前は本来"西で生まれるべき"人間だったのかもな」


 うまれるべき?

 場所に条件があるの?

 落ちる仕組みは南以外では既に知られている?


 マークさんの一言で、僕の頭の中は高速で疑問と仮の答えが回りだす。


 「そんな急に上から目線で語りやがって。

 さっきまでとは別人じゃねぇかよ」


 「⋯⋯もうどの道俺が生き延びる方法がなくなった。


 ──レイネシア様も」


 と、僕達の間にちょこんと座る、レイネシアと呼ばれる女の子。


 「というと?

 説明してもらわないと僕達も困るんだけど」


 「説明したところでお前たちの手札が増えるだけだろう?


 フンッ、ごめんだ。

 それに、後で俺の家族になんて言われるかわかったもんじゃねぇ」


 ⋯⋯家族。

 本当にあるんだ。

 

 「ねぇマーク」


 「ん?」


 「家族って本当にあるの?」


 すると少し、マークさんの顔が揺れている。

 まるで初めて水を見た時のような顔で。


 「ッハハハ」


 「「⋯⋯⋯⋯」」


 「あぁ。

 お前の思う家族かは知らないがな」


 「そう。

 ありがとう」


 そっかぁ。

 家族っていうのはあるんだ。


 いつかこの南でも""""家族""""ができるといいな。


 「エオ」


 「ん?あぁ」

 

 グランの呼びかけで僕はハッとする。

 そう。この後を進めないといけない。


 「最初に言っておきたい」


 無言で僕を見つめるマークさん。


 「貴方を殺す事はしない」


 「「⋯⋯っ、」」


 「おいおい、エオ!?」


 「⋯⋯⋯⋯」


 グランとは違い、黙ってマークさんは僕を射抜くように見つめる。


 「でも、それも理由を聞くまで」


 「理由を話せば殺すのか?」


 「いいえ?

 しっかりと貴方がやるべき事をやれば」


 「野蛮人のくせに律儀だな」


 「人を殺す。

 陥れる。

 騙す。

 奪う。


 ──人は間違う。

 けれどそれでハイ終わりとはいかない。


 人はそもそもそういうモノであり、それを通じてどう変わるか、です」


 「オイオイ⋯⋯南の人間とは思えねぇ意見だな」


 「そうなんですか?」


 確かに言われてみれば本の人たちは南っぽくはない言い方をしていたからそうかも?


 「まぁ他でもあんまり聞かねぇ話だが。

 教養も知識もねぇ南の人間から出る答えとしちゃあご立派って奴だよ」


 「おかしいですか?」


 「いいや?

 ただ、お前みたいなのが一人だけで回ってるのが面白おかしいだけだ」


 なんだろう。

 この人は何かをずっと隠している。


 「そこまで言うのに何故、南にいるんですか」


 「⋯⋯⋯⋯」


 足を広げたまま、静かに窓の外を見るマークさん。


 「俺は死んでもいいが」


 そこで言葉は止まる。


 ⋯⋯重苦しい。

 今僕達が問い詰めているのに。


 なんだろう、本来のこの人はもっと凄い立場の人だったのかな?


 ベルさんやドン・ゴのような風格というものがある。


 「なぁ」


 「はい」


 少し間が空いて、最期だからか、少し澄んだ目で僕を見て、発した。


 「レイネシア様を頼む」


 「何言ってんだ?

 なんでこのガキを救わなきゃならんのだ」


 「グラン」


 「まぁ絶対じゃない。

 なら、出来るだけ苦しまないように殺してやれ」


 「マーク、なんでそんな顔しているの?」


 「""お嬢""様」


 マークは僕の聞いたことのない単語を言い放っては、考えられないほど緩んだ笑みで話しだした。


 「私はあなた様のお父上に会えないほど酷い行いをしました。


 もう私は居るべきではないのでしょう」


 「なんのこと?」


 「マーク、話してほしい」


 僕の問いに、ぶっきらぼうに笑う。


 「⋯⋯話してなんになる」


 この人は、まだ。

 何か残している。


 「西ですか?」


 「っ、」


 「なんですか?

 あなたの行った理由が正しくなるのは」


 「エオ⋯⋯っ」


 "舐めるな"

 そう思わず激しく心が揺れる。


 「すげぇ怖え眼だ」


 「何があなたをそうさせるんですか。

 西とやらの掟ですか」


 「まぁそんな所だ。

 お前よりも守んなきゃならねぇ⋯⋯な」


 「では、丁重にレイネシアさんを西に返します」


 「それは駄目だ!!!」


 立ち上がって僕達を見下ろしながら叫ぶマークさん。


 ──"コレ"だ。


 「なぜですか?

 レイネシアにとっては、南は居てはいけない場所なのでは?」


 「っ、それとこれとは別だ」


 「別ではありません。

 貴方が話せば返しません。


 話さなければこの話は進みません」


 ここはきっちりするべきところだ。

 

 「貴方のやった行動まで寄り添うわけにはいかないので。


 貴方の感情で、人が死にました。

 今も苦しんでいる人がいます。

 それで貴方を殺して終わり⋯⋯決してそんな終わりにはさせません。


 貴方が変わるまで──僕は見守ります」


 コレが、必要だ。

 僕達には。

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