マーク
気は一瞬たりとも抜けない。
「「⋯⋯⋯⋯」」
ギィィと開く扉。
その先は無くってしまったような。
⋯⋯どこか寂しさすら感じる場所が見える。
「よぉよぉ」
暗闇から声が聞こえる。
「こ、」
グランが、僕の胸に手を当てて静止させる。
「用があって来た」
奥から人が現れる。
それはドンドンくっきりしていき。
「なんだよ、てめぇら」
「グランだ。
隣にいる頭に仕えてる」
その一言で、相手の男が露骨に顔が歪む。
「あぁ⋯⋯オメェか」
「「っ、」」
一瞬で姿が消える。
⋯⋯速い!
「オメェが⋯⋯全ての──ッ!?」
拳は僕の顔の前で止まり、強い風が僕の背後で吹き荒れる。
「頭に殴りかかったら俺もお前らを問答無用で殺さなきゃならん」
そう。
グランが鼻糞をほじくりながらもう片方の手でその拳を止めていた。
なんか、カッコよくなってる、グラン。
「お、俺の拳を⋯⋯」
「そうそう。
ついでに言うと、今結構イライラしてるんでな⋯⋯あんまり面倒を起こさないでくれると助かる」
「⋯⋯くぅっ」
離そうとするにも、グランの力より弱いのか、ギュウウと音を鳴らすだけ。
「お前一人か?
話によれば結構いたはずだが」
「みんな出ていったよ。
お前たちが動くのが早すぎて、尻尾巻いて逃げちまったよ」
⋯⋯張本人がここまで言うなんて。
相当情報が早かったってことなんだね。
「頭の要望はいつでもお話で解決したい生き物のようでな。
俺はお前の気持ちが分かるが、どうする?
強制的に頭を踏まれながら会話するか、人間として話をするか⋯⋯どっちがいい?」
ちょっと⋯⋯グラン。
「フンッ、こっちだ──」
鼻で笑った彼を、グランは奥へと押し飛ばすように蹴る。
す、凄い音が聞こえるけど。
「今のお前には、鼻で笑うほどの力なんて残ってねぇんだから、黙って頷いておけよ」
そう言うグランの顔は、何処か見覚えでもあるような顔付きで、少し変な気持ちになった。
*
「何ももてなすモノはねぇが」
そう出てきたのは、普通の水。
「お得意の変な異物入りじゃねぇだろうなぁ?」
「⋯⋯んな事するかよ。
首が飛ぶのなんか目に見えてんだからよ」
「分かってりゃいい」
それでもグランが先に僕に入っている水を飲む。
「ん」
「ありがとう」
器を受け取って前を見ると、彼の顔が凄まじく歪んでいた。
「オイ、なんのつもりだ」
「ん、あ、あぁ。
悪い⋯⋯そんなつもりは」
「あぁ?テメェ──」
いや、多分。
「待って。グラン」
「あ?なんだよ⋯⋯」
「こんにちは、僕は頭のエオ」
「風の話でよく聞く」
「そっちのお名前は?
名前も知らずにいるなんて恥ずかしいから」
「マークだ」
吐き捨てるように言う。
そんな彼を見て、僕はどうにも引っかかる。
「なんでそんなに落ち着かないの?」
そう、さっきからこの人は、手をずっと弄って落ち着かなそうだった。
「癖だ。
それ以外に理由なんてねぇ」
「そう?」
何かに。
何か⋯⋯凄く重要なことを隠して──
「ま、マーク」
「「「っ、」」」
部屋の端っこから、一人の女の子の声。
「レイネシア!
向こうで待っていなさい!」
そう叫ぶマークさんと一瞬でグランが高速でその声の主を取り押さえた。
「グラン!」
「⋯⋯あ?ガキ?」
取り押さえたグランが連れてくる。
⋯⋯子供だ。
「⋯⋯っ!?」
マークさんの顔が完全に焦っている。
「皆はどこに行ったの?」
「レイネシア!」
「なんの話だ、マーク」
「知らぬ話だな」
「答えなければこのガキから殺す」
グランの手には、黒い棒。
「⋯⋯グラン!」
「エオ、話が通じない化物も世の中にはいる」
至ってグランの顔は本気だ。
冷静で、一瞬の隙も作っていない。
「説明しろ。
俺達はお前をただ殺す為に来ている訳じゃねぇ。
けどな、お前たちが行った行動のせいで、何人もの人間が今倒れてんだよ。
⋯⋯ただで終わらせるわけにはいかねぇ」
そう言ってマークさんを睨むグラン。
「お前⋯⋯自分が何をしたのか分かってるのか?」
「⋯⋯⋯⋯」
「お前は今後もしかしたら生きれたかもしれないガキ含め大勢の人間の希望を捨てたんだぞ。
それ相応の理由があるよな?」
「⋯⋯言ってどうなる」
「あァ?」
「言って解決するのか⋯⋯?
──"野蛮人"




