僕達三人
「⋯⋯どうやらここらしいぜ、エオ」
横目でそう言ってくるのに頷いて、僕はその隣にいるニバに声をかける。
「ニバ」
「エオどうしたの?」
「今回は僕とグランで行くから」
「え、なんで!?」
地団駄を踏むニバ。
「今回はニバの怒りが外に出ない為」
「⋯⋯っ、」
「今回、ニバが思った通りの結論に行かないと考えてるから、どうしても耐えられないんじゃないかって思って」
ちょっと長い、重い時間。
「おいニバ、お前の為を想ってんだぞ?」
僕を悪者にしない為にグランが咄嗟にそう言ってくれる。
「⋯⋯わ、わっ、」
完全に怒りが顔に出てる。
仕方ない。
「わー!!!!!」
「なっ、なんだよ、エオ」
「ど、どうしたの!?」
「ほら、ニバも」
「え、⋯⋯え?」
オドオドしながらも、同じように叫ぶ。
「わ、わー!!!!!」
「⋯⋯グランも」
「はぁ?
俺そんなに変なやつじゃねぇ──」
僕達の視線に観念したようで。
「わ、わっ恥ずかしいー!!!!!」
俯く二人に僕は問いかける。
「ちょっとは身体が軽くなったんじゃない?」
「「⋯⋯言われてみれば」」
著書バルサン先生による人間の身体である精神の硬化を低減?させる方法らしい。
「大丈夫。
僕とグランを信じて」
「⋯⋯う、うん」
「分かるよ」
屈んで、ニバを見上げる。
「あの頃からなんにも変わらないね」
「なっ、何が!」
「曲ったことが嫌いな所」
もう昔のことだ。
僕が初めてニバを見たのは、食料を数える状況の時。
ーー『おい!今一個盗っただろ!』
女の子なのに。
ニバは一生懸命いわゆるズルをしようとする男たちと真正面から立ち向かっていたのを見たのがキッカケだ。
「む、昔の事はいいでしょ!」
「うんうん。
良い所だよ」
「ほ、ほんと?」
「良いところはそのままで良いじゃないか」
「だ、だってみんな⋯⋯気が強いって」
「大事なことだから気が強くたっていい」
だからこそ、こういう事をする人間の気持ちが分からないのだろう。
⋯⋯まぁお前も分かるのか?と言われれば、それまでなんだけどね。
「ニバ、大丈夫」
「う、うん⋯⋯」
「なんかあったらグランが何とかしてくれるよ、多分」
「俺がやんのかよ。
うんこ投げるくらいしか思いつかねぇぞ」
「臭っ!
アンタのうんこなんて死んでも嗅ぎたくないんだけど!」
「「「⋯⋯ハハハハハハハッ」」」
さて、行こう。
相手がなんなのか。
「じゃあニバ」
僕達はその勢力とやらを見に行こう。
「行ってくる」
「行ってくんぜ」
*
錆びた扉が僕達の前に立ちはだかる。
「⋯⋯おい、頭さんよ」
扉に手を掛けようとしたら、グランがそんな事言って止めてくる。
「どうしたの?」
「今自分はなんだっけ?」
「──頭⋯⋯だけど」
「扉を開けようとしているところを狙われたら?」
⋯⋯あっ。
「ご、ごめん」
いつもとは違う、グランの瞳。
なんだか僕よりも頭に似合っていてちょっとばかし羨ましい。
手を掛けようとするグランは一旦僕を見る。
「エオ」
「は、はい」
「間違いなく今の南を創ったのはお前だ」
「う、うん」
「短い時間だ。
だけど子供扱いするつもりも、別に本音を隠すつもりがねぇ。
──けどよ」
深い呼吸混じり。
「こんな良い世界を創ったお前が、おいそれと死んでいいわけじゃねぇのはお前が一番理解しなくちゃならねぇ」
「⋯⋯ごめん」
「謝るな。
お前は今、頂点なんだから」
「いや僕は──」
「頂点だ」
いつもなら引くグランが、全く引かない。
「お前の言ってることはすげぇ事だ。
ご立派って奴だよ。
けどな──お前を慕っているガキ共は、お前を紛れもなく神だと思ってる。
⋯⋯なぜなら目の前に存在しているから。
お前の言ってることも頭にはあるだろうよ。
だがお前が事実上この世界に、
この南に、
在り続けなくちゃならねぇのは紛れもない事実だ。
今はまだいい。
⋯⋯だがこれから、お前のために死んでもいいと言う奴は必ず出てくる」
小さく僕を何回か見ながら頷いている。
「お前の命は今、お前が軽く見ていい道を通り過ぎたんだよ」
扉の前で僕達は、今まで一番真面目に言葉を交わしている。
「別に怒ってるわけじゃねぇ。
だがそういう行動一つ一つに、お前が自覚してない自分の命の軽さを──相手の奴らの、中でも偉いやつに見せるなって言ってるんだ。
普段俺達の集まる場所でやるのはまだいい。
⋯⋯だが今外にいる。
そういう時は死んでも良いやつがやるべきなんだよ」
それはつまり、グランが死んでもいいってことじゃないか。
「顔が言ってるな」
「僕はそんなつもりで連れてきてない」
そうだ。
グランはこれからもずっと一緒にいるんだ。
「だが頭になるってのはそういう事だ。
もう既にこうやって争い事が起こってる。
別にお前が起こしてねぇのは分かってる。
けど、お前のために働く奴がいる。
──お前がどう思おうとな」
何も言い返せない。
「お前の言ってる言葉は、
お前の行う行動は、
未来の道を進む為に在る。
だから外では絶対に頭としての威厳だけは残せ。
⋯⋯それにな」
再び軽く扉に手を掛ける。
「自分の勢力の頭が、働いてばっかりなのはマジで嫌だから⋯⋯さっさとどうにかしてくれ」
「それは難しいと思う、グラン」
「ケッ!
本当、クソッタレな頭で」
「後に崇められるんだろうよ、お前みたいな良い奴ってのは」




