実験
それから数日が経った。
僕は植えていた畑で収穫できるものから数を調べた結果、縄張りにいる子供たちが一つは食べられるほど収穫出来ているということに気付いた。
──そう、"外に出ること"なく。
「ありがとうございます!!」
「はーい、今後も働いてねー」
屈み、僕は自作の籠に入っている"ちゃちゃ"を一つ取って、手渡す。
順番に並んでもらって、渡す。
⋯⋯一人一人顔を見ながら。
「ありがとー!」
「はーい」
あの時。
僕達は人から奪う事でしか食事が出来なかった。
出来る事が限られていたし。
⋯⋯何より戦って生き残ることの方が重要だった。
だけどこれだけ時間を掛けて。
「ありがとうございます!」
──やっと。
「ありがとうございます」
頭を下げて子供達が受け取っていく。
そんな姿を見て、僕は言葉にならない気持ちが胸の中で動く。
「エオ」
そして、デンデラとグラン、年長組たちに渡していく。
手に持ったちゃちゃを見て、デンデラが僕の隣に座って空を見上げ、笑う。
「何回も遠征して来たな」
「うん」
「生きる為に必死だったよな」
「そうだね」
「この前の事がもう嘘みたいだよな」
そうだ。
この間初めてこの村でちゃちゃを作ることができた。
そんな出来事からまだそこまで時間は経っていない。
「本当だよね」
「エオ」
「ん?」
「⋯⋯見ろよ」
顎で差すところには、木の枝を刺して今か今かと待っている子供たちの姿。
「エオ、お前が救ったんだ」
「その前にデンデラがどうにかしていなかったら難しかった事だよ」
人をまとめ、掟を守れるような状態にしたのは全てデンデラの成果だ。
「俺は少し圧をかけてやっただけ。
本当の成果はエオ⋯⋯お前が居てこそだ」
鼻から息を吸って、デンデラは空を見上げる。
「大人に頼らない生活⋯⋯まぁ一部そうなのかもしれねぇが、これから──始まる。
俺とエオで始めた⋯⋯目標が」
"ねぇ!僕はエオ!
名前を教えてくれないかな!?"
ーーなんで教えなくちゃならねぇんだよ。
"だってお前とかって変だから"
ーーデンデラ。
なんでかわからないけど、そういう名前だった気がする。
"じゃあ僕達これで""友達""だね!"
ーー⋯⋯はぁ?
友達ってのはそんな簡単なもんじゃねぇよ。
"とりあえず僕達の小さい目標はただ一つ"
ーーなんでお前が決めんだよ
⋯⋯懐かしいな。
僕達が始まったのはあんな話からだった。
「だね。
まだまだこれからだけど」
「⋯⋯あぁ。
だが、一番最初の壁は登れたんじゃねぇか?
あの山みてぇに」
近くの崖を見て言うデンデラ。
そうだ。
でも、僕達が望んでいる世界というのはこれよりももっと高いところにあって、登るのですら辛い場所だろうね。
「うん。
でも、登るよ」
横目で聞くデンデラは鼻で笑って焼けたちゃちゃを口にする。
「さっ、後は実験とやらの成果を見るとするか?」
「うん」
*
この間の成果を見る時だ。
「おぉ、ブンブン飛ぶ生き物が居ない」
「⋯⋯本当だ」
この発見は僕達にとっては大事な事だ。
あの子には何か別の形で多く渡すか。
撒いてみた数は10個くらい。
元々撒いてた所は食われているけど。
んー食われた場所と食われてない理由が気になる。
「デンデラ、どう思う?」
「んー、見た感じ、数ってところか?
食われてる所は数が多いだろ?
でもアイツが言ってきたところは大して撒かれてない」
普通に見たらそうだ。
僕も同意見。
でも、何かあるはずだ。
「近さかな?
でもそこまで離れてるわけでもないし」
⋯⋯いや。
「デンデラ」
「ん?
なんか分かったのか?」
「いや、見てよあっち」
僕はいつも使っている畑を指差す。
「なんだ?どうした?」
「あのブンブン言ってる生き物ってさ、多分葉を食べるよね?」
「ん?多分な。
それがどうしたんだよ」
「だとしたらこの場所に植えている葉もご飯として見えてるはずだよね?」
デンデラにそう言うと、遅れてハッとした。
「──確かに。
よく気付いたな」
「ご飯がこっちにあるのに、なんであの飛ぶ生き物はあっちにいるんだろう?」
多分そこに理由があるんじゃないか?
僕はそう考え、もう一度見直す。
その場で僕は考え、長く考えた。
そして結論が出る。
「彼らの目的は"ご飯"ではない?」
「ご飯じゃねぇって?
生き物なのに?」
「ご飯が目的ならここに来るはず。
でもずっと見てる限りだと一つもこちらに来ないよ」
「確かにな。
グランにも見させたが、暇すぎて死にそうって言ってたな」
「そしたらご飯の質や種類なのかなって思った。
でも、植えてるのはこれだけだし、それも違う。
つまり、ご飯を食べているという生き物の考えがおかしいって事になった」
「なるほど。
目的が違うなら俺達の想像と全く違う答えになるな」
「そう。だから気になる」
畑を見る。
見まくる。
「⋯⋯ん?」
よくよく見たら、あの生き物。
「エオ?」
「デンデラ、ちょっとこのちゃちゃの草を取るよ?」
「え?おい嘘だろ?」
ポコンと僕は掘り返し、離れてみる。
「それもう成長終わるやつじゃねぇのか?
もったいねぇよ」
「見て、デンデラ」
僕を視線を送る。
見続けたデンデラが僕を見て信じられないといった顔をする。
「どういうことだ?」
──うじゃうじゃいたのに、抜いた並びにはひとりもいなくなったぞ?




