産まれた日
「おはよー!エオ様ー!」
「あっ、おはよー!」
「おはよー!」
「あ、おはよ!」
すれ違う度挨拶を交わす。
回数が多すぎて段々分かんなくなってくるのは仕方ないよね。
「それで⋯⋯えーっと⋯⋯」
あれ、さっきまで何を考えてたんだっけ。
──あ、そうだ。
もうすぐニバとグランの歳が16回目になる。
僕達の中では何もしない事が共通認識だったんだけど、僕個人的に何か、みんなで16回目を酒盛りなんかで盛り上げられないのかなと思ってたんだよね。
僕はまた違う感覚なのかもしれないけど、この間のガムパさんとの会話で気づいた。
生きていることが"辛い人"が多いって。
だからこそ、僕が頭としてやっていくべきことは多いけれど、その中でこの問題はかなり重要で、大きな事なんだと思う。
それは、自分を見たら分かる。
自分はやる事があって、進む為の感情を持っている。
けれど、みんなはそうではない。
ただ、道の中で座っている人もいれば、食べ物を分け与えている人もいる。
楽しそうにしている人もいれば、楽しくなさそうな人もいる。
今歩いているここ、二十三番通りも。
ここは中間地点という考え方で、真ん中に食糧を多めに置く事で何かあった時に備える為だ。
僕も頻繁に来るんだけどね。
⋯⋯関係ないか。
ふと、足を止める。
「⋯⋯⋯⋯」
この通りの人達を眺める。
本当、色々な人がいる。
歩いている女の子を誘う人もいれば、一人で歩いている人もいる。
男の子と女の子が揃って歩いている人もいるし、男の子同士でも歩いているのが見える。
それに食べ物を交換してもいる。
それぞれ、みんな。
そう⋯⋯みんなが。
南だけじゃない。
全ての人間が、生きているという事をありがたいと思えるような場所を作る必要があるし、みんなが"この場所"で生きていたいと思えるような事を何より増やしていくべきだ。
今僕達には、その生きたいと思えるような事が少ないのだと思う。
そこで僕達だ。
何かないだろうか。
創れる何かを。
*
「オイオイ⋯⋯なんだよ、これ」
「なに!?これ!」
それから一ヶ月後。
僕は⋯⋯いや、数百人の仲間たちを集めて、二人を一番中心に立たせる。
数十人の子供達と、大人。
僕のやりたい事を話したら"やろやろ!"と大喜び。
⋯⋯やっぱりこういうのはイイよね。
特別な二人の椅子とグランにはお酒。
そしてニバは服が好きなので、女の子たちに頼んで普段よりも少し良いモノを考えてもらった。
「今日でグランとニバが16回目⋯⋯つまり16歳になった!」
二人の視線が僕に穴が空くんじゃないかというほど刺さる。
「二人は⋯⋯」
そうだね。
こう聞くと、"特別"なんだなぁ。
──二人も。
「二人はよく働いているのもあるけど、結構僕と仲が良いからというのもある。
でも、これから始めていこうと思うんだ」
みんなの笑顔が僕に向く。
「みんな⋯⋯どう?
生きていくって」
一人一人見つめながら歩いていく。
「今までの辛い事とか嫌なこと。
恥ずかしい事とか⋯⋯逃げ出したい事とか」
中心で、足を止める。
「でも──」
何よりも僕が、みんなに居てほしい。
笑顔でいてほしい。
「でもそれだけじゃつまらないよね」
みんな頷いてくれる。
「僕達がこの世界に落ちた日。
今の大人達と⋯⋯一部の子供にとっては地獄の日々だった。
⋯⋯死にたいって思った。
⋯⋯それに、お前なんて死んでしまえ。
⋯⋯なんで自分だけ。
"生きているくらいなら死んだほうが良い"
──昔はよくそんな声が聞こえたよね」
今でも寝ていると思い出しそうな日々。
こびりついて、離れない。
「そんな僕達に⋯⋯いや。
そんな僕達だからこそ、産まれた事に意味がある⋯⋯僕はそう思う」
手にはお酒。
いつもは全く飲まないけど。
「僕はこの南。
⋯⋯ゆくゆくは全ての人間が、この場所に来て、一緒に感じて、この場所で死ぬまで"生きていたい"って思えるように変えたい」
チラッと横にいる二人を見ると、ポカンとしているようでよく見ると──手が震えている。
「この世界に十六回目の痕跡を残してくれてありがとう。
⋯⋯そして」
僕は子供達を呼んで、二人の元へと行かせる。
「「なんだ!?」」
二人の腕には、一本の紐。
正確には違うけど。
「僕が考えて、細かい調整を入れてもらった⋯⋯結びだ。
この植物は頑丈でね。
僕達の幸せや生きていたいと思えるような気持ちを表したモノだ」
長くなっちゃったかな。
「ごめんね。
早くお酒飲みたいよね」
そうして一笑い。
「これからも仲間として、また一人の人間として、一緒に頑張っていこう。
いっぱい二人にも言いたいことはあるけど、でも」
ーーエオ!
ーーエオ⋯⋯大好き!!
「ふふ。
最後にニバ、グラン。
この世界に落ちてきてくれてありがとう⋯⋯乾杯!!!」




