問いが問を生む
「でも掘ればいいってもんでもねぇんじゃねぇの?」
ケイ、後は力自慢が中心の人間を急だけど呼ぶことになった。
「でも掘ればあるっていうのを一回知りたいんだよね」
「まさか全部掘ったら水ってこたぁねぇだろうよ、エオ」
きっかけは一人の疑問だった。
それは素晴らしい結果をもたらす。
みんなでとりあえずあちこち力技で掘ってみたんだけど、どうにも水は出てこない。
「掘り過ぎたらまずいのかな?」
「専門じゃねぇからなぁ⋯⋯なんとも」
色々な人たちになんとか知識を貰えないかと助言を求めてはいるんだけど、全く無反応。
⋯⋯仕方ない。
食糧と交換と言っても、知識を小出しにするだけで生活が出来るのだから、やる訳がない。
仮に僕が逆だったらそう思う。
もっと言えば、そもそも僕が定めた掟は多くない。
それ以外なら関係ないだろ?
と言わんばかりの姿勢の人間がまだまだ居る。
悪くはない。
彼らも生存する為に必死なのだから。
けれどやっぱり、どうしても難しい。
今までも一人だから凄く問題になるかと言われれば、別にだ。
だけど今と昔の違い。
それは、僕だけではない人々の命が身体に乗っているということだ。
「この通り以降だけで数万人以上はいる」
そうだ。
どれだけの人達が水で苦しむ?
僕が目指しているのは"全員"だ。
⋯⋯僕達が楽をする為に頭になったのではない。
「わざわざ家に入って見てもいいですか?とは言えないし」
「でも当たり前だが、何らかの法則があるんだろう」
ケイの言葉に僕は頷く。
「そういう発想と成功と失敗の積み重ねたモノがあるはずなんだよね」
「んー、だが何もなしからやるとなると、中々難しいな」
何から手を付けるべきかなぁ。
「あっ!」
一人の思い付き。
「例えばっすけど⋯⋯あ、その大したことないんで」
みんなの視線が強すぎたのか、縮こまってしまう。
「大丈夫だよ。
みんな考えてるだけだから」
「そ、そっすか?
例えばっすけど、土がここって硬いじゃないっすか?」
下を見ると確かに。
「でもさっき歩いてた時にちょっと柔らかい土があったりするっすよね?
もしかしたらそういうのもあるんじゃないっすか?」
「おー!
お前良いこと言うなぁ!?」
ケイとグランに肩を組まれ、恐縮しながらペコペコを頭を下げている。
それもそうだ。
確かに。
畑の土は柔らかい。
それは、土と水が上手く混ざり合っているからであってその現象が起きているけど、水そのものが近い場合はその柔らかいモノは顕著に出るはずだ。
「そう考えると考える対象が増えそうだね」
「だな。
てことは植物とかの生え方も⋯⋯」
「ソレじゃん」
思わず突っ込む。
「んぁ?」
「グランも良いの出すじゃん!」
「なんだなんだ?」
「だって植物や自然って明らかに水場がないところに育たないじゃんね?
枯れちゃうから」
「「「「「「おぉ」」」」」」
「そうだよ、自然の水を少しずつ引いていくか、みんなで運んで続けていけば、畑は育てられるんじゃない?」
「となれば」
僕達は無言で、目で挨拶を交わす。
「大きく分けよう。
一つは山方面に。
一つは柔らかい場所を探しながら、水源になりそうな所を探す」
「見つかったら?」
「一旦中止して、合流しよう」
「分かった」
***
四十一番通り某所。
「ッたくよ、新しい頭ってのは本当俺達に優しくねぇよなぁ?」
下で動く麗しい髪を撫でながら、快楽に耽る数人の男。
⋯⋯そこからドロドロとした会話が続く。
「西のドルマンだっけか?
あそことはどうだ?」
「こっち側の事には気付かれているんで、あえて情報は出してます」
軽く舌を弾き、男は片頬を吊り上げて笑う。
「西ってのはそんな夜がすげぇのか?」
「それがわかんねぇんす」
「わかんねぇ?どういう事だ?」
「見た目は小綺麗なんすけど、なーんか強そうに見えねぇっていうか」
聞いた男は眼前の男の額を指で弾く。
「バーカ。
強い奴はわざわざ見せねぇだろ。
飯持ってるやつが人に俺飯持ってるだろ、なんて言うか?」
「⋯⋯そっすね」
「だけども。だろ?」
「そうっす」
「特徴は?」
「太ってるっす!」
「ドン・ゴと一緒か?」
「あーっ!そうっすそうっす!」
もたれ掛かり、男は天井を見上げて笑う。
「羨ましいな、全く」
「それと」
「なんだ」
「いy──」
その時勢い良く扉が開かれる。
入って来たのは下っ端らしきボロボロの老人。
「ヴェンビー、なんだ」
「あ、あのぉ」
「ジジイ早く」
モゾモゾとしながら、ヴェンビーが張り上げる。
「どうやら⋯⋯新しい頭が水源を見つけたようで」
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
全員の顔から余裕の二文字が消える。
下で動く人間を蹴り飛ばし、男は立ち上がる。
「クソがっ!!」
椅子を蹴り、机を蹴り、この中で力を握ってる男は畳み掛けるように怒号をあげる。
「俺達の食い扶持、女、家、今までの積み上げたもの全部奪うつもりか!?
こんの泥棒が!!」
「まずいっすよ!マークさん!」
「あぁ?」
「情報によると、最初始めた時は水の大道を作ろうとしてたんで、いざとなったら⋯⋯」
「全部の通りに水を回せるって?」
足下に集まった夜が建物を半壊させる。
「クソガキが──!!!」
くそっ。クソックソッ!!
「俺達ならなんとか⋯⋯」
言いかけたその時、怒りの矛先が向く。
「俺達ぃ?
ルンデルバーンに負けた俺達が?」
「「⋯⋯あっ」」
「リオンめ。
アイツも村上がりの癖に逸材だった。
神ってやつがいるのなら、あんな奴になんで渡すんだかなぁっ!!!!」
激しい物音に、全員が震える。
「どいつもこいつもなんなんだよ!!」
「あのぉ⋯⋯マークさん、それよりも!」
「今機嫌が悪ぃんだよ。
さっさと失せろ」
「ではなく⋯⋯」
「──なんだ」
「今、西のドルマンさんが」
コツ、コツと。
南では一切聞かない⋯⋯硬い音である。
「マーク氏、"お久しぶり"でございます。
お日柄も良く、ですね」
「⋯⋯ドルマンの右腕かよ」
吐き捨てるように現れたのは。
ドルマンの右腕であるハイズ。
「随分ご乱心されている様子」
腰で両手を組みながら、半壊したこの場所を睥睨する。
「何の用だよ」
「少しお話が外に漏れていまして」
チッ。面倒な。
「なんだ」
「私達も少し噛めないかな?と」
「ッくククク」
首を傾げるハイズと、笑いが止まらないマーク。
「ッハハハハハハ!」
そうだ、そうじゃないか。
「あいつに剣を投げつけるにはこれだな!
よーし、ハイズ!」
そう、知らないところで。
「──同盟だ」
新たな戦いが始まっていた。




