水の道は長い
商人さんの言葉が頭から離れない。
街を渡るにはその人間の"資格"がいると。
「エオー、これでいいか?」
「⋯⋯うん!」
そもそも問題は山ほどあるのはそうなんだけど、僕が気になっているのは教養と文明という話だった。
僕達は大したことないとも言ってたけど商人さんが言っていた世界というのはどれくらい差があるのだろうか?
凄く気になる。
もしかしたら手掛かりになることがそこにはあるのかも。
「てか全然水ねぇー」
「グラン、言い過ぎ」
「へーい」
水作りも、ここまで水がないとさすがに出来ないよねー。
「どうにか解決方法があれば良いんだけど」
「あの商人に聞いてみたら良いんじゃねえの?」
「それでは借りを作ることになる」
「まぁ、だよなー」
四十番通り。
既にここではみんなの活気がない。
食べものが最小限しかないからだ。
以前のような地獄はないけれど、やはり元気がない。
「となると僕達がやって行くしかない」
「本当、よう働くな。
新しい頭は」
「そりゃあね。
みんなの元気を作るのが頭の役割だから」
「ようやるわ」
「そう言いながらグランも一緒に引くの手伝ってくれてるじゃん」
とりあえず知識もなくできる事ではあるんだけど、見て学べたものとして、畑は大きい水の道を引いてそこから少しずつ土の道を作ればいけるということだ。
水の大きい道がない以上、作るしかない。
掘って掘ってすっとここまで続く。
「やる事ねぇんだからこれくらいやるさ」
「んー、」
僕はスコップを地面に刺す。
「どうした?」
「なんかもっとあるはずなんだよね」
これでは時間がいくらあっても解決しない。
僕達が終わる頃にはきっと彼らは耐えられずに色々なことを起こしてしまうだろうし。
「とりあえず動かないとって事でやり出したけど」
もう一週間。
けれど、進み具合は子供が大人に勝とうとする程度と言えばいいだろうか。
「まぁな。
でもやらんよりはやった方がいいんじゃねぇの?」
「そうなんだけどねぇ⋯⋯」
ここしばらく、雨も振らない。
貯めれない。
「ねぇグラン」
「ん?どうした?」
「僕達って子供の頃、どうやって水を盗ってたっけ?」
「どうやってって⋯⋯大人の家とか近くにあった泥と家だろ?」
──そう。
そうなんだけど。
僕はスコップで覚えている記憶の道を地面に書いていく。
「なんだなんだ」
見ていたグランと数人の手伝いの大人が僕の周りに集まってくる。
えーっと、確か。
「こうだったよね」
「あー、確かに」
「なんで?」
「なんで?って?」
僕の言葉にみんなの顔が疑問に満ちた。
そう、多分"ここ"なんだ。
「僕達は盗ってこれてたよ?
でも、この大人は今考えると僕達が盗った分⋯⋯無くなるよね?」
「「た、確かに⋯⋯」」
他の大人達が鼻をこする。
「常識としていたけど、人がいないのもおかしな話だと思わない?
だってさ、この水一つで全て変わるんだよ?
施すだけでも女を抱ける、人の手を借りれる、従える事だってできるはずなんだよ」
全員の顔がハッとする。
「じゃあ"なんで"?」
ココだ。間違いない。
ここを突き破れれば、何かが進むはず。
「なんで僕達に取られると思っているのに、放置できるの?
僕だったらまずデン⋯⋯強い人をここに置いて、まず盗られないようにする。
グランでもいい」
「⋯⋯だな。
俺でも同じ事をする」
なんで?なんで⋯⋯。
土を凝視して考える。
なんで、放置できる?
なんで人を置かない?
⋯⋯ん、必要ない?
水が"ありえない程"あるから?
「常識では考えられない量の水がそこにはある?」
「「「「っ、」」」」
「僕達が盗れる量は物凄い少ない量の水。
それくらいなら、盗られても問題ない?
つまり、それくらいならくれてやるよという量の水がある」
「そんな事あるのか?家だぞ?」
「でもそうじゃないとこの問題を解決する方法がない。
僕達だけじゃないんだよ?
あそこには何百人という子供がいて、日替わりでドンドン来る。
それなのに放置できる理由がそれ以外ない。
取ってこれると言っても、限度があると思うんだ。
ここよりも端っこだったあの場所で」
もう少し、もう少し。
でも、ここから先に到達できない。
「あのー」
重い時間が流れたその時。
一人の仲間が手を挙げた。
「どうしたの?」
「例えばっすけど、この土の下って水がないんですか?」
「「「「「それだ!!!!!」」」」」
思わず全員、この世界に落ちて初めて全力で叫んだ気がする。




