西
「言えこの野郎」
「あーあー、そこまでやらなくても⋯⋯」
あー首ぐわんぐわんしないであげて!
「言えって言ってんだ!!
ブチ殺すぞ!!」
次の日。
起きると凄い状態でケイが待っていた。
そこには全く寝ていない様子で。
「⋯⋯すぁ⋯⋯」
「お前まだまだ喋れるよなァ?
苦楽を共にしたと思ってたのによぉ!!」
持ち上げた顔が机の角に⋯⋯ひェッ!
「エオ、まだあっちで待機だ」
「うん」
それから数十分。
僕達は別室でお喋りをしていた。
「まま。
アイツも思うところがあるだろうよ」
「確かケイってルンデルバーンの前は中勢力の頭だったんだよね?」
風の噂で聞いた気がする。
「あぁ。
チェシェ達も別の勢力で使われていた奴らで、そこでたまたま⋯⋯らしい。
ケイは結構有名だったみたいだな。
縛りがあったとはいえ、その時代の奴らがアレだったとなると、結構傷付くんだろうよ」
そう考えたらそうか。
今の面子でそうだったらアレだけど。
"過去の自分の勢力の大半が"ってなると⋯⋯暴れたくもなるか。
「頭」
そこには、説明できない程ぐちゃぐちゃな一人の大人が何を喋っているか理解できないほど壊れていた。
「しゃ、喋れるの?」
「喋るよな?」
「はぃっ!!」
あー⋯⋯⋯⋯。
「君はどこからここで見張れと言われたの?」
「っ⋯⋯ひっ!!」
少し間が空いた。
失望し、見兼ねたケイが顎を掴みあげる。
「聞こえなかったか?
何処かって聞いてんだよ」
「⋯⋯っ、⋯⋯っ、」
その視線は、恐らく仲間達。
僕はその視線を見逃さない。
多分、"言うな"と"耐えられない"と二つが並んでいるんだろう。
「ち」
「「「⋯⋯ち?」」」
「ハァ⋯⋯ハァはぁ、はぁ」
「なんだ、早く言え」
「に⋯⋯し」
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
長い、長い沈黙の後、彼は遺言のように呟いた。
「西だな?後は」
「⋯⋯⋯⋯」
「後は」
「⋯⋯すみません」
「この裏切り者が」
風を裂き、ケイの拳が最後の一撃を与えた。
見る影もなく、散ってゆく。
「悪いね、ケイ嫌なこと」
「いや。
これは俺のケジメだ」
そんな彼の顔は、あまりにも覚悟が決まっている。
少し怖い。
「後は個別で確認する。
時間を取らせるのは悪いからな。
とりあえず分かんのは⋯⋯」
「西だな」
二人の会話を聞いて、昔の言葉を思い出す。
ーーアビスタ、チーシャです
「アビスタ」
「「「「「⋯⋯っ!?」」」」」
控えていた彼らの顔が一発で変わった。
「エオ、知ってるのか?」
「頭?」
「いや、前に一度聞いた事があったんだ」
「アビスタ⋯⋯西で大きい勢力の事なのか?」
「チーシャっていう人が確か」
「頭の名前まで割れてんのか」
「ベルさんか?」
グランの言葉に頷く。
「どういう人間かは分からねぇよな。
⋯⋯そこは俺がやるわ」
「あまりやり過ぎないでね」
「あいよ。
口を割らせる夜でも持ってるやついねぇのかよ」
──居たら怖いよ、ケイ。
それどういうつもりで渡すのさ。
*
「ベルさん、ただいま」
世界は眠りの時間。
けれど、僕にはやる事がある。
両の膝をつき、両手を合わせ。
僕は近くの森に謝罪と感謝、そして⋯⋯祈る。
「どうか⋯⋯て、死んだらどうなるんだろう?」
死に関しての様々な解釈がされた本はあったけれど、共通していることは特別なかった。
「僕は死んだら、きっとその人に相応しい所に行くのではないかと思います」
瞳を閉じて。
僕は、祈る。
──ベルさんが、幸せになれる場所へ。
「自然の皆さんにも祈らねばなりません」
僕は言ってしまった。
人に依存しない。
天を仰ごうと。
天は見ている。
天はいつも側にいるよと。
「僕達人間は、大分長い間、お邪魔をしてしまいましたから、何かお返しが出来ればと思いますが、きっと難しいのでしょう」
──だから、祈ります。
ベルさんや他の方の本に作法のようなものがあったから、それ利用させてもらう。
「ヤクモレスシレ・ワリメグリテ・ヒトミザメ」
「ロクゴウナライ・サレナレキヤ・ケレナライガイ」
祈る。
⋯⋯祈る。
──ただ、祈る。
ーー私達人間こそ、この世界からいなくなれば済むことだ
ーー私達人間が⋯⋯この世界を汚している。
本で読んだこと。
貴族だった人。
そんな偉大な人が残した本にはそう書かれていた。
「けれど、それも、私達が”在る”からそう思うのではないでしょうか」
今、南は変わろうとしています。
そして世界も。
あるべきもの、全てが。
「必ず──変えますから。
あなたがこの世界を好きになれるような⋯⋯そんな場所に」
今日はここで、眠ります。
自然と、あなたの居た痕跡と共に。




