凄い大人の人が来た
「エオー」
「んー?」
今日も僕は、畑作り。
起きてから空を見上げて⋯⋯祈る。
落ちた雷。
アレはもしかしたら、目に見えない何かが手伝ってくれたのかも、と後から考えればそんな結論になった。
グィさんの言葉。
もしかしたらそうなのかも?
空を見上げるという行為が何か意味があると。
⋯⋯ということで僕も何回もやる訳ではないけれど、自然にまつわる事に対してはやろうかなということで実行に移している。
やりますよ?って。
「なんか知らん身なりの奴がお前に話があるんだと」
「グランは見たことないの?」
「あぁ。
俺も見たことねぇんだよ。
なんか俺らとおんなじ感じが全くしねぇっていうか⋯⋯」
「おんなじ?」
「んーなんつーか、服とか持ってる物とかよ」
「もう居るの?」
「あぁ。
とりあえず畑は最近ウルが頑張ってるから、ウルに任せて、頭の仕事を頼むぞ」
そんなグランの言葉に色々な思いが入ってる事に気付く。
少し笑ってしまう。
「ごめんごめん」
今までの頭の立場の人間はよく働かない事が前提の人間。
強くて、自分が凄くあって。
そんな人間がなるものだったから、誰にも示しがつかないって。
グランはあれでも少しずつ理解してくれているはいるけど、全員がそうではないから。
「悪いな」
「ううん」
*
「待たせてごめんなさい」
今僕に足りないのは間違いなく言葉遣いだ。
「はは。
あの時とは別人のようだ」
と、よく見ると⋯⋯この間の商人さんだ。
「アハハ。
なんと言いますか、言葉遣いとか態度がまだまだでして」
「正直に発するところ、私はかなり好きなところではあります」
一礼しながらそう言う商人さん。
そしてその後ろにいる配下の人達も軽く頭を下げてくる。
同じようにしながら返し、お互いに座る。
時間がゆっくりと進む。
商人さんたちの目的が分からないから、こっちから話す訳もいかない。
「南は⋯⋯」
重い時間を、商人さんが突き破る。
「随分変わりましたね」
「はい」
窓の外を見る商人さん。
「全員を満足させられるかは分かりませんが」
「そのような全員が満足できる場所を作り上げられるのならば、この世で最も優れた人間でしょうな」
笑い、僕を見つめる。
「商人、ということは、何か取引がしたいという事でしょうか」
けど、僕達に何かを渡すとか、そんな状態ではないんだけどね。
「どうでしょう」
そう言って少し微笑んでは、切り込んでくる。
「未知だとは思いますが、少し支援をさせてもらえませんか」
「支援⋯⋯ですか?」
「先日のあなたの話を聞かせてもらって、少し思うところが私にもありましてね。
自分は商人ではあるのですが、卓越した資質を持つあなたの言葉には何か言葉では言い切れない何かが私に流れてきました⋯⋯⋯⋯いわゆる心って言うやつです」
あぁ。
届いたんだ。
大人の人に、僕の言葉が。
「はい」
噛み締めながら、僕は返事を返す。
「商人としては非常に賢くないのですが、今後の為にも支援をさせて欲しいという貴方からすれば浅ましいと感じるでしょうが、我々の世界ではよく使われる手法です」
「つまり無い人に与える事で、今後仲良くしていこうという話でしょうか?
その為の?」
「仰る通りです」
商人の世界は面白い。
今後僕もそういう方面としても頭を使わなければならない、ということでもあるか。
「支援の中身を聞いてもいいものですか?」
「あぁー勿論です」
持ってきて頂いた中には見たことのない食物や道具、そして。
「⋯⋯これって味のする粉では?」
「あー塩の事ですか?」
「これ凄く希少な物では?」
「恐らくご存じないとは思いますが、塩は身体に様々な事を良い意味で起こすものですので、絶対に必要です」
「しかし希少である⋯⋯と?」
「簡単に言えば頭⋯⋯または貴族が独占しますから」
少し気落ちして頷く。
僕達は人間だ⋯⋯そんな事を理解させられる。
一通り見せてもらったあと、一つ僕は気になっていた事を訊ねる。
「あの、1つだけ聞いても?」
「ええ、勿論ですとも」
「商人である貴方方は、見たことのないものをお持ちになっていますが、南でこのような物が取れるということなのでしょうか?
それとも何か別の何かが?」
無言で商人さんが笑ったような気がした。
本当はどちらかわからないけど。
「さすが頭ですな。
すぐにその事が出てくるとは」
「あ、本当ですか」
「そう思うのも、エオ殿はまだ世界がどの様になっているのかがハッキリとしていないからでしょうな」
「恥ずかしながら」
「その素直に認めてしまうところも」
クスクスと笑われてしまう。
けれどそこには見下したような意図はどこにもなかった。
「すみません」
「いえいえ、良いのですよ。
あのような達観した物事をまだ大人になったばかりの人間が言えるので、知ったかぶりをしてしまうことも度々ありますから」
「あぁ、そういう事ですか」
「えぇ。
ちなみにエオ殿は"移動"する⋯⋯とはどこまでご存知ですか?」
コレは、凄く重要な情報だ。
「ほとんど何も⋯⋯です」
僕はそのまま前のめりで答え、その後話が終わるのに夜までかかった。




