まずい。凄くまずい気がする。
それから、ある意味戦争という言葉に相応しい毎日が始まる。
畑を増やし。
「あー!
エオ様だ!」
情報を整理し。
「あっ、エオ様」
みんなと情報の共有を──
「⋯⋯っちょっと待って!?」
僕は歩きながら横を走り去っていく子供たちを見て思わず動揺を隠せないでいた。
「なんだ、気付いてなかったのか?」
「本当だよ。
別にここ6ヶ月⋯⋯毎日同じだったろ?」
「こういう所も"らしい"というか」
両隣にいるグランとケイ。
そして後ろで何やら感心している様子のチェシェとクレナさん。
「えっ!何が!?」
訳がわからない。
「エオ様、コレ!」
一人の子供が僕の元へと走ってくる。
「ん?」
「はい!」
女の子の子供だ。
ここ十四番通りは現在、僕達の本拠地に据えたんだ。
穴から降ってくる子供たちを積極的に集めてなんとか働いてもらえるように教えながら、広げていく事を毎日毎日行っている。
そしたら気付けば子供がそこら中を平気で歩けるようにはなったようだ。
⋯⋯それにこの子は女の子だし。
「これは、ちゃちゃじゃないか」
「うんうん!
これはね、新しいちゃちゃなんだ!」
⋯⋯ん?
「新しい?」
「食べて食べて!」
と、既に食べられるようなので、一口齧る。
「っ?」
なんだこれ。
「少し甘いね」
「そうなのっ!
ちゃちゃがね、美味しくなったの!」
ぴょんぴょん跳ねながら笑う姿が、僕には輝いて見えた。
「⋯⋯そっか」
「これ!」
両手に抱えているちゃちゃを、隣にいるケイに渡す。
「い、いっ、いつも"ありがとう"!!」
走り去っていく。
僕からの言葉を待たずに。
「⋯⋯⋯⋯」
遠くの方であの子囲む、女の子集団。
──そうか。
女の子でも"活動出来るような"集団が出来たんだ。
「っ、」
隣を見ると、僕の脇を小突くグラン。
その表情は何処か僕を見て嬉しそうに、そして笑っていた。
「お前が見たかったのは、"コレ"だろ」
今まで忙し過ぎて全く気が付かなかった。
『おーい、今ウチで扱ってるちゃちゃと交換出来る食物を集めてる!』
『これでどうだ?』
『おおっ、ガーデナの足か!
じゃあコレとこれで』
近くにいる二人の座っている人たちの会話が聞こえる。
⋯⋯交換している。
『ねぇ、今日何する!?』
少し裏道の方では、子供たちがヒソヒソと笑いながら遊ぶ事を考えている。
そう。
僕が見たかったのは⋯⋯
ーーハハハハッ!!!
泣いてんぞ!!このガキども、
悲鳴ではなく、笑い声。
「⋯⋯⋯⋯うん」
「まっ、俺としちゃあ、暴れ足りねぇからつまらんがな」
「貴方はいつも暴力に依存し過ぎです」
おっと。
そっちの方もどうにか変えないとだよね。
「リオンさんの時はどういう風に変えていくつもりだっただろう?」
「あぁ⋯⋯あの人達は何も考えてなかったぞ」
「えっ?」
そんな事あるの!?
「だから俺としちゃあ、良いのか悪いのか、エオ⋯⋯アンタが頭になってくれて良かったとも思ってる」
そ、それは⋯⋯
「ご、ごめん、あんまりいいことが言えないかもしれない」
「はは、そればっかりは俺も同感だ」
「しかし、強力でした」
「チェシェの言う通りだね。
あの人間を真似しようと思って出来るモノじゃない」
ーーエオ!男じゃねぇか。
心臓に手を当てて見上げる。
「ふふっ」
僕は笑う。
見てて、リオン、ラオン。
もっと大きく、笑顔にしてみせるから。
*
「今で一番多いのは、暴力による揉め事がかなり高い」
大きい木板に刻むのはケイ。
それを聞いて片肘をつきながらグワングワン頷いていたのはグランだ。
「正直、エオの話は相当効いてる」
この場にいる全員が僕の方を見て喜んでいるように頷いている。
「私達女としても、貴方のような方が頭になってもらって素直に嬉しく感じます」
「い、いえそれほどでも⋯⋯」
「言葉くらい受け取ってください。
貴方はただでさえチェシェ姉様の気持ちすらお断りしているではありませんか」
チェシェクレナの二人からは、僕と寝たいと直球で誘われた。
どうやら結束という意味でも、現状の立場的にも、落ちたくないと、二人の時に聞いた本音を受けて、どうにかならないのかと考えている。
僕としてはそんな事をしなくても落とすつもりはないんだけど、どうやらそこまでの信用はまだ勝ち取れていないらしい。
「い、いやっ、もっと手順を⋯⋯ね?」
二人の視線が強烈っ!
やめて!
僕はちゃんと⋯⋯ほら!
あ、奥の男たちから深い溜息が。
「さっさと抱けよ。
羨ましい」
「本当だぞ、エオ」
「そ、それはおいておこうよっ!」
「「チッ、アイツ本当に男かよ」」
⋯⋯無視だ。
無視無視!!
「とまぁ、それ以外にも⋯⋯お前の考えは明らかに多数の人間が効いてたのは間違いない」
全員が頷いている。
「なんつーの、人間としてというか、芯から燃えるような感じ?」
ウンウンと頷くみんな。
よ、良かった。みんな伝わったんだ。
「いつもなら口を利かないあのナルや他の奴らも黙って帰っていったのが答えだ。
ありゃ明らかに負けたって言ったようなもんだ」
グランはそこで大きく区切った。
「だが──暴れたいやつは大勢いる」
「あぁ、俺も含めてな」
「現在、エオが定めた守って欲しい事の中に戦いが含まれている。
それをどうしようかという事を考える必要がある」
「かつ、暴れられるしっかりとした⋯⋯な」
やっぱり男たちの意見は一緒か。
「そこからだよね」
「じゃあ──集会を始めようぜ」
あぁ、忙しい⋯⋯!
やっぱりやる事が多いっ!




