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EP 10

大団円! ルナキン・ポポロ支店の新アルバイト

「はぁぁぁぁぁ……極楽、極楽……っ」

ポポロ村の裏山に新設された、総檜造りの超特大・天然温泉『ポポロの湯』。

立ち上る白い湯気の中、創造神ルチアナが頭にタオルを乗せ、だらしない声を上げてお湯に溶けていた。

「まさか、あのオタク兵士どもから巻き上げた税金スパチャで、こんな最高級の温泉施設が建つなんてね……。神の威信を売った甲斐があったわ」

「ふふふ……。私の足の裏(踏まれチケット)の犠牲で建ったサウナ室の温度も完璧よ。肌がツヤツヤになるわぁ……」

「私のカニの殻マネーで導入した、最新式のマッサージチェアも最高ですぅ!」

女湯からは、神と魔王とアイドルの、欲望に忠実すぎる歓声が響いてくる。

オタク兵士たちの狂乱の『ふるさと納税』によってポポロ村が手に入れた資金は、ルナミス帝国の国家予算すら揺るがすほどの天文学的な額だった。

俺たちはその資金を使い、ブレイドの作った無人のリゾート施設を『タダ同然』で買い叩き、解体。その資材を流用して、村人たちのための温泉施設と、念願だった大型ファミレス『ルナキン・ポポロ支店』を建設したのだ。

「ご主人様、お背中流しますね」

「ああ、頼むルナ。……クロエ、お湯の中で変なポーション混ぜるなよ。入浴剤代わりにスライムの体液とかやめろよ」

「ち、違いますぅ! これは血行を促進する特製の美肌温泉エキスですぅ!」

男湯(貸し切り状態)でくつろぎながら、俺はルナとクロエとの平和な会話を楽しんでいた。

蟹工船での地獄の労働も、意識高い系コンサルの兵糧攻めも、すべては過去の笑い話だ。

「しかし、平和になったな。オーバーツーリズム問題も解決したし」

オタク兵士たちには、「村の景観保護(推しの聖地を守る)」という名目で、ふるさと納税の資金を使って村の外れに『専用の交流キャンプ場』を整備してやった。

彼らはそこで自主的にゴミ拾いを行い、「推しに恥じない行動を!」と、軍隊以上の規律で勝手に治安を維持してくれている。

まさに、金とオタクの情熱がもたらした完全なる平和スローライフであった。

――一方、その頃。

温泉施設の隣に併設された、大型ファミレス『ルナキン・ポポロ支店』の厨房では。

「いらっしゃいませぇっ! 空いているお席へどうぞぉっ!」

安っぽい制服に身を包み、汗だくになりながら声を張り上げている男がいた。

胸元に光るプラスチックのネームプレートには、『バイトリーダー:ブレイド』と書かれている。

「おい店員! メガ盛りフライドポテトと、ドリンクバーのグラス3つ! 早くしろ!」

客席のオタク兵士たちが、テーブルを叩いて催促する。

「は、はいっ! ただいま! ……くそっ、なぜ私がこんな底辺の『タスク』を……! 私はCFOだぞ! こんなの私の『コアコンピタンス(中核となる強み)』ではないっ……!」

ブレイドが半泣きになりながら、油の跳ねるフライヤーの前で毒づいていた、その時。

「……おい、バイトリーダー」

ゴゴゴゴゴ……。

背後から、エプロン姿のキャルル(村長兼ルナキン店長)が、ダブルトンファーをクルクルと回しながら現れた。

「ひぃぃぃっ! て、店長!」

「お前、お客様を待たせて何ブツブツ言ってんですかぁ? 姉御わたしのシマで、チンタラ仕事してんじゃねェぞ。そのフライヤーの中に頭から突っ込んで、特製唐揚げ(勇者風味)にしてやろうか……?」

キャルルの目が、完全にヤンキーのそれに据わっている。

「ヒッ、ヒィィィィッ!! も、申し訳ありません! 今すぐ、今すぐ『アサップ(ASAP)』でポテトを揚げますぅぅっ! お客様の『カスタマーサクセス』にフルコミットしますぅぅっ!!」

ブレイドは涙と鼻水を撒き散らしながら、マッハの速度でポテトを油に投入した。

かつて数字と効率でルナたちを切り捨てた男は今、時給850Gの労働の尊さと、ヤンキー店長の恐怖を、身をもって『リスキリング(再教育)』されていた。

5億ゴールドの借金を返すための、残り6万6999年と364日のシフトが、彼を待っている。

「……ふふっ。いい働きっぷりですね、元・勇者様」

温泉上がりの浴衣姿で、ルナキンにソフトクリームを買いに来ていたルナとクロエが、ガラス越しに厨房の惨状を眺めて微笑んだ。

もはや彼女たちの中に、過去のトラウマは微塵もない。

「ほら、お前ら。湯冷めするぞ」

俺が二人にフルーツ牛乳を渡す。

「ありがとうございます、ご主人様!」

「ぷはぁっ! 温泉上がりのこれ、最高ですぅ!」

三人でフルーツ牛乳で乾杯し、俺たちはポポロ村の澄んだ夜空を見上げた。

隣のファミレスからは「シナジー効果でドリンクバーの原価率を……ひぶっ!(鈍い打撃音)」というブレイドの悲鳴と、オタクたちの笑い声が聞こえてくる。

「平和だな」

「ええ。最高の……スローライフです!」

神と魔王とアイドルが騒ぐ村長宅へ向け、俺たちは笑い合いながら、のんびりと夜道を歩き出した。


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