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EP 4

初期ヒロインの決別! 10円のもやしの価値

「あなたからの『オファー』に対する、わたくしたちの答え(アンサー)は――」

ルナは、かつて自分たちを理不尽に切り捨てた勇者ブレイドを真っ直ぐに見据え、一切の迷いなく言い放った。

「ノー、です。わたくしたちは、二度とあなたの元へ戻るつもりはありません」

「……なんだと?」

ブレイドの顔から、余裕の笑みがスゥッと消えた。

「クロエちゃんも、それでいいですね?」

「はいっ! あんな数字とカタカナしか見ないクソ上……ゴホン、殿方の元で働くくらいなら、わたくし、一生ダンゴムシの観察をして生きていきますぅ!」

クロエもまた、ブレイドに対して明確な拒絶を突きつけた。

「フッ……ハハハ! 強がりを。君たちは今の自分の『市場価値』を正しくオーソライズできていないようだ」

ブレイドは前髪をかき上げ、必死にコンサルスマイルを保とうとする。

「私のプロジェクトでCFOやCOOになれば、年収は金貨数万枚。ハイソサエティなタワーマンションに住み、毎日三ツ星レストランのフルコースが食べられるのですよ? あのイレギュラーの少年の元で、みすぼらしい生活を続けるのが幸せだとでも?」

その言葉を聞いた瞬間、ルナの瞳に、静かな怒りの炎が宿った。

「……ええ。わたくしたちは、ご主人様との生活が何よりも幸せです」

ルナは一歩前に出て、ブレイドを哀れむような目で見つめた。

「あなたは数字(KPI)しか見ない。お金と効率でしか、人の価値を測れない。……だから、あの日、ご主人様と一緒に食べた『10G(10円)の半額もやし』が、どれほど美味しくて、どれほど温かかったか……あなたには一生理解できないでしょう」

「なっ……はんがく、もやし……?」

「数字や役職ステータスなんて関係ありません。大切な人と、コタツを囲んで笑い合いながら食べる10円のもやし炒めは、あなたの言う三ツ星レストランのフルコースより、何万倍も価値があるんです!」

ルナの凛とした声が、ポポロ村の広場に響き渡った。

それは、金と効率に縛られたコンサル勇者の価値観を、根本から否定する強烈な一撃だった。

「…………ッ!!」

ブレイドの顔が、怒りでどす黒く染まっていく。

自らの絶対的な価値基準である「金と地位」を、たかが10円の野菜くず以下のものだと全否定されたのだ。彼のプライドがズタズタに引き裂かれた音がした。

「……いいだろう。底辺の『アンダーパフォーマー』が、私に逆らったことを後悔させてやる」

ブレイドはギリィッと歯ぎしりをし、魔導タブレットを乱暴に取り出した。

「資本のリソースの違いを教えてあげましょう。我々勇者パーティと、ルナミス帝国の大手商社の『コネクション』を使えば、こんな辺境の村一つ、簡単に干上がらせることができるのですよ……!」

ブレイドが画面を激しくタップし、どこかへ通信を入れる。

その背中は、もはや勇者でもコンサルでもなく、ただの癇癪を起こした小悪党そのものだった。

――そして、ブレイドの宣言は、数日後、現実のものとなった。

「ご主人様! た、大変ですぅっ!」

クロエが、空の買い物カゴを抱えて、村長宅に駆け込んできた。

「どうした、クロエ。またオタクたちが何か買い占めたのか?」

縁側で昼寝をしていた俺が身を起こす。

「違いますぅ! ルナミスマート(スーパー)の棚が……全部空っぽなんです! お肉も、お魚も、パンの耳も……もやしすら、一本も売ってないんですぅっ!」

「……なんだと?」

俺は眉をひそめ、広場へ向かった。

ポポロ村にある唯一の大型スーパー『ルナミスマート・ポポロ支店』。その入り口には、『本日、商品入荷見込みなし』という悲痛な張り紙がされていた。

「ああっ! わたくしの、わたくしのオアシスがぁっ! スーパーの半額シールがないと、アイドルは呼吸ができないんですぅっ!」

リーザが空っぽの棚の前で膝から崩れ落ち、血の涙を流している。

「どういうことだ、店長」

俺がルナミスマートの店長に尋ねると、彼は青ざめた顔で首を振った。

「リクトさん……。それが、ルナミス帝国の流通ギルドから、突然『ポポロ村への商品卸を全面ストップする』と通達が来たんです。問屋も、運送の馬車も、すべて契約を打ち切られてしまって……」

「……ブレイドの野郎か」

大国の資本と流通網を握る商社に圧力をかけ、ポポロ村という一つの村だけを物流ネットワークから完全に切り離す。

農地はオタクたちの足で踏み荒らされ、外部からの食料供給はストップ。

これこそが、資本主義社会における最も凶悪で、暴力的な兵糧攻め(経済制裁)。

「キャルルちゃん! このままだと、村のみんなが餓死してしまいますぅ……!」

「……あのクソ金髪。絶対に、絶対にダイズラ豆の肥料にしてやります……!」

キャルルがトンファーを構えて殺気を放つが、物流を止められている以上、誰か一人を殴って解決する問題ではない。

「……物流が絶たれたなら、自分たちで新しい『流通システム』を作るしかないな」

俺は、空っぽのスーパーの棚を見つめながら、空中に【世界編集】のウィンドウを展開した。

ブレイドは資本の力で村を干上がらせたつもりだろう。

だが、奴は分かっていない。

この村には、一度財布の紐が緩めば国家予算すら軽く凌駕する、とんでもない『強力なスポンサー(限界オタク兵士)』たちが数万人単位で存在していることを。

「現代日本が誇る、最強の税金ハック(錬金術)を教えてやる」

俺の指が、キーボードの上で反撃のコードを叩き出し始めた。

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