表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/56

EP 7

ファンクラブ第1号の涙と、オタク同盟結成

「うわああああんっ! ツナマヨじゃ嫌だ オカカしかねぇ〜♪ って、わかる、わかるわ月人きゅんっ!」

中庭の上空。次元を裂くほどのプレッシャーを放っていた魔王ラスティアは、今や空中で両手で顔を覆い、ボロボロと涙を流すただの『限界オタク』と化していた。

彼女が連れてきたS級魔獣たち(魔炎竜やケルベロス)も、「えっ? 魔王様、世界滅ぼさないんスか?」「俺たちどうすればいいの?」と困惑したように顔を見合わせている。

「おいルチアナ。お前の飲み友達、完全に戦意喪失してるぞ」

「だって月人きゅんの歌声は魂を浄化するからね! あー、尊い……」

芋ジャージ姿のルチアナが、コタツの中からペンライト(赤)を振りながら満足げに頷く。

すると、スピーカーの音源に気づいたラスティアが、ドレスを翻して猛スピードで地上へと降り立った。

ズサァァァァッ!!!

地面に膝をつき、錬金スピーカーを愛おしそうに撫で回す魔王。

「ああ……なんてクリアな音質……! まるで月人きゅんが耳元で歌ってくれているよう……っ! ルチアナ、あんたなんでこんな神アイテム持ってるのよ!?」

「ふふん。私の新しい職場コタツの主、リクト君が作ってくれたのよ。ちなみに映像付きもあるわよ?」

「えっ!? な、なんですって!?」

ラスティアが血走った目で俺を振り向いた。

「バ、バグの少年! 貴様、月人きゅんの映像を出せるのか!? 出せ! 今すぐ出さなければ次元ごと――」

「クロエ、あの『失敗作の水晶』あるか?」

「はいっ! 対象をリアルに映し出しすぎて、見た者が情報過多で発狂する『失敗作・精神破壊プロジェクター』ですね!」

「よし。俺がちょっと【編集】する」

俺は魔王の脅しを完全にスルーし、クロエから受け取った怪しい水晶に【世界編集】のカーソルを合わせた。

カタカタカタ……ターンッ!

ーーー

【対象】失敗作(精神破壊プロジェクター)

【出力情報】発狂映像 → 『朝倉月人 福岡ドームライブ(アリーナ最前列視点・1/1スケール・完全立体ホログラム)』

【付与効果】見た者の「敵意」を完全に消滅させる

ーーー

「ほらよ。お前らが求めてる『力(映像)』だ」

俺が水晶を中庭の中央に置いた瞬間。

カッ!と光が弾け、何もない空間に『超絶リアルなイケメンアイドルの立体映像』が浮かび上がった。

汗の粒、マイクを通す息遣い、そして客席(こちら側)へ向けた極上のファンサービス・ウィンクまで、完全に再現されている。

「「――――ッ!!!」」

魔王ラスティアと、創造神ルチアナが、同時に息を呑んだ。

そして。

「キャアアアアアアアアアアアアッ!!! 月人きゅぅぅぅぅぅぅんっ!!!」

「こっち向いてぇぇぇっ! ルチアナだよぉぉぉぉっ!!」

世界を統べる神と、世界を滅ぼす魔王が、仲良く肩を並べて黄色い悲鳴を上げ始めた。

ラスティアに至っては、どこから取り出したのか『月人 命』と書かれた特製うちわを両手で振り回し、本気のオタ芸を打っている。

「……なぁ、クロエ」

「はい、ご主人様……」

「今日の夕飯、あいつらの分も増やしといてくれ。しばらく帰る気ないだろ、あれ」

「分かりましたぁ……。なんだか、神様や魔王様って、案外ちょろ……いえ、親しみやすいのですね」

ルナも「ご主人様の魔法は、魔王さえも笑顔にしてしまうのですね!」と謎の感動をしている。いや、俺じゃなくてアイドルの力なんだけど。

――数時間後。

ライブ映像(全3時間)を完走し、喉を枯らしたラスティアは、燃え尽きたように中庭の芝生に大の字になっていた。

彼女が連れてきたS級魔獣たちは、すっかり大人しくなり、ガオン(メカライオン)の指導のもと、屋敷の庭の草むしりを手伝わされている。

「……最高。最高のライブだったわ」

ラスティアが虚ろな目で宙を見つめながら呟く。

「だろ? で、魔王さんよ。まだ俺を次元ごと斬り伏せる気はあるか?」

俺が上から見下ろすと、ラスティアは勢いよく立ち上がり、俺の両手をガシリと握りしめた。

「リクト様!!」

「……様?」

「この屋敷、地球のアイドルグッズが錬成し放題で、しかもこんな超高画質のホログラムまで見放題……! 決めました! 今日からここを、魔皇国認定『朝倉月人ファンクラブ・辺境第一支部』と定めます!」

「いや、俺の家なんだが」

「細かいことは気にしない! ルチアナ、ちょっとそっち詰めて! 私もコタツ入るから!」

「えー、ラスティアでかいから狭いわよー。ガオン、あんた犬小屋行きなさい」

『俺はライオンだ! それに法律上、先住権は俺にある!』

魔王がドレスのままコタツに潜り込み、芋ジャージの神様と、太宰治を読むライオンと、陣地みかんのポジション争いを始めた。

こうして、俺の自由気ままなスローライフに、また一つ、とんでもなく厄介で、とんでもなくチョロい居候が増えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ