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EP 6

魔王ラスティア急襲!次元を裂く刃と……神曲

「ぷはぁーっ! やっぱ労働(世界管理)から逃げて、昼間からコタツで飲むビールは最高ねぇ〜!」

俺の屋敷のリビング。

創造神ルチアナは完全にダメ人間(神)と化していた。芋ジャージ姿のままコタツで寝転がり、クロエが錬金したポテトチップスをつまみながら、備え付けの巨大モニターで地球のアイドルのライブ映像を垂れ流している。

『ルチアナ様。ポテトチップスのコンソメパンチ、もう一袋開けますか?』

「気が利くじゃないガオン。あんたも一枚食べる?」

『……いただきます。サクッ。なるほど、これが地球のジャンクフード。悪くない』

最強の巨大ロボ(ライオン形態)と創造神が、仲良くコタツで堕落している。

ルナとクロエは呆れ果てて、キッチンで夕飯の仕込みを始めていた。

「おいルチアナ。神様がそんなんでいいのかよ」

「いいのいいの! 今日は月曜日よ? 月曜日から本気出す奴なんて三流よ! あーあ、会社(天界)に隕石落ちないかしら〜」

神様が月曜病(サザエさん症候群の末期)を発症している。

俺がため息をついた、まさにその瞬間だった。

――バキィィィィィィィンッ!!!

空が、文字通り「ガラスのように」砕け散った。

「な、なんだ!?」

「ご主人様! 上空の空間が引き裂かれ、そこから……信じられない数のS級魔獣がッ!」

キッチンから飛び出してきたルナが、毛を逆立てて叫ぶ。

割れた空の向こうから、オリハルコンゴーレム、魔炎竜、そしてケルベロスの群れが次々と中庭に降り立ち、屋敷を包囲していく。

そして、その魔獣たちの中心。

空間を切り裂く赤黒い『ブラックホール』を背負いながら、一人の妖艶な女性がゆっくりと降下してきた。

漆黒のドレスに身を包み、手には禍々しい瘴気を放つ大剣(魔王剣)。

その威圧感は、あの勇者アレスなど比べ物にならない。ルチアナと同等か、それ以上の「純粋な暴力」の化身。

『フハハハハッ! 見つけたぞ、世界のイレギュラー(バグ)よ!』

魔界の女帝、魔王ラスティアが、傲慢な笑みを浮かべて俺たちを見下ろした。

『天界のルチアナの気配が消えた今、この世界を護るシステムは不在! この魔王ラスティアが、貴様を次元ごと斬り伏せ、このくだらない三竦みの世界を終わらせてやろう!』

圧倒的な死の宣告。

ルナとクロエが息を呑み、戦闘態勢に入る。

俺も【世界編集】を展開し、この魔王のステータスをどう料理してやろうかとカーソルを合わせた。

だが、ラスティアの長広舌を聞いていたコタツの中のルチアナが、イライラしたように頭を掻きむしった。

「ああもうっ! うるっさいわねラスティアの奴! せっかくの休日に仕事(戦闘)持ち込まないでよ! テンション下がるわぁ……よし、現実逃避しよ」

ルチアナはコタツから出ることなく、手元の魔導リモコン(クロエ作)のボタンをポチッと押した。

途端に、屋敷の周囲に設置してある超高音質の錬金スピーカーから、ルチアナが愛聴している『あの曲』が大音量で流れ始めた。

『ガンガンガンガン! アタマガガン!♪』

『目覚まし時計の 「キーン」 が辛い♪』

「は?」

上空で魔王剣を振りかぶっていたラスティアの動きが、ピタッと止まった。

『月曜日だ 朝からバックレしたい〜♪』

『布団の宇宙から 帰還 したくない♪』

絶望的な魔王のオーラと、S級魔獣たちの咆哮。

そこに重なる、果てしなくスケールの小さい「社畜の悲哀」を歌ったポップなメロディ。

『さあ、塵となれイレギュラ……ッ! ……ん? 待て。この曲、この声は……!?』

ラスティアの瞳が限界まで見開かれる。

振り下ろされるはずだった魔王剣が、プルプルと震え始めた。

『満員列車は嫌だ〜 寿司詰めギュー詰め♪』

『汗と香水の スメルハザード♪』

「ルチアナ、お前何流してんだよ。緊迫感ゼロだぞ」

「いいじゃない! 月曜の朝は、月人きゅんの『月曜日の社畜』を聴かないとやってられないのよ!」

ルチアナがビールを片手に、コタツの中でペンライトを振り始めた。

『電車が 止まってくれれば〜 (あぁ、神様!)♪』

『会社に 隕石落ちてくれ〜 (せめて台風!)♪』

「あ、あ、ああ……っ!」

スピーカーから流れる甘く切ない(?)歌声を聴いた瞬間。

魔王ラスティアの瞳から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

「嘘……月人きゅんの新曲(※ルチアナが適当に作って提供した曲)……!? こんな辺境の地で、月人きゅんの美声が聴けるなんて……っ!」

ラスティアは魔王剣を「カランッ」と地面に放り投げた。

そして、両手で顔を覆い、感極まったように空中で身悶えし始めた。

「せめてコンビニで朝飯〜 癒やしを求めて♪」

「誰だよ エビマヨ買い占めた奴ぅ〜 (許せん!)♪」

「うわああああんっ! わかる、わかるわ月人きゅん! 私も朝、魔王城の売店で限定の血抜きプリン買い占められてた時、同じ気持ちだったのよぉぉぉっ!!」

世界を滅ぼすはずの魔王が。

空中に浮かんだまま、エビマヨおにぎりを買えなかったアイドルの悲劇に共感して、オイオイと泣き崩れていた。

「……なぁ、ルチアナ」

「んー?」

「あいつ、お前の知り合いか? なんか……すごく、残念な感じなんだが」

「あー、ウン。私の飲み友達で、月人きゅんファンクラブの会員番号第1号ね。ちなみに私は2号よ」

俺は、そっと【世界編集】のウィンドウを閉じた。

どうやらこの世界、神様も魔王も、バグを修正するより先に「自分の頭のバグ」を直した方がいいらしい。

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