第六十五話:「決意」
金色の鎧が去った後、俺と有海は駆けつけた警察や救急隊に救助された。
現場に来た警察や救急隊たちは現場の惨状を見て絶句していた。
何故なら、今までそこに存在していた道路や家などが、円形状にきれいさっぱり消えていたのだから……。
その後、俺達は仙台常盤警察所で事情徴収を受けた。
警察官たちは、金色の鎧について事細かく聞いてきた。
やつの容姿、やつの発言、やつの見せた能力……。
俺は、面倒臭い気持ちになりながらも、見た物全てを警察に教えてやった。
どうせ警察たちは金色の鎧について知っている。
先ほど襲ってきた金色の鎧も我が主の差し金だろう。
つまり、新人類の味方の警察が金色の鎧についても全て知っていることが予想できた。
だから、ここで嘘を言って取り繕っても無意味だと俺は思った。
むしろ、本当のことを言った時の警察官の表情を見て、彼らが新人類の味方だと再確認しようと思ったのだ。
しかし、俺が本当のことを言っても、警察官は眉間にしわを寄せるだけだった。
なぜだ?
なぜこいつらは金色の鎧について知らないふりをするんだ……?
それか、末端の警察官は金色の鎧について知らないだけなのだろうか……?
警察署での取り調べの後、俺達は深々と降り積もる雪の中を歩く。
警官が家へ帰る車を用意してくれると言っていたが、俺は低調に断った。
何故なら、彼らは新人類の味方で、人間達の味方ではないからだ。
彼らが手配した車に乗れば、敵の罠にハマり最悪有海や海人を失ってしまう。
それだけは避けなければならなかった。
彼らの罠にハマれば、もしかしたらまたあの金色の鎧に見つかってしまうかもしれない。
先ほど金色の鎧は俺達を見逃してくれたが、今度こそは俺達に危害を加えてくるかもしれない……。
マスクを無事な左手で触りしっかりと顔が隠れていることを確認しながら、俺は常盤警察所から離れた道でタクシーを拾う。
そして、俺と有海は無人で走行するタクシーの後部座席に無言で座った。
タクシーが走り始めて暫くして、有海は俺を潤んだ目で見つめてきた。
しかし、彼女は俺の横で不自然に顔を動かすが、すぐに止める。
俺は有海を横目で見やりながらも、窓の雪を眺める。
マスク越しで分かりにくいが、俺は有海が何かを聞きたいのだろうと察していたが、あえてそれを無視していた。
有海が俺に聞きたいことは大体分かる。
先ほど、金色の鎧が俺に忠告していたことだろう。
そう、『俺が実行しようとしていること』だ。
それは、俺が金色の鎧に会う前に決意したことだ。
金色の鎧に会う前に、有海に少し打ち明けていたから、彼女も内容が気になっているのだろう。
だが、今はそれを聞かないでくれ。
金色の鎧の意図、金色の鎧を知らないふりをした警察の意図が分からないから、その決意が今揺らいでいるんだ。
まずわからないのは、金色の鎧の意図だ。
俺達を殺す絶好の機会だったのに、俺達を見逃した。
そして、俺に『今考えていることを実行するな』と忠告してきた。
あいつは何を思ってあんな事を忠告してきたのだろうか……。
俺は降り積もる雪を眺めながら考える。
あいつは新人類だ。あの異形な体。あの異常な能力。
それらから考えられることはなんだ……。
俺は考える。
しかし、考えても考えてもある着地点に考えが行きついてしまう。
そうだ。そうだろう……。あいつの意図は、これだろう。
それは……あいつは俺を脅し、俺の決意を揺らがせることで、他の新人類を守ろうとしたのだろう。
俺がこれから実行しようと決意していたことは、新人類に害がある内容だ。
それを実行し、成功すれば新人類を窮地に陥れ、良ければ殲滅することが可能なはずだ。
だから、金色の鎧は俺を脅し、警告を与えることで俺の動きを封じようとしたのだろう。
後、警察の意図はこれだろう。
俺に対して金色の鎧の存在を知らないふりすることで、俺を混乱させて、行動を遅くしようとしたのだろう。
新人類達は、人間達の心が読める。
それは、俺達が敵のアジトへ攻め入った時に知った。
桜井響子が言っていただろう。
『我が主の至高な改造によって、人間程度の思考なら簡単に読めるようになりました』と……。
金色の鎧が俺達に会った時に俺の考えを読み、それを新人類全体で情報共有したから警察官たちもあんな行動をとったのだろう……。
俺は、この考えに至ると身震いをする。
新人類達は、どれだけ情報共有のスピードが速いのかと。
AIが手に入れたビックデータをクラウドに保存してしまえば、AIもとい新人類はその情報をすぐに引き出すことができる。つまり、新人類1人に何かが伝われば、他の新人類全員がその情報を共有することができる。
河合エレクトロニクスで作った6号君達も、個体同士の情報共有は同じような原理で行うことができる。
6号君達の情報共有は、設定された個体としかできないように制限をかけていたが、その制限を撤廃してしまえば全個体と情報共有ができるようになる。
新人類達は、その制限を撤廃してしまったのだろうか……。
つまり、俺の考えが新人類に読まれてしまえば、俺の動きが全て新人類達に筒抜けになってしまうことを意味する。
それは、俺が新人類と出会う確率が高まる程、つまり新人類が増えれば増える程、時が経てば経つほどリスクが高まるだろう。
そのリスクが高まれば、俺は簡単に行動することができなくなる。
俺が行動できなくなってしまえば、新人類が人間に対して戦争を起こし、我が主の宣言通り有海と海人が殺されてしまう……。
つまり、新人類がまだ少ない今、俺の行動が他の新人類に伝わりにくい今が俺の行動するべきタイミングのはずだ。
俺が先ほど金色の鎧と出会った時は、やり遂げたい結果を考えていただけで、その過程をまだ考えていなかった。
つまり、新人類達も俺の行動をまだ読めていないはずだ!
行動するなら今しかない。
その行動によって、有海と海人が救われるのならば……。やるしかない!
俺は窓から目を離すと、有海を見つめた。
俺の変わった雰囲気に彼女は戸惑いながらも、俺を見つめなおす。
「……覚悟を決めたのね?」
有海は俺に対して呟く。
俺はその問いにこくりと頷くと、彼女へ宣言した。
「……やるぞ。政府に対して、革命を起こす」
やっとここまでかけました。
まさか、この決意だけでこれだけの文章になるとは……。




