↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2045年問題   作者: 村田こうへい
第六章
75/81

第六十話:「新人類③」

60話に到達です。

ここまで読んでいただいている方、ありがとうございます!

 強化鎧で武装した竹内さんに案内されながら、俺達は部屋の中に踏み入る。

昼なのにカーテンで閉ざされた薄暗い部屋の中には、沢山の実験器具と一つのベッドがあり、ベッドを囲むように武装した若井さんと小久保さん、白衣を着た医師らしき女性がベッドに寝る人を触っている。


 どうやら触診をしているようだ。

ベッドの横には、ひしゃげた点滴台が無残に転がっていた。


 病室の惨状に俺はしかめ面をしていると、ベッドの横に立っていた強化鎧姿の男性が俺を見据えた。若井さんだ。


「……おお! 良くきてくださいました!!」


 彼は、強化鎧のヘルメットをきらきらさせながら俺の手を握ってぶんぶんと振り回す。


「……どうしたんですか? なんだかテンションが高いですね……?」


 驚いた俺は若井さんを見つめる。

ヘルメット越しに見える顔は、なんだか笑顔に見えた。


「あいえ、いろいろと想定どおりで、テンションが上がってしまい……」


 若井さんは、気恥ずかしそうに頭を掻く。

しかし、すぐにヘルメットをかぶっていることに気がついたのか、手を止めた。


「え、想定どおりというのは、つまり……」


「ええ、私達が思っていた通り、彼女は普通の人間ではありません」


 冷静な声色に変わった若井さんは、俺を見据えてそう宣言した。

 俺はそれを聞いて納得した。

若井さんが興奮した声色なのは、捉えた人間が普通ではなかったから、罪悪感に苛まれなかったからなのだろうと。




 竹内さんに「どうぞ」と促されるまま、俺達はベッドに寝そべる人間の下へと向かう。

そこには、目を閉じ安らかな顔をしている20代らしき女性が寝そべっていた。

クークーと可愛らしい寝息を立てていることから、麻酔で眠らされているのだろう。


 彼女は綺麗な顔立ちをしており、寝ているにも関わらず、彼女の肩の下までかかりそうな長い黒髪は、乱れず綺麗に整えられていた。


「昭人さん、これを見てください」


 竹内さんは俺にそう声をかけた後、彼女の体を隠していた布団をはがす。

彼女の肌色と体のふくらみがあらわになり、俺は反射で顔を背ける。


「ちょっと……。竹内さん」


「昭人さん、彼女はちゃんと下着を着ていますので大丈夫ですよ。それよりこれを見てください」


 あっけらかんとした彼の言葉に促されるように、俺は彼女の体を見る。


 ――――は?


 目の前の異質な光景に俺は目を見開く。

彼女の胸部――谷間には、長さ20センチほどの手術痕があった。

それは、彼女の下着でも隠しきることができないほどはっきりした物だった。

 しかも、その痕は痛々しく充血している。

 それを凝視すると、不自然に谷間が盛り上がっているように見えた。

胸に3つの山が出来ているような状況だ。

 この盛り上がりが手術痕を刺激し、充血をもたらしているのだろう。


「え……? この傷は何ですか? というか、何でここがこんなに盛り上がっているんですか?」


 俺は気恥ずかしくなりながらも、横の竹内さんに問う。


「はい。どうやら、何かが埋め込まれているようでして……」


 彼はたどたどしい説明をしながら俺の後ろを見る。

すると、俺の後ろから凛々しいながらも興奮を隠せていない女性の声が響いた。


「彼女をレントゲンで撮影したところ、胸部に異物が埋め込まれています。画像を見る限り……何かの機械のようです。その機械から配線が心臓や脳へ伸びているようで、もしかしたらそれが心臓に何か悪さをしているようです……!」


 喜々と語る彼女に俺は違和感を覚える。

彼女は、先ほど寝そべる女性を触診していた白衣姿の女性だ。

 年齢は30歳ほどだろうか。ボーイッシュな黒い短髪は、白い帽子に隠されてよく見えない。

顔にところどころできているニキビが、彼女の優しそうな雰囲気を盛り上げてくれていた。


 しかし、こんな差し迫った状況で、なぜ彼女はこんなうきうきと話すのだろうか……?

彼女の状況に俺は訝しげな気分となっていると、隣の竹内さんから助言が入る。


「……ああ、彼女は生物オタクでして、こういう話になるとただの変人に化けるのであまり気になさらないでください」


「は? 変人ですって? 竹内君、変人の貴方に言われたくはないわよ!?」


すぐに彼女から反撃が飛んだ。

 




「で……? 機械が心臓に悪さをしている?」


 竹内さんへの反撃が終わった後、俺は白衣を着た彼女に問うと、彼女の頬が赤面しつつ俺に言葉を畳み掛ける。


「ええ。彼女の心拍数を計っているのですが、成人の2倍の早さで脈動していたんです。今は薬を投与して成人男性と同じぐらいまでには心拍数が下げているのですが、それでもこれは寝ている女性の心拍数と比べたらかなり早い部類に入ります!」


「は、はあ……。心臓に何か異常があるのですかね……?」


 この場に似合わない彼女のテンションに俺は困惑しながらも、ボソッとそんなことを呟くと、有海の横に立っている若井さんが口を開く。


「……実は彼女、ここに運び入れた後、かなり暴れたんですよ。強化鎧を装備していなかったら、誰も彼女の暴走を止められなかったと思います。彼女の攻撃は、それほど早く、重い攻撃でした……。もし彼女が新人類だとしたら、その機械が心臓や他の臓器の強化を引き起こしている気がするんです」


「強化ですか……」


 俺は、そう呟きつつ、彼女の横にある心拍計を見る。

数値は160前後。確かに、これは成人としてはかなり早い部類の心拍数だ。


「ここでは、それ以上の調査はできませんでした。後は、河合エレクトロニクスで彼女の機械について調べてほしいのですが……」


「なるほど……」


 白衣を着た彼女の申し出に、俺は唸る。

機械は人体に埋め込まれている。簡単には調査はできない。

調査をするならば、人体を傷つけないように機械を取り外す必要があるため、大学病院の外科医の助力が必要だろう。


「調査をするならば、機械を一度取り外す必要があります。手術か何かで取り外してほしいのですが……」


 俺が彼女へ打診をしている時、俺の視界の隅で何かが動く。

俺はハッとすると、ベッドで寝そべる彼女を見る。


 うーん……とうめき声をあげながら、彼女の目が開く。

それに合わせて、彼女の心拍数が200前後に跳ね上がった。


「おい! 梅沢教授!! 麻酔はどうなっている!?」


 若井さんから、珍しく怒声が白衣を着た彼女――梅沢教授へ飛ぶ。

それを聞いた梅沢教授は、首をこてっと倒すと、口を開く。


「へへ、暴れる彼女を見たくて、麻酔を切っちゃいました」


「は? 何をやっているんだお前は?」


 若井さんの怒声が病室に響き渡る。

そんな中、ベッドに横たわる彼女は頭を上げると、辺りをきょろきょろと見まわし始めた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。