↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2045年問題   作者: 村田こうへい
第六章
74/81

第五十九話:「新人類②」

 その後、俺は佐藤探偵事務所の人たちと詳細を詰めて話し合った。

途中から他件が片付いた佐藤所長も相席した。


 打ち合わせによって決まった内容はこうだ。

調査および新人類化が疑われる人を捕らえるのは佐藤探偵事務所。

身体的な調査を行うのは、佐藤探偵事務所の息がかかった仙台の医療機関。

医療機関での調査の結果、怪しい箇所を見つけた後に、技術的な考察と検査を行うのが河合エレクトロ二クスの研究棟。


 つまり、医療機関での調査を行い、異常が発見されなければ俺達の出番はない。

不謹慎ながらもその事が俺の気持ちを落ち着かせた。


「「今日はありがとうございました」」


 どこか硬い笑顔をさせながら、俺は一礼をする佐藤所長と若井さんに見送られる。


「いえいえ、こちらこそありがとうございました」


 突きつけられた事実に俺は気落ちしながらも、何とか気丈に振る舞い言葉を返す。


「はあ…………」


 俺は佐藤探偵事務所に止めてあった自分の車に乗り、アクセルをふかして発進させる。

AIのアシストを受けながら、俺は車を運転する。


 有海にせがまれて、この一年で俺は車を買い換えた。

自動運転モードに設定すれば、AIが自動運転してくれる、日本で一般的な種類の車だ。

しかし、俺はまだ自動運転を信用していないので、自分で車を運転していた。


 目の前を一定速度で走る車に合わせ、俺も車を進める。

先ほどまで聞いていたことがショックだったからか、なんだか景色が白黒に見える。


 もう少し早く、俺が革新党の工場で起きていることに気づいていれば、もっと良い対策ができたのではないだろうか……と思いつめてしまう。

 無論、佐藤探偵事務所はできる限り対処をしてくれていたのだが、彼らが革新党が斡旋する工場の噂について情報を仕入れた時点で俺に教えてくれていれば、河合エレクトロニクスの技術力で状況をもっと良い方向へ変化させられたかも知らない。


 そう思うと、俺は佐藤探偵事務所へ怒りを感じてしまった。

 しかし、その後すぐに俺は感じた怒りに後悔した。

佐藤探偵事務所も、これまで最善を尽くしてがんばっていたのだろうと思い返したからだ。

今回の件に関しても、佐藤探偵事務所は調査依頼に関係のない部外者を極力巻き込みたくないと考えていたのだろう。

だから、俺が佐藤探偵事務所へ相談に行くまで、彼らは状況を説明してくれなかったのだろう……。


 しかし、そう心を落ち着かせようとしても、また怒りがふつふつと湧き出てしまう。


 俺の頭の中では、佐藤探偵事務所への怒りと、怒りを感じる自分に対しての自己嫌悪が、ループし続けた。


「…………おっと!」


 目の前の赤信号に気がつくのが送れ、急ブレーキを踏む。

後続の車は、赤信号を検知していたのか俺の車の後ろでゆっくりと減速をしていた。


「はあ…………。状況を有海に相談しなくちゃな」


 真っ赤な赤信号を見ながら、俺はぼそっと呟いた。








 一週間後、俺は佐藤探偵事務所に呼び出された。

呼び出された場所は、仙台の大学病院だった。


 俺はそれを聞き、状況を理解した。

今日、佐藤探偵事務所の所員が拉致被害者を襲撃し、病院へ運び入れるのだろう。


「はあ……。私が開発を指示した武具で、人を襲うなんて……」


 大学病院の受付のベンチで座る有海は、俺の横でぼそっと呟く。

一週間前の佐藤探偵事務所での一件の後、俺は有海に状況を説明した。

それ以上に現状を把握する方法がないということを説明すると、有海は納得したように見えたのだが、やはりそれが現実となると思うことがあるようだ。


 それはしょうがないと思う。

あの武具は元々敵のアジトを襲撃するために作られたものだ。

人間を傷づけるために作られたものではない。


 俺達はだんまりとしながらベンチに座り続けていると、病院内に放送が鳴り響く。


『小林昭人様、小林有海様。お連れ様がお呼びです。来客用の受付へお願いいたします』


「いくよ。有海」


「……うん」


 俺達は、口数が少ない中、指示された受付へと向かった。





「どうも」


 俺達は、大学病院の受付にいた6号君にある部屋の前まで案内される。

部屋の前には、強化鎧(パワースーツ)を着た男性がいた。

声色を聞く限り、竹内さんだろう。

普段より、雰囲気が落ち着いているような気がする。


 ここは、大学病院の10階、病室がある階層のもっと上だ。

この部屋に向かうまでに部屋の表札を確認したが、医師の個室や院長といった重役の部屋が並んでいるようだ。


「昭人さん、有海さん。この部屋の中に例の人がいます。……彼女を見る前に、一つ忠告があります」


 俺と有海を順繰りにみつめながら、竹内さんが話す。


「彼を見ても、驚いて取り乱したりしないでくださいね?」


 彼は、若干気落ちした雰囲気で俺を諭す。

俺はそれを聞くと、この雰囲気に若干の違和感を持つ。

もし普通の人を麻酔銃で捕まえただけなら、普通の人が寝ているだけだろうから、そんな驚くこともないだろう。

 ただ、彼は俺に「驚くな」と忠告してきた。

これが意味することとは……。


 この部屋の中にいる人は、「今普通の状況ではない」と言うことだろう。


 「……あまり考えたくありませんでしたが、了解です」


 俺が竹内さんに対して応えると、彼は有海へ向き直る。


「有海さんも……覚悟してくださいね」


「……ええ」


 有海は、強化鎧(パワースーツ)で武装した竹内さんをみつめ、苦笑いをした。


「じゃあ、こちらへ」


 有海の顔を見て顔をしかめた竹内さんは、部屋に向き直り、横にある機械に指を置く。

指紋認証用の機械だろう。


 その機械から「ピピッ」と音が聞こえた後、彼がドアを開け放つ。


「足元、物が散乱していますので気をつけてください。ではこちらへ」


 俺は薄暗い部屋に散乱する注射器などに顔をしかめながら、竹内さんに続き、部屋へと踏み入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。