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2045年問題   作者: 村田こうへい
第五章 暗躍編
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第四十八話:「妨害工作④」

『報道バラエティ カシャット!! 始まってまいります! 今回は生放送で進めてまいります!』


 目の前のテレビモニターに映し出された女性アナウンサーが、ニコニコ顔で宣言した。


 そのモニターを俺と有海、若井さん、渋い顔をした男性が見つめる。

この男性は、桜井さんの夫、「桜井直人」だ。

彼も桜井響子が失踪してから、彼女を見つけようと必死になって探していたようだ。

しかし、見つけたと思えばテレビの中。彼女と連絡を取ろうとしても全く取れなかったらしい。

そんな中、今回の番組の放映を聞きつけ、テレビ局に問い合わせをし、この場に来たというわけだ。


 彼には、桜井響子が新人類(サイボーグ)化したという話はしていない。

それは、彼がまだ敵側なのかどうかわからないからだ。

佐藤探偵事務所の方々と相談をして、もう少し彼の素性を確認し、問題ないと断定してから新人類(サイボーグ)について伝えようということで決めていた。


 俺達はテレビ局の会議室の中にいる。

この部屋の中で番組の進行具合を見守り、台本通り桜井さんへドッキリを仕掛ける。

つまり、俺達は「仕掛け人」だ。

 直人さんも、今回仕掛け人として来てもらっていた。

彼には的確な登場の場がある。その時にスタジオに突撃することになっている。


 この番組「カシャット!!」は、話題のニュースを面白おかしく視聴者へ伝えることを目的としている。

番組内でドッキリを仕掛けることは、報道番組としてちょっとやりすぎのような気もするが、番組の方向性としては問題ないらしい。


 アナウンサー達が冒頭の語りを終えると、女性アナウンサーが声を張り上げて、桜井さんの登場を促した。


『それでは、ゲストをお呼びしましょう。

新党結成で今や時の人!

魅力的な公約で民衆を虜にする革新党党首、桜井さんです!』


 紹介が終わると、スタジオ横のカーテンが開き、中から桜井さんが出てきた。


「あ……」


 俺は声を上げる。

スタッフに紛れ、桜井さんと一緒にもう一人女性が出てきたからだ。


「斎藤静香か……」


 俺は彼女を見て、瞬時に把握した。

あの時逃げられた新人類(サイボーグ)の一人、斎藤静香がそこにいた。


 桜井さんは案内されるがままスタジオの椅子に座る。

その後ろに、「カシャット!!」のロゴがプリントされた服を着る斎藤さんが立つ。

どうやら、裏方スタッフの一人として紛れるようだ。


「斎藤さん……。斎藤さんは、桜井さんの護衛なんですかね?」


 若井さんは、画面を見ながらぼそりと呟く。


「そうでしょうね……。でも、うまくいけば2人とも民衆に見せつけられますね」


 俺も呟く。桜井さんしか来ないと思っていたところに、まさかの2人登場ってわけだ。

これは俺たちにとっても都合がよかった。



 その後、女性アナウンサーが桜井さんに質問を投げかける。

質問の内容は、政策に関しての内容や、日本の将来の展望についてどう考えているのかについてだった。

 この内容に関して、桜井さんはそつなく答える。

事前に回答を準備していたのだろう。


 その後、評論家を交えた議論が始まる。

「産業自動化などの施策が、本当に意味がある施策なのか」が議題の焦点だ。

こちらも10分程で討論が終わる。

押し問答を十分に考えてあったようで、こちらのコーナーも桜井さんはそつなくこなした。


 その後、番組の裏方たちが、表が書かれたホワイトボードをガラガラと押してきた。

そこには、俺達が聞こうとしている質問内容が書かれている。

なお、今はシールに隠れて何が書いてあるかはわからない。

質問するときに、順々に開いていく手筈となっていた。


『さあ、これからは桜井さんのプライベートについてがつがつ掘り下げていきます!

 電光石火の如く政界に出られた桜井さん。政策以外は謎な点が多いと思います!

 それでは安心して政治を任せられない!! 

 そこで、今回は私が桜井さんにがつがつ質問をしていきたいと思います!!』


 この話を聞き、桜井さんは少し嫌そうな顔をした。

そりゃ当然だろう。

こんなことを聞かれるとは桜井さんは知らされていなかったのだろうから。


 俺は桜井さんの表情を見て、にやりとする。

さあ、この場で変な回答をしろ。そうすれば、民衆は不審がるだろうからね……。


『では、一つ目の質問です!』


 アナウンサーがはきはきと宣言すると、裏方の一人が一番上のシールをはぐ。

それを確認した後、女性アナウンサーが質問を読み始めた。


『えっと……。「河合エレクトロニクスさんでの生活」ですね!

桜井さんは、河合エレクトロニクスさんで10年程お仕事をされていたかと思います。

その時の面白いエピソードがあれば教えてください!』


『お、面白いエピソードですか……』


 桜井さんは言いよどむと、腕を組み少し考える。


 俺は、考える桜井さんの表情を凝視すると、舌打ちをする。

すまし顔だった。テンパってくれるとよかったんだが……。


『そうですね……。恋愛関係の面白いエピソードならあります』


 それを聞き、アナウンサーが目を輝かせる。


『それは面白そうですね! どんな話なのでしょう?』


 この人、興味半分で聞いているな……。

俺はそんなことを思いながら、画面を眺め続ける。


『同僚の2人が恋人同士だったんですよ。女性の方が上司で男性の方が部下だったんですけど……。

二人は入社する前から恋人同士で、同い年だったんですよね。

そんな感じでいろいろと複雑だったので、事件も多くて……。

二人の話を見てて、とっても面白かったです』


「んん……。なんだかソワソワするよ……」


 隣の有海が桜井さんの話を聞き身を震わせる。

確かにテレビで自分たちの話がされているとちょっと不思議な気持ちになる。

何を言われるのかが、怖いっていうのかな?


 俺と有海は逆ドッキリを仕掛けられているんじゃないかという気分になっていると、アナウンサーが相槌を入れる。


『なるほど! では、桜井さん自身の恋愛話はないのでしょうか?』


 アナウンサーが、ニコニコ顔で桜井さんへと問いかける。

その最中、会議室の扉がノックされるとスタッフの方が顔を出した。


「すみません! 桜井直人さん! そろそろ出番です!」


「はーい」


 直人さんは、スタッフに呼ばれると席を立ち、会議室の扉へと向かう。

彼は扉の前まで向かうと、俺達へと向き直り、口を開いた。


「響子がどうなってしまったのか……。この目でしっかりと焼き付けてくるよ」


 俺は彼の表情を見た。

彼は決心したような表情をしていた……。

俺はそんな彼を見て、思った。


 直人さんは、突然桜井さんがいなくなってしまい、探して探して、やっと見つけてもずっと会えない。

そんな日々を過ごしてきたはずだ。

普通の人間ならば、行方不明になっても無事ならば、真っ先に自分の大事な人へ会いに行くはず。


そもそも桜井響子の今の状態はおかしいのだ。


つまり、彼も桜井さんの異常さに気づいているのだろう……。

俺は彼が口に出した言葉からそう感じてしまった。


 彼の心情を思うと、俺も普通ではいられなかった。

だから、俺は彼の目をしっかりと見ると、こう口を開いた。


「……はい。お願いします」


 俺はまじめな表情をしつつ、彼を送り出した。

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