表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2045年問題   作者: 村田こうへい
第四章 潜入編
50/81

第三十七話:「アジト④」

昭人視点に戻します。

俺――小林昭人は吐き気がしていた。


「「『そうだ』ともいえますが、『そうだ』ともいえません。意味は分かりますか?」」


 突然目の前に現れた2人の女性が、意味不明な言葉を同時に発した時。

その時、俺の脳裏に不思議な情景……情報がとめどなく流れ込んできたからだ。




 薄暗い室内に、水で満たされた細長い不気味なカプセルが何個も並べられる。

その中には、管が繋がれた人間達が収められていた。

その管からは何かが人間達へと送られ続ける。

しばらくたつと、カプセルの中にいる人間が()()と目を見開く……。




 そのような情景を脳裏で見せつけられ、俺は異様な吐き気を感じた。

その後、俺はすぐに現実へと引き戻され、吐き気も少しづつ収まり始めた。


 その時、俺は気づいてしまった。最後に見た人間だと()()()()目……全てを悟ったような悲しそうな目が、目の前の女性達の目と似ていたのだ。


 そして俺は見つけてしまった。彼女たちの遥か後方にある、細長い不気味なカプセルを……。

あれは、先ほど感じた情景で出てきたカプセルと一緒だった。


 それらから、俺は悟ってしまう。


『まさか、彼女たちは改造された人間なのか……。もしかして、未来で見たやつらと同じ新人類(サイボーグ)なのか?』


 俺はこれまでの事実と考察した結果から、背筋がヒヤッと凍り付く感触を感じてしまった。


 それを感じた直後、俺は何かに導かれるように若井さんへ念話で話しかけた。


『お取込み中失礼します。彼女たちの正体ですが……改造された人間だと思うんです。俺の思い違いならいいのですが……。倉庫の端にある大きなガラス筒を見て、そんな気がしています』


若井さんはそれを聞き、信じられないような表情をした後、こう返事をした。


『改造された人間ですか? ……どういうことですか?』


『えっと……。彼女たちは、人為的に改造されて、強化された肉体を持っていると思います』


分かりやすく答えたつもりだった。彼に伝わっただろうか。


『はあ……。根拠は何ですか?』


『えっと……。熱感知ができないのと……。勘です』


 「突然脳裏に浮かび上がった情景が根拠です」と伝えても相手にしてもらえなさそうだったので、俺はその部分をあえてぼかした。


『彼女たちは敵のAIに支配されている可能性があります。動向に気をつけてください』


 俺はそれだけを伝えると、すぐさま念話を切った。今のところはこれ以上彼に伝えられる情報がない。今の話を深堀りされてもこれ以上はっきりとは答えられないのだ。

 これ以上話が続いても面倒だ……。俺はそんな気持ちから、念話を切った。


 その後、若井さんと彼女たちとの問答は続いた。

途中若井さんが斎藤静香に挑発を受けていたので、若井さんに助言もした。


 あんな分かりやすい挑発になぜ乗ってしまうのか……。

俺は内心思っていると、ふと不思議な気持ちとなった。



 先ほど脳裏に情報が流れ込んできたこの感覚……。そして、吐き気を感じるこの感覚……。どこかで一度体験したような気がするのだ。


 ――そうだ。


 20年前。俺が未来に飛ばされたときに体験した時とほとんど一緒だ。盛岡のホールで目の前の人間がサイボーグだと思い至った時、俺は同じ体験をしたはずだ。

 あの時に感じた情報とは全然違うような気がするが……。だが、これを見せつけられた後の()()は一緒だったと思う。


 1度ではなく2度も見せつけられるとは……。

俺はこの不思議な現象が、誰によって引き起こされているのか気になり始めた。


 そして俺は、その答えが20年前、一体「()()俺を未来へ転移(タイムリープ)させたのか」という命題の答えと一緒のような気もしていた。


 ()()が俺を未来に飛ばし、未来の惨状に気づかせ、そうならないように対策を取らせる……。

そして今も、誰かが俺に敵の正体を気づかせ、対策を取らせようとしている……。

そんな気がしたのだ。


そんなことをさせようとするのは一体誰なのだろうか……。


「神」か?


俺はそれに思い当たった後、頭を振りその答えを振り払う。


神なんているわけがない。そんな非科学的なことを信じることはできない。


俺はそう思うことにした。




その時、若井さんから念話が届いた。



『危ない! 昭人さん!』



 その念話を聞き、俺はふと現実に戻される。

思考加速を施していた強化鎧(パワースーツ)は、すぐに敵の動向を俺に知らせてくれた。


 ふむ……。女性の1人が銃弾を放ち、またもう1人が銃弾を追うように俺に迫ってきている。


 新人類(サイボーグ)達の攻撃に俺は一瞬焦ったが、対処できるスピードだということに気づき、すぐに落ち着きを取り戻した。俺は取り急ぎ目の前の危機を打開するために、対策を考えることにした。


 さてどうするか。とりあえず、すぐ横の若井さんのキックは盾で止めるか。その後、盾を使って二人の攻撃を止めつつ麻酔銃で動きを止めるか……。


 うむ……。いけそうだな。

俺は考えがまとまり、実行するために麻酔銃を鎧から引き抜いた。


 この間、若井さんからの念話を聞いてから5ミリ秒程。俺は落ち着いて対処を始めた。



 まず若井さんのキックを盾を使いエネルギーを吸収する。

カツンと鎧と盾がぶつかる音がし、若井さんが体勢を崩す。


若井さんがよろけた時、驚いた顔をした気がしたが、俺は気にせず次を対処することにする。


 次に目の前の銃弾だ。この銃弾を避けると、すぐ横にいる有海に当たってしまう……。

有海はまだこの弾に気づいていなさそうなので、盾でエネルギーを吸収することにする。



 若井さんの足がまだ交わっている盾を無理やり動かし、俺は銃弾へと向ける。

これにより若井さんが倒れそうになるが、俺はお構いなしに淡々と処理を続ける。



 そして俺は、何かに導かれるように刀を持つ女性へと向かって走る。



 迫りくる弾を盾で防いだ後、黒光りする女性の刀を盾で受け止めた。



 カキンと鈍い音をたて、彼女の刀が止まる。



 彼女はまだ情況が把握できていないのか、寡黙な顔をしたままだ。



 それを見て気分が良くなった俺は、右手に持つ麻酔銃の引き金を引き、彼女に向かって至近距離で銃弾を発射した。



 ここまでコンマ1秒の出来事。

俺ははっとすると周りの状況を確認する。



 目の前には驚愕した表情を浮かべ、痺れた体をいたわる斎藤静香がいた。

手に持っていた黒刀は、鉄箱の上に落ちカランと乾いた音をたてる。


そしてふと後ろを見やると、尻餅をつき目を見開く若井さんがいた。


「……お前、今何をした?」


 目の前から声が聞こえ、俺は目線を元に戻す。

斎藤静香が、悔しそうな表情をしながら声を絞り出していた。


「何って……。防いで反撃しただけだが」


 さも当然のように俺は彼女へと事実を伝えた。


 彼女の目に一瞬恐怖が浮かぶ。


 一体どうしたというのだろうか。別に特別なことをしたわけじゃないと思うんだが……。


 しかし、こいつらが新人類(サイボーグ)だとすれば、思ったより弱い。

昔未来に飛ばされた時、有海の日記で読んだ新人類(サイボーグ)達の圧倒な強さを全く感じなかった。

これは、強化鎧(パワースーツ)を着た俺達が強くなったということなのか……。

それとも、こいつらは未来で見た新人類(サイボーグ)と比べると、各段に弱いのか……。

 そんな考えに思い至り、俺の心に余裕が生まれた。


 その時、俺の強化鎧(パワースーツ)のAIが何かを検知した。

もう一人の女性――会津由香が有海へ向けて狙撃をしようとしていることに。


 気づいた直後、有海へ向かって銃弾が発射される。


 ――遅い。


 俺は内心そう思いつつ、弾の軌道を計算すると、瞬時に移動する。

 

 一閃。


 目の前を通りすぎる弾に向かって盾を振り上げて、弾の軌道を変化させた。



 加速した思考を元に戻すと、弾が砕ける音が倉庫の天井から響き渡り、遠くにいた会津由香と弾に気づいていた有海が驚愕した表情を浮かべた。



 一体どうしたというのか。このぐらいの動き強化鎧を着た人ならば簡単にできるだろうに……。


 俺の心で疑問が大きくなった時、若井さんから念話が入った。


『昭人さん! すごいです! その調子であの二人を捕まえてくれませんか?』


ふむ。この手ごたえなら簡単だろう……。


 俺は頷くと、麻酔銃を構えて会津由香へと突進した。


途中鉄箱が存在しているがサクサクとジャンプで避けつつ彼女へと迫る。



俺が彼女へと迫ると、彼女は驚愕した表情でこちらを睨みつけた。


 お前たち、そんな顔しかできないのかよ……。


俺はそう思いつつ、至近距離で麻酔銃の引き金を引こうとする――。



その時、俺は右手に衝撃を感じ、後ずさる。

どうやら麻酔銃を狙撃されたようだ。


「おやめなさい!!!」


 凛とした声が倉庫内で響き渡る。

その声は、懐かしくもあり、求めていた物だった。


 俺は声のしたほうを凝視する。50m程離れた鉄箱の上に武装した人間がいた。

AIに働きかけ、視力を強化する。すると、彼女には似つかわしくない強気な表情が見て取れた。


「――桜井さんですか?」


俺は、彼女へと聞こえるように声を張り上げる。


「え?」


後ろから、か細い有海の声が聞こえた。彼女も俺の声を聞き察したのだろう。


俺の声が聞こえたのか、桜井さんだと思われる女性はにっこりと微笑み、俺を見据えた。


「そうですね。()桜井響子です。今は、()()()()我が主(マスター)からそう名付けていただきました。どうぞお見知りおきを」


「……は?」


 俺は彼女の自己紹介を聞き、気の抜けた返事をしてしまう。

そして気づいてしまう。彼女もあっち側の人間だということに。


「そんな……。まさか……」


俺の背筋に、ぞくっと冷たい物が走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ