第三十一話:「武器③」
毎度毎度遅れてすみません。
仕事はそろそろ落ち着くと思います……。きっと。
「では、次の武器です」
皆が武器の羅列の前に戻ったのを確認した飯島リーダーは、机の上に置かれている武器を手で指し示した。それには、子供用の大きな水鉄砲のように、銃芯の上に水タンクのような大きな物体が取り付けられていた。
「これは、銃です。見た目は水鉄砲のようですが、水鉄砲ではありません」
飯島リーダーは続ける。
「この銃は、電気信号の通信を阻害する電磁波……レーザーを発生させることができます。このレーザーに当たった機械は、情報のやり取りができなくなり、動作を停止します。つまり、人間を傷つけず、ロボットだけを麻痺させる……対ロボット専用の兵器です」
「どの程度の機械を動作停止にできるんだい?」
俺は興味本意から飯島リーダーに確認をする。
「今河合エレクトロニクスで発売されている機械は全て動作を停止できます。事前に試験を行って確認済みです」
「……さっきの盾にその光線を当てるとどうなる?」
今度は俺の横から問いかけが飛ぶ。先ほどの盾の時の質問と同じく、佐藤所長からだった。
「盾は電気信号を受信しなくても電源さえあれば動作できるので、動作している盾でレーザーを受けるとレーザーは盾の部分で消孤します」
この回答を聞いた佐藤所長は、渋い顔をしつつ唸る。
「なるほど……。つまり、敵のロボットが盾を装備していれば、この武器は無力化される可能性が高いと……」
「その通りです。ただ、敵はこの武器を開発していないでしょうし、その心配は無用でしょう」
彼女は淡々と、そしてさも当然のような顔をしつつ回答した。
しかし、俺は彼女の表情を見て少々不安な気持ちとなった。
彼女はリスクを軽視しているのではないだろうか……。
俺の心の中で若干の不安が渦巻き始めた。
しかし、彼女がすぐに銃の実演に移ってしまったため、それは俺の好奇心によってかき消されてしまった。
銃の実演の中では、俺も実際に武器を扱ってみた。
俺は盾を持ったウイスへ銃口から放たれるレーザーをぶつけてみたのだが、事前に聞いていた通り防御をされてしまった。
また、盾を装備していない6号君の足にレーザーを打つと、歩いていた6号君は片足を動かせなくなり、その場で留まってしまった。
説明を聞いていた通り、素晴らしい武器だったと思う。
その後、2つの武器が紹介された。
一つは、『閃光弾』だった。ただ、既存の物より光量が桁違いのようで、この光を見た人間は10分程視力を失うらしい。
もう一つは、『麻酔銃』だった。麻酔の威力は人間を殺さない程度にとどめているため既存の物と変わりはないが、AIによる自動照準機能があるため、既存の物と違い射撃者の技量が低くても目標に簡単に当てることができるらしい。
模擬弾を入れて竹内さんが射撃したが、目標物の投げた野球ボールに着弾し、佐藤所長が大絶賛していた。
そして、武具の紹介は最後の1つとなった。
「最後にこちらです」
飯島リーダーは、床に直置きされた、等身大以上はある大きな白い鎧を指し示した。
「これは……強化鎧です。これを人間が着て、自分の意志を用いてこの鎧を動かす
ことができます」
「おお……」
強化鎧というフレーズを聞いた佐藤所長と竹内さんは目を輝かせる。
強化鎧といえば、戦隊モノでレンジャー達が身を包むアレである。今目の前にあるのは取り付けられている機械が多くそれらと比べると少しゴツいが、それでも童心をくすぐるには十分な代物だった。
「どのくらい体が強化されるのでしょうか?」
目を輝かせた竹内さんは、前のめりになりつつ飯島リーダーに問う。
それを見た彼女は、ニコニコ顔に変わる。期待通りの反応だったのだろう。
「大体5〜10倍ぐらいに筋力、素早さが、胴体視力などが強化されます。着用する本人の体がついていけるかどうかが鍵ですので、体つきが良い人や体力が多い人ならば、もっと強化できるかと思います」
「なるほど……。すごいですね!」
それを聞いた竹内さんの声が一段と高くなる。
そして、彼は隣の佐藤所長と戦隊モノについて思い出話しを始めてしまった。
「えっと……。意志で鎧を動かすと言ってましたけど、具体的にはどんな感じなのでしょう?」
俺は、興奮した二人に変わり、気になることを彼女に問いた。
「頭で感じたことを鎧の中のAIが感じ取って、鎧の動きに反映できます。普通人間は脳で指令を出してその指令が運動神経を伝って筋肉を動かします。しかしこの鎧は、頭で理解した事象から鎧の中のAIが最適な動作を考えて『直接筋肉を動かしてくれる』ので、着ている人は突発的なことにもすぐに行動できるようになります」
その説明を聞き、俺はまた不安な気持ちになる。
その鎧に体の主導権が奪われるように聞こえたからだ。
「はあ……。なんだかAIに体が乗っ取られた気分になりそうですね」
俺の発言を聞き気持ちを察したのか、飯島リーダーは真剣な顔で説明を続ける。
「そのモードの時は、着用者の意志は別に存在するので、もしAIにやってもらいたくない動きがある時は『やめろ』と念じてもらえれば普段のモードにすぐ戻ります。
普段のモードでは、私たち人間の脳から『筋肉を動かす指令』をもらってから、AIが脳で作り出された指令をそのまま筋肉や鎧に伝えて体を動かすので、着用者は乗っ取られた気分にならないと思いますよ」
……なるほど。普段は人間の筋肉を動かす指令を受けてから鎧を動かすから、体を乗っ取られることはない。また、特別なモードに移行すればAIに任せて超人的な動きが出来るということか……。
しかも、不本意な行動ならば意志で止めることも出来るらしい。
「……自動判断をしてくれるモードに移行するには、鎧のAIに指示をすれば良いのか?」
俺は気になることを続けて彼女へ質問する。
「はい。頭で『自動操縦開始』と念じて片手を上げてもらうだけでそのモードが始まります」
この説明を聞いて俺は安心する。体の動きと念が連動して特別なモードが始まるのならば、間違ってそのモードを起動してしまうことは起きにくいからだ。
しかし、この話を聞いている中で、俺の中である1つの疑問が生まれた。
「そもそも、何故この鎧を開発したんだ? 人間を強化する必要はあるのか?」
俺の疑問を聞いた飯島リーダーは、目をぱちくりさせると佐藤所長の横でずっと黙っていた有海を見つめた。
有海は飯島リーダーの視線から何かを察したのか俺に向き直ると、真剣な顔で俺を見つめた。
俺は有海のいつにもなく真剣な表情を見て、不安な気持ちになる。
「私から答えるわね。質問は『なぜこの鎧を開発したのか?』よね。それは……」
「……私達人間が敵のアジトへ直接潜入するためよ」
「人間が攻めるのか? 潜入はロボットに任せるわけではないのか……」
先ほどからロボット用の武器ばかりを見せつけられていたからか、俺はアジトへは人間がロボットに指示を出して攻め込ませるものだと思っていた。
俺は有海の発言を聞き、驚愕した。




