第三十話:「武器②」
すみません。少し遅くなりました。
「……ではまず、こちらです」
飯島リーダーが俺達を順繰りに見やりながら、机の上に置かれた板状の物体を手で示す。
色は白色で、1辺50cm程の四角形の物体だった。
「これは、盾です。基本的にロボットに着けて使用します。アタッチメントですね」
彼女は白色の盾をひっくり返す。中は黒色で、盾を掴むための1本の棒が備えられているようだ。
「これは6号君用の盾です。ロボットに指示を出すと、この盾をつかみ取って装着してくれるでしょう。盾内部にはこれを使用するための情報が書き込まれていて、盾とロボット同士の初期通信でロボットは盾の使い方を簡単にマスターできるでしょう」
彼女は後ろの研究室員を見つめると、互いに頷く。そして、頷いた研究室員は後ろへと下がっていった。
その後、飯島リーダーは俺達を見据える。
「これから、ロボットによる実演を行います。少々お待ちください」
「すみません。ちょっといいでしょうか」
彼女の説明が一段落すると、俺の横で手が上がった。手を挙げているのは、佐藤所長だった。
「武器の実演を見る前に、性能を伺いたいのですが」
「そうですね。承知いたしました」
飯島リーダーは頷くと、話を続けた。
「性能としては、基本的な攻撃は全て無力化できます。攻撃をはじくというよりは運動エネルギーを吸収してその物体の動きを止めるような力を持っています」
「基本的な攻撃ですか……。銃弾程度なら止められますかな?」
「はい。問題ないと思います」
「……おお」
飯島リーダーの返答を聞いた佐藤所長は感心した声を上げると、竹内さんとなにやらこそこそと話を始めた。一体何を話しているのだろうか……。
そして、話が終わると竹内さんがホールから出て行ってしまった。
それと同じタイミングで、後ろに下がっていた研究室員が、6号君を連れてホール内に戻ってきた。
連れられてきた6号君は、最新型……不正アクセスで盗まれた6号君50台と同様の物だ。
「では……。ウイス。そこの盾をつかみなさい」
『承知しました』
飯島リーダーが6号君……ウイスに指示を出すと、ウイスは歩みだし、机の上に載った盾を掴む。
『……盾、装着完了。自衛モードに移行します』
「今の声はいつ教え込んだんだ?」
俺は好奇心から飯島リーダーに問いかける。
「はい、盾の中の情報をもらって発声しています。いちいち教え込む必要はありません。これから紹介するすべての武器が同じ仕様ですよ」
「しゃべっている間に攻撃をされたらどうなる?」
「喋りながら応戦します。喋らないと指導する私達がわからないとおもったので……」
「なるほど。良いな」
俺の口から自然と感想が溢れた。
いちいち教え込んでいると面倒くさいし……。武器の効果でロボットが勝手に学習してくれるのは助かる。
「では、少し実演をしてみましょう。加山。例のもの持ってきて」
「はい」
加山研究員が真面目な顔で頷くと、手に持っていた野球ボールを皆に掲げて見せる。
「加山は高校時代野球をやっていて、結構早い球を投げれるんですよ」
飯島リーダーが得意げに話すと、ウイスから3m程離れた位置を指し示す。
「じゃあ、ここなら投げてみて」
「了解です」
「……近いな」
二人のやりとりを見ていた佐藤所長は、投げる位置を見て思わず唸る。
加山研究員が投げる位置は、ウイスの真後ろ。つまり人間なら死角の位置だ。
「加山君の好きなタイミングで投げてちょうだいね」
ニコニコ顔の飯島リーダーは加山研究員へ指示を出す。
「了解です」
「ルイスも勝手に後ろ向いちゃダメよ」
『了解』
ウイスの返事の後、10秒程だっただろうか。加山研究員は、振りかぶるそぶりもなく、急にボールを投げる。
そのボールがウイスに当たるタイミングだろうか。まるでタイムリープしたかのようにウイスが反転し、攻撃を防ぐ体勢へと変わる。そして、ボールは当たる音もせずに盾の下へと落ちていた。
「……なんだこれは」
目で追いきれない動きを見せつけられ、俺は思わず声を漏らす。聞いていた性能より格段にすごい。
「ふふ……想像以上だ」
佐藤所長も同じことを思ったようだ。あまりの凄さからか、顔がニヤついている。
「ちょっと私達でウイス君を攻撃してみたいんだけど、良いでしょうか?」
そんなことを言われ、飯島リーダーがキョトンとする。
「良いですが……。何をするのでしょう?」
「それは後のお楽しみということでお願いしたい。……とりあえず、危ないからウイス君から離れて欲しい」
佐藤所長は周りを見回す。
「そうだな……。あの位置まで皆で下がろうか」
佐藤所長に言われるがまま、俺たちはウイスを残して彼の指し示した壁の端まで移動する。
「よしいいな……。大きな音が出るから、驚かないで欲しい」
彼はそう宣言すると、胸ポケットから無線機を取り出す。
「竹内どうぞ」
『……はいどうぞ』
「こちらの準備は完了だ。始めてくれ」
『……了解です』
パンっ!
暫くすると、大きな発砲音がホールの2階から聞こえてきた。
ウイスを見ると、音のした方向へ盾を向けている。
パンパンっ!
今度は2連続。2回とも別の方角から聞こえてくる。
ウイスは、一発目の発砲音がした方向へ盾を向け、その後瞬時に体をズラす。
「よし、終わりだ」
『了解。打ち方やめー!』
佐藤所長は、無線機で伝えると、竹内さんの指示する内容が聞こえた。
「……では、銃弾がどうなったを見てみましょうか」
俺たちは佐藤所長に促されるまま、ウイスの近くへと向かう。
そして、佐藤所長はウイスの下に落ちていた光るそれを見つけると、拾い上げた。
「すごいな……。2発の弾が何事もなかったかのように落ちているよ」
彼は驚いた顔で呟くと、3発目の銃弾の軌道を追ってホールの端へと向かう。
端の壁へと到着すると、彼は壁を調べ始めた。
その隙に俺たちも佐藤所長の所へと向かう。
「あった。さすがだな……」
俺たちが到着するタイミングで佐藤所長が呟く。彼が見つめる先には、確かに穴の空いた壁が存在していた。
『私は無傷です。全て避けるか防ぎました』
俺たちの気持ちを読んだのか、ウイスから無傷報告が聞こえてくる。
「撃たれるとは想定外でしたが、見たとおりの性能です! ……素晴らしいでしょう?」
飯島リーダーは、佐藤所長に向かってそう宣言する。
「ああ、想像以上だった。次の武器も期待してるよ」
「はい。お任せください。では次の武器の紹介に移りましょうか」
彼女は微笑むと、ウイスのところへ踵を返した。




