第二十四話:「襲撃①」
大家の向井さんに状況を伝えられた直後、俺達は家を飛び出し旧家に到着していた。
付近はパトカーが4台ほど到着しており、パトランプの赤い光が閑静な住宅街を周期的に照らしていた。
そんな中、黄色い規制線が張られた自宅を俺は確認すると、荒れ果てた庭が目に飛び込んできた。
「「「……」」」
そんな状況を見て、俺達は言葉を失う。
樹木は根こそぎ引っこ抜かれ、外にあった小さい倉庫は銃弾でハチの巣にされたかのように穴だらけとなっている。芝生も見たことのあるような足跡によりぐちゃぐちゃにされていた。
「……有海と海人とタクミはちょっとここで待っててくれ」
俺は二人と1台にそう伝えると、規制線を越えて近くの警察官の元へと向かった。
「すみません」
俺は規制線の中にいた警察服姿の男の人に話かける。年齢は30代前半といったぐらいで、がっちりした体系の方だった。
「はい。規制線の中は関係者以外立ち入り禁止なのですか……?」
不審者を見るような目で警察官は俺を見つめる。
「いや、私は関係者です。……すみません。このお面が目ざわりですよね。実は事情があってつけっぱなしにしておかないといけないんです。これだけはご勘弁願いたい」
この発言を聞き、更に警察官の目が鋭くなった。
「はあ……。で、貴方は誰なんですか?」
凄みのある声だった。よほど俺を信用してないんだろう。
「この家の所有者です」
「ああ……。小林さんですか。今回は不幸中の幸いというか……。お悔み申し上げます」
一転納得がいったのか、警察官の声がやさしい声へと変わった。
「私も自己紹介しましょう。仙台常盤警察署の柊木と申します。先程までのご無礼をお許し願いたい」
彼はそう言うと、深々と頭を下げた。
「いやいや、職務上しょうがないのでしょう? 気にしないでください」
俺は柊木さんに顔を上げるように勧めると、少し気落ちした表情の顔が上がった。
「はい。不審な方にはそう対応しろと言われているので……すみません」
「私たちも今かなり変な状況ですからね……気にしないでください」
まあ、結局はこの仮面のせいだな……。俺はそう納得した。
「ところで私は今初めて自宅に戻ったのですが……。被害はどの程度なのでしょうか?」
話が途切れたのを見計らい、俺は柊木さんに問いた。
「庭はごらんのような有様です。家の中は……。かなり漁らされています。ごらんになりますか?」
何とも話にくそうな表情で彼は答える。しかし、俺は彼に今一番気になっていることを問いた。
「……もう中は安全なのですか?」
桜井さん家の時は、中に6号君が潜んでいた。今回も同様の可能性がある。俺は今回こそは念入りに確認をしておかなければならなかった。
「はい。隅々まで確認しましたが、犯人が潜んでいるようには見えませんでした」
清々しく彼は答えた。
その答えを聞き、俺の気持ちは一転安心した。敵方の6号君に今会う可能性が格段に低くなったからだ。
「なるほど……。家内と息子を連れてきてもいいですか? 何がなくなっているのかを確認したいので」
「……わかりました。ちょっと上司に確認します」
彼はそういうと、手持ちの無線機を使って上司に確認を始める。
その間、俺は視界に入る玄関を見やった。玄関のドアは開け放たれ、中にあった物は散乱していた。
そんな状況を見て、俺は少し気が滅入ってしまった。
「……上に確認しましたが、全員で入っていただいて問題ないとのことでした。一応身分証明証を確認したいのですが、運転免許証とか今持参されていますか?」
「はい。持っています」
俺は若干気落ちしながらそう返答すると、ポケットのパスケースから運転免許証を取り出し、彼に見せる。
「これでいいですか?」
「……あと顔も見せていただけますか?」
「あ、はい」
俺はそう言うと、お面を頭の上に持ち上げ、柊木さんに顔を見せる。
「……はい。結構です。中を確認する際、私が同行しますが構いませんか?」
「はい。問題ないです。よろしくお願いします」
俺はお面を戻しながらそう彼に返すと、その場から離れ家族を呼びに行った。
元の規制線のところへ戻ると、なにやら野次馬達が騒がしい気がした。
「……ああ」
俺は一瞬で状況を把握した。この人達は、仮面をつけた俺達を不信がっているだけみたいだった。
その人たちの真ん中にいる有海と海人は、なんとも居づらそうにもじもじとしている。
彼女たちの横にいるタクミは、特に変装をしていないからか普段通り落ち着いた感じでその場に立っていた。
「有海、海人とタクミ。遅くなってすまんな。警察の許可が出たから家の中を確認しよう」
俺は二人と1台にそう告げると、彼らを連れて家の中へと向かった。
「……恥ずかしかった。やっぱやめよう? このお面」
柊木さんと合流して家の玄関まで移動する最中、俯きながら海人が呟いた。
「すまんな。もっと良いお面を作ってやるから、それまで我慢してくれ……」
俺は海人へそう伝えると、不満そうな声色の有海から追撃がきた。
「てかさ、お面じゃなくてマスクと帽子とかでもよかったんじゃないかな!」
「……あ」
その声を聞き、俺も気づく。
確かに、わざわざ目立つ仮面を選ぶ必要はなかった。
「まあ、今日はこれをつけるって事で、諦めてくれ……」
俺はむくれる有海をなだめる。
うだうだとそんなことを柊木さんの横でやり取りしていると、彼はなんとも訝しそうな顔で俺たちを順繰りに見やっていた。
海人と有海の文句を聞き入れながら、俺は玄関から家の中へと足を踏み入れる。部屋のフローリングは、桜井さん家で見たような足跡がところせましとこびりついていた。そして、部屋の中の収納がほぼ全て開かれ、中の物が出されていた。
「犯人は収納を全てひっくり返しています。まるで何かを探すかのように……。一体何をさがしていたんでしょうね」
柊木さんは、俺の横でそう呟いていた。その目線の先には、リビングの床に散乱している貴金属のネックレスがあった。
「ネックレスが落ちている……。犯人は金目のものは盗まなかったのですか」
俺は柊木さんに問いた。
「はい、そうみたいです。通帳や貴金属も全て部屋に放り出されています」
「と、いうと金目の物を狙った犯行ではないと?」
「現状を確認する限りそうとしか考えられません」
頷きつつ柊木さんが答える。その表情は何ともいえない表情をしていた。
そして、彼は俺を見据える。
「そのお面と、襲撃後に家族全員で現れたその雰囲気……。もしかして、貴方達は家が襲われるのを察していたのですか?」
その問いに、俺はビクッと震える。そして俺はこの内容を話していいものかと思案しつつ、有海を見つめると、彼女も頷き見つめ返してくれた。
俺は有海を見つつ決心をすると、柊木さんへ向き直り、今までのいきさつをゆっくりと話始めた。




