1−6|試練の入り口
私は本当に魔法を手に入れたの?
でも……
「あんた、何ともないのか!?」
「え……」
特に何か変わったことはない。
「特には、それより」
さっき、手の感覚をなくした男は……
いたいた。
「さっきはごめんなさい」
男は不思議そうな顔をする。
「さっき? ああ、俺を押しのけていきなり本を奪ったことか」
「それは、そうなんだけど、私、ナイフで……」
男の手を見ると。
ナイフで切った後がなくなっている……一体どういうこと?
さっき、私は確かに。
「作り変えることができる力を我は持っている」
頭の中にまた、あの声が響いてくる。
「しかし、その力は強大すぎるが故、人間には扱えない。
だが、汝の力を試すことで授けられる力を決めることができる」
「私の力を」
「欲する力が大きければ大きいほど、汝の力が必要ということだ」
「私の力って一体どんな……」
「さあ、早く決めるがよい、汝はどのくらいの力を欲する」
決まっている。私はもう、覚悟したんだ。
「この世界を壊す力が欲しい」
☆ ☆ ☆
「一体どこに行くのよ」
透が行かなきゃいけない場所があると言ったから
なりゆきでついてきた彼方。
「ちょっと」
「この山の頂上へ行く」
「え……」
目の前にそびえ立つ山。
標高何メートルあるのかは定かではないが、
1000m以上はある山だ。
「山登りには準備が必要じゃないの?」
「いや、この高さなら」
「てか、なんでいきなり」
「俺の小さいころ、言われた気がするんだよ、親にさ」
「何を?」
「私たちに何かあったら、すぐにこの山の頂上に行きなさいって」
「そう……」
彼方は尋ねる。
「そこに何があるかとかは聞いてないの?」
「特には……でもそれがこの時だと思って」
彼方はしばし、考える。
リスクがないといえば嘘になる。
いつあの2人に見つかってもおかしくない。
今見つかったら、確実に殺される。
前みたいなミラクルは起きないだろう。
透自身、魔法の使い方をあまり分かっていないのだから
そもそも、透自身が魔法を使ったのかも確かではない。
「置いていくぞ」
「……待って」
「ん?」
「心配だから、一緒に行くだけ、恨まれても困るから」
「いや、別に恨みやしないし、心配しなくても」
「私が嫌なの、だから行く。私の自己満足、オッケー?」
「オ、オッケー」
2人は何にも装備もなく、何のプランもないまま、
透の親に言われたことを信じて山に登ることにする。




