1ー1|出会い
「世の中に不思議な力があったのを知っているかい?」
「どんな?」
「何もないところから火をおこしたり、水をだしたり、物を動かしたりすることができる不思議な力だよ」
「いいなぁ、私も使えるようにならないかな?」
「その力は、便利だけど、つらいことばかりなんだよ?」
「なんで?」
「その力を持った人より持ってない人の方が多いから、最初は『すごい!』って思われるかもしれないけど、後からいじめられることになるんだよ」
「いじめられるんだ……じゃあ、私、いらない!」
私の頭を撫でる祖母。
祖母の後ろにある本棚に埃が被っている本や汚く、破れてそうな本もある中、1冊の本が私には光ってるように見えた。
☆ ☆ ☆
α世界
交通の便が悪いが自然豊かな地域に住んでいる神矢透(16)は毎日、平穏で退屈な日常を暮らしていた。
ぶるぶるぶる……
携帯のバイブレーションが鳴り止まず、いやいや目を擦りながら起き上がる透。
「……」
「あ、やっと出た」
「……」
「あんた、今何時だと思ってんの」
「ん」
携帯を耳から離し、時間を確認する透。
『8時50分』
「おやすみ」
「は? あんた何考えてんの? 学校よ学校! 早く来なさいよ! このままじゃ留年ーー」
「あー、もう、うるせーな、わかったよ、今から行くから」
電話を一方的に切る透。
☆ ☆ ☆
自然と人間とのコミニケーションを掲げた風乃丘学園、小中高一貫なので敷地も広く、自然に囲まれている。
全国的に有名な学園でお受験の際にこちらの地域に引っ越してくる家族もいるほどの人気の学園である。
「どう? 来そう?」
高等部、3年1組の教室の中にさらさらな黒髪が腰まで伸びていて、顔が整っているが、それ以外が残念な朱江崎歩(17)と透の共通の友人でスポーツ万能……スポーツにしか取り柄がないといえる宮守鋼(17)は透の席を挟んで話をしている。
「さあ、どうなんだろ? 寝起きだったみたいだし」
「まじか」
キーンコーン……
「終わったな」
「席戻ろ」
生徒が座り始める。
☆ ☆ ☆
透は教師である斉藤と彼方と廊下を歩いている。
「彼女は?」
「あとでもう一度紹介するけど、転校生の鳳彼方さんです」
透に見向きもしない彼方。
「よろしく」
「……」
無視する彼方。
いやな空気が漂う中ーー
キーンコーン……
☆ ☆ ☆
教室にいる生徒は全員座っているが、生徒同士が話をしているため騒がしい。
「先生遅くない?」
「職員会議かなんかで遅れてんじゃない?」
「そうかな?」
「俺に教師事情はわかりません!」
ガラガラと扉が開く音が聞こえる。
「噂をすればーー」
斉藤と一緒に教室に入ってくる透と彼方。
透はそそくさと席に座る。
「「……」」
歩と鋼は透をジト目で見ている。
「なんだよ」
「いや、なんでもない」
教壇に立つ斎藤、その横に彼方立っている。
「え〜、転校生を紹介する」
「遠くから転校してきました鳳彼方です。仲良くするつもりはありませんのでよろしくお願いします」
クラス全員が彼方の発言で唖然としている。
☆ ☆ ☆
昼、学食の列に並んでいる透と鋼と歩。
「ねーあの子大丈夫かな?」
「あの子?」
学食を注文し、受け取った3人は椅子に座る。
「鳳のことか?」
いただきますと手を合わせ、そそくさと食べる鋼。
「うん……」
「気にするだけそんだと思うぞ? ああいうタイプは関わらないに越したことはない」
「確かにそうなんだけど……」
「早く食べないと俺が食べるぞ、もったいないから」
「あげないよ! これは私の」
口に頬張る歩。
☆ ☆ ☆
昼が終わり、午後授業が始まる。
授業の合間の休憩時間、歩が彼方に話しかけようとするが、彼方は席を立ち、どこかへ行ってしまう。
それが繰り返され、透が「諦めなよ」と言うが、歩は「諦めない」と意を決していた。
☆ ☆ ☆
全ての授業が終わり、HRも終わると足早に帰路につく彼方。
「さて……と」
あくびをしながら、教室を出ようとする透に歩が声をかける。
「透!」
「ん?」
「一緒に帰らない?」
「いや、寄るとこあるから、悪いな」
教室を出て行く透。
「今日もあそこに行くのかな……」
☆ ☆ ☆
草木が生い茂っている道を歩いていく彼方。
闇雲に歩いているわけではない。
「……」
しばらく歩いていると段々と木々がなくなっていき、道がひらけていく。
走る彼方。するとーー
街が一望できる高台に出る。
そこに誰が立っている。
彼方の存在に気付き、振り返る。




