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プロローグ|執行

 これは代々受け継がれている話。私が知ったのはこの問題が起こってから知った。

日本という国が戦争後から戦争をしてはいけないという感覚、感触が薄れて来たということと同じようにその問題は年々薄れていき、誰もが気にしていないときにそれは起きてしまった。


□ □ □


 現在からおよそ600年前、ある1人の女の子が生まれた。

その彼女は貧乏であったが、家族や仲間に恵まれ、決して金がなくとも、幸せに暮らしていた。

しかし彼女が12歳となった頃、戦争が始まる。

彼女の町の近くが戦場となり、疎開……避難するために準備をしていた。

しかし、彼女らが思ったよりも戦争は急展開を迎えていた。

奇襲を受けたので町の自衛軍によるものしかおらず、段々と戦況は押されていくことになる。自衛軍の隊長は早馬を飛ばし、中継基地のある場所まで、伝書を頼む。

しかし例え、その早馬が無事に到着しても、半日はかかる。軍を編成し、動かそうとなると2日はかかるだろうと隊長は予想していた。

「それではこの町は持たないだろう」と……


彼女は家族とともに町から逃げる準備をしていた。

それは自衛軍が町全体に発令したということもある。

中には「ここに残る」という人もいるが、少なくとも彼女の周りには残るという選択肢を持つ人はいなかった。

荷物を背負い、彼女たちは町の外に出ようとする……すると町の入り口の方から

「門が陥落された!!」

その言葉を聞いて、町の人々が一気に走り始める。我先にと……

彼女は幼かったためわからなかった。敵は門を陥落させた人たちだけではないということを。

町の人たちは凶暴になっていく。それは自分の命に関わることなのだから、それは必死にならざるおえない。

階段から突き落とす人がいたり、川に突き落とす人がいる。

しかし、それをやっている人は罪の意識などない。

それはなぜか……全員混乱しているからだ。

その混乱の中、彼女は家族に守られながらも、町の外を目指す。

しかし、後ろから敵の兵士たちの声が聞こえてくる。

「女子供は生け捕りに男は殺せ!!」

その言葉に彼女は恐怖で足がすくみ、転んでしまう。

兵士が徐々に近づいてくる中、彼女の母、父が彼女を庇うように前に立つ。

「逃げなさい」

「……え?」

「早く!!」

彼女はなんとなく、最後になってしまう、もう会えなくなると悟ってしまう。

「やだ!! 一緒に行くの……」

「甘えないの!」

母は一蹴する。

「あんたなんてさっさとどっか行ってしまえばいいわ。邪魔なのよ」

「……お母さん?」

「だから、子どもは嫌いなのよ! 私は産んだの後悔してるわ、もう二度と私の前にこないで」

彼女はショックを受け、泣きながら走っていく。

「……必死で生きるのよ。もがいて苦しんででも、生きることを諦めないで……」

母は彼女の小さい背中を見ながら、ボソッと誰にも聞こえない声でいうのであった。

□ □ □

彼女は町の外に出て、丘の上から町を眺めていた。

周りには誰もいない。お父さんもお母さんも友達……彼女はたった1人。

悲しみにくれた彼女は泣きながら、呪いの言葉を叫ぶ。

「私から全てを奪った者達を一人残らず殺してやる」……

そのころの彼女は知識も力も何もない。

しかし彼女は皮肉なことにもがき苦しんでも復讐をすることを誓った。

☆ ☆ ☆

森に囲まれていて、田畑が多く、こじんまりとしていて、平和な村、バンシュリ。

 鳳彼方とその家族はそんな村に住んでいる。

この時、彼方はまだ6歳。好奇心旺盛でなんでも気になる年頃。

彼方はこの村の中の看板娘的な存在であり、村から愛されていた。

「まま〜、おなかすいたぁ〜」

私はドタドタドタと家の階段を降りて、キッチンにいるままに話しかける。

彼方の家は二階建ての家で一階がキッチンやリビング、玄関があり、2階には彼方、父、母の部屋がある。

「あら、かなちゃん」

空いてる手で私の頭を撫でてくれる。

「もうちょっとでできるから、座って待っててね」

「は〜い!」

リビングに走っていき、椅子に座る。

「ねえ、ぱぱ〜、なによんでるの?」

「ん? 気になるのか?」

ぱぱは黒くて苦いやつ、大人の飲み物を飲みながら、難しい顔をして何か読んでる。

新聞かな?

「うん!」

「じゃあ、そうだな……ここ読めるか?」

「ここ?」

わたしは大きい文字が書いてある場所を指差す。

「え〜と〜、魔法使いは……なんて書いてあるの?」

「ん〜、そっかまだ読めないか」

ぱぱは微笑みながらわしゃわしゃと頭を撫でてくれる。

「んん〜!」

バンッ!! 玄関から大きな音が聞こえてくる。

「突然失礼する」

バタバタと何人か入ってくる。

「鳳敏也、審問委員会だ」

顔が強ばる敏也。

「いきなり、審問委員会の人たちがどうしました?」

審問委員会と言っている人たちは白いロングコートを着ていて、青いネクタイに黒のパンツの服装をしている。

「あなた達が『魔法を使用できるもの』という報告があってな」

「魔法を使用できるもの? なんのことだ?」

委員会の人たちの後ろから誰かが前に出てくる。

「三波のおばさんとおじさんだ! おはようございます」

わたしはおじさん、おばさんにお辞儀をする。

引きつった笑顔を浮かべている三波夫妻。

「ご同行願います」

委員会が敏也に近づく。

「奈南」

手を前にだし、呪文を唱える敏也。

「精霊よ、我に力を与えたまえ、『風の障壁(ヴァン・コンフィーネ)』」

敏也の前に委員会の進行を妨げるように壁が現れる。

「わかってるな」

「はい」

ままはわたしの手を握って

「彼方、行くよ」

「ぱぱは?」

手を引っ張る奈南。

わたしはままと一緒に外に出る。

裏のドアから出て行く奈南と彼方。

「奈南、彼方……ありがとうな……」

「さあ、茶番はもう良いかな?」

「どういう事だ」

「私の『土の槍(エールデ・サリーサ)』。矛と盾どちらが強いか勝負しようじゃないか」

「なんで……魔法を……」


□ □ □


 家から逃げた奈南と彼方。

「まま、ぱぱは?」

「ぱぱはね……」

覚悟を決めた顔をしている奈南。

それを見て、彼方は黙る。

「早く、ここから離れないと」

火の玉が奈南の頬をかする。

「敏也さん……」

後ろを振り返ると白いスーツの着た男たちが炎の玉を次々と打ってくる。

「なんで、魔法を……」

奈南は彼方を連れて、茂みに隠れる。

「かなちゃん? 今から、お友達といつも遊んでいる公園にむかうんだけど」

「うん」

「……ここからひとりで行ける?」

「……ままは?」

彼方をそっと抱きしめる奈南。

「ままはね? ちょっと用事ができちゃって、一緒にいけないのーーだから、ひとりでいける?」

「うん! わかった」

「それでね? 公園の端っこに綺麗な大きな石があるの覚えてるかな?」

綺麗な大きな石……あ、なんかお歌が書いてある岩のことかな?

「大きい石からまっすぐ走って、崖から飛び降りるの」

え? 飛び降りるの?

「危なくないの?」

「うん、大丈夫……危なくないよ」

ままが言うんだもん、危なくないよね!

「それでままは? ままは……」

「……」

ままはなにも言わない、言ってくれない。

「怖いと思うけど、勇気を出して《飛ぶ》のよ」

「……うん」

小指を出す奈南。

「約束」

わたしは小指を繋ぎ合わせる。

「うん……約束」

「最後に……刻む言葉(ザビーレル)」

ままはわたしの背中を押す。

「さあ、早く行きなさい! こっちを絶対に振り向いちゃダメよ!」

一度も振り向かないで懸命に走っていく彼方。

「これから、つらい事もあるかも知れないけど頑張って……」

「あなたは私たちの希望だから」

茂みから立ち上がる奈南。

□ □ □

わたしは一度も振り向かずに公園まで走ってきた。

振りむきたかったけど……怖かった。

石碑にたどり着き、石碑に書いてある文字を読み上げ、崖から飛び降りる。


初めての投稿となりますので

至らぬ点があるかと思いますがよろしくお願いいたします。


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