話せば分かるタイプでホントに良かった!
はい。自分の平穏なスローライフを守りたいだけの私です。
【第六感】スキルが発動した私はリーデを連れて、街の外までやってきた。すると、なんということでしょう。なにやら怪しい馬車を発見。そこに乗っていたのは盗賊あるいは傭兵のガラの悪い連中ですと。
「ナニモンだテメェら……」
推定この連中の首領であろう男に何者かを問われましたが、本来は名乗る義務も義理もないんですけどね……答えてあげるが世の情け。ってどこかの敵役も言ってましたからね。ええ。答えましょう。
「私達は通りすがりの冒険者ですよ?まぁ貴方たちには悪いですけど……私のスローライフを脅かす輩は排除したいだけです☆」
「ハァ?何言ってやがる。……まぁいいさ。テメェらがどこの誰だろうが、邪魔すんなら……殺すだけだ。命乞いするなら今のうちだぜ?お嬢ちゃん?」
【大魔法図書館】の調子も良好。私のコンディションも問題なし。そして目の前に居るのは厄介事を持ち込む輩ですので遠慮の必要もなし!じゃあやりますか。
「【スラッシュ・バースト】!俺がそこらの盗賊と思って油断したか⁉」
敵の首領は即座に私との距離を詰めて剣撃を放ってきた。一応『身体強化』をしていたのでなんとか躱せはしましたけど、厄介ですねぇ。ほとんど動作の始めが見えなかったですし。……魔力を感じるのでこの男、魔道具を使ってますねこりゃ。
「なっ!?なぜ躱せる!たかが魔法使いだろ⁉」
「ん-、それにお答えする義理はないですね。再現《火魔法『ファイアバレット』オプション『3連』》」
「グッ⁉【スラッ―」
流石に至近距離での魔法は初級とはいえ躱せないでしょう?あんまり火力高くしすぎると消し飛ばしてしまうかもしれませんし。
「ご主人様、こちら、掃討完了しましたが……加勢します?」
「だいじょぶ。それよりこいつらが馬車で何を運んでいたのか確認してくれない?衛兵に突き出さないといけないしねー。再現《闇魔法『影踏み』》」
「かしこまりました」
リーデは周りを片してちゃんと拘束もしてくれたみたいですね。私もさっさと終わらせないといけませんね。さっきの『ファイアバレット』の着弾によって発生した煙が晴れる前に私は追加の魔法を放つ。効果は簡単。相手の影を踏み、動きを制限する。よくあるやつですね。
「グッ……。……?ハッ!確かに効きはしたが、その程度かガキ!そっちのメイドも!誰の許可を得て馬車に近づこうとしてッ…⁉う、動けねぇ…⁉」
「じゃ、おやすみなさ~い。……ちゃんと歯ァ食いしばらないとめっちゃ痛いです、よッ!再現《土魔法『ノックアップ・フィスト』》」
「ガッ⁉」
ノックアップ・フィストはシンプルに土で大きな拳を形作って相手を殴るだけなのでこれ以上の魔法の解説は要らないでしょう。首領も気絶したのを確認してからきちんと縛る。一応【探知】スキルで周りの気配を探ってみますけど、逃げた残党も居ないようですね。
あとはこの馬車が何を運んでいて、何が私の【第六感】スキルに引っかかったのか、確かめましょうか。
「リーデ。なにかあった?」
「何か香のようなののがいくつかと……卵、ですね。」
卵かぁ。一応、割れないように藁をクッションにしてはいますけど……保存方法もかなり雑ですよこりゃ。見た限りではひび割れなんかも見当たりませんのでそこは一安心、と言った感じでしょうか。
「……ご主人様、私、とても嫌な予感がしてきました。この者たちはエクルスト山脈の方向から来ましたよね。そして、エクルスト山脈には光属性の魔力を司ると言われる竜が住んでいるのです。それも、竜王と呼ばれるほどの存在が。」
それ以上は言わないで良いかな。というか言わないでほしい。私もこの後の展開察してしまったからね。あ、【探知】に反応が。大きい。それも凄い勢いでこっちに向かって来てる。
「あー、リーデ?多分、悪いお知らせなんだけど……聞く?」
「聞かないという選択肢があるのですかご主人様…?」
「多分ねぇ……その竜王様、こっちに向かって来てるよ。私の【探知】スキルに大きな反応が引っかかったから」
私達が馬車から降りると同時にものすごい暴風が巻き起こり、何かが降り立った。お察しの通り、ドラゴンでした。
「貴様ら……!よくも我が子を攫いおったな……‼許さぬ。すべてをまとめて、焼き払ってくれようぞ‼」
お子さんを誘拐されてかなりお冠のご様子。そりゃそうですよね!我が子が攫われたんですから母親は怒りますよねぇ!?さ、ささやかな抵抗は試みましょう。ワンチャン死なない可能性に賭けて。
「待ってください!あなたのお子さんは無事です!子供を攫った人間に対して怒りを抱くのも当然の事ですが、一度お子さんをあなたの巣に戻しませんか⁉」
「竜王様、誓って私共は貴方様のお子様に対して危害を加える気はございません!ほんのわずかばかり、矛を収めてはいただけませんか」
「なんじゃと……?戯言を…!逃れようなぞさせんぞ!……む?」
竜王様が私達の後ろにある馬車の方に目線を向けた。そして、二度三度ほど頷いてから私達の方に向き直った。
「我が子はお主らに感謝しておるようだ。わるいやつらをやっつけてたすけてくれた、と。我が子はお主らに対して安らぎを感じておるようだ。それに……お主らの言葉には邪気が感じられなんだ。逃れたいがための方便ならば必ず邪気が混ざる。危うく妾は息子の恩人を怒りのままに排除するところであった。すまぬ。そして我が子を救ってくれたこと、礼を言うぞ」
「いえいえ、私達があなたのお子さんを助け出せたのは偶然です!あまりお気になさらないでください!」
良かったぁ……なんとか怒りを収めてもらえた……危うくエクレシア、竜の逆鱗ルートまっしぐらでしたよ……
「お主ら……名は何というのじゃ?妾に教えてはもらえぬか」
「私はリン。リン・エステルです。ただの冒険者ですよ。こっちは私の契約精霊のリーデです。」
「私はリーデ・エステルと申します。家精霊ですわ」
「リンにリーデか。良い名じゃ!気に入ったぞお主ら!妾の名はティアムじゃ!よろしく頼むぞ」
それにしても、なんで竜王であるティアムさんはたかが人間如きに遅れを取ったんでしょうかね?
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「なんじゃ?リン。妾に答えられることなら答えよう」
「それなら……どうして人間に卵を攫われたのです?貴女なら、人間程度に出し抜かれることはなかったのでは?」
「そうじゃな……妾はどうやら眠ってしまったのじゃ。それもかなり深く、な。ただ、人間たちが何かをコソコソしておったのは分かったのじゃが……なにやら香りを嗅いでからの記憶がないのじゃ。おそらくその時に眠りこけてしまったのじゃろう」
香りを嗅いで眠る…?それって多分毒、ですよね。しかも竜種にも効くとなるとかなり強烈な。さっきの香、【鑑定】してみますか。【鑑定】
『呪霊の蟲毒』
呪術によって生み出された猛毒。大抵の生き物は少量嗅ぐだけで眠ったように昏倒し、やがて死に至る。呪いも混じっているため、ただの解毒魔法では解毒はできず、また、並大抵の解呪も毒が混じっているため効かない。
とんでもねぇ呪物じゃないですかコレ⁉馬車に乗っていた量からしてこれ全部を嗅がされたと。恐らく実行したのは今日でしょうからだとしたら……自力で起きたティアムさんも凄いですが……こんなものをどうやって入手したんでしょうかこいつらは……
「どうしたリンよ。難しい顔をして。」
「多分ですけど……この香の匂いを嗅いで眠ってしまったんだと思います。呪いと毒の融合したものみたいですし」
「ほぅ、呪いか。ともかくじゃ!今は我が子を家に帰すことが先決じゃが、今度お主の住まいに邪魔させてもらうとするぞ。安心せい。人の姿を取っていくでな。それでは達者でな!リン、リーデ!勇敢で誠実なる人間とその付き人よ!」
そう言ってティアムさんは魔法で卵を浮かせ、自分の胸元で大事に抱きかかえたら山に向かって飛び立っていった。
ひとまず私のイヤな予感も過ぎ去ったということでギルドに戻りますかね。
「……リーデ、ギルドにもどろっか。……報告、しないとだよねぇ?」
「そうですね。街からほど近い距離でしたし、確実にティアム様のお姿も目撃されたことでしょう」
「まぁ、報告書とか書かされなければ良いなぁ」




