むむ……!テンプレイベント、ですね?
はい。リーデのおかげでなんとか馬車酔いを克服した女こと私です。
初日は馬車に乗り始めてから1時間で馬車酔いかましましたが、それ以降は適宜リーデがあの飴玉を渡してくれて馬車酔いとは無縁でいられました。景色とかも見る余裕がありましたし、実に楽しかったですはい。
エクレシアを出てから2日。私達はグルノーミンに辿り着いたのです。街の外には広大な牧場とかも広がっていて、牛や豚、鶏が放牧されていたりの光景も見ることが出来ましたわ。うーん。長閑だァ~。そして潮風の香りもしてきている。
……まぁ、何もなかったわけではありませんがね。と言っても、盗賊がー!とか魔物がー!とかそういう話ではなくて。純粋に道中で車輪が脱輪している馬車を発見しましてね。オランドさんが困っている人を捨て置けないと仰ったこともあり助けることに。とりあえず応急処置で私の魔法を使って馬車全体の強度を上げて車輪を取り付けなおした後、グルノーミンが目的地ということで同行することになったのです。
「いや~、助かりましたぞいオランド氏!まさか、グルノーミンまであと少しという所で馬車が脱輪するとは思いもしませんでしたぞい!」
「いえいえ。こちらも丁度通りかかったものですから。それに、商人仲間を捨て置くことはできませんよバンドラン氏。とはいえ、我々は通りかからなければどうするつもりだったのです?バンドラン氏の腕が立つことは承知ですが……それでも護衛を雇った方がよろしかったのでは?」
「それを言われると耳が痛いんだぞい。まぁ次からはきちんと護衛を冒険者ギルドに依頼しますぞい!」
馬車が脱輪して困っていたのはどうやらオランドさんの知り合いの行商人であるディルダ・バンドランという人だったようです。この人、見た目はドワーフなんじゃないかと疑うほど、ずんぐりむっくりな体形と立派な髭を携えている人なのです。
そして脱輪の原因も馬車自体が何年か使い続けているお古であったため、道のでこぼこを踏んだ時にガタが来たようで……そんな時に私達が通りがかり……という流れでした。
そしてグルノーミンの街。待ち時間なしで街に入れました。ここでディルダさんとはお別れに。
「リンさん!今回は本当に助かったのですぞい!よろしければバンドラン商会に足を運んでほしいのですぞい!そしてオランド氏、今度一杯いかがですかぞい?奥方様も、妻が会いたがっておりましたぞい!」
「ええ、その時は是非に」
「まぁ、シリカが?確かに、お互い結婚してから会う機会も減りましたものね」
私達も商業ギルドへ赴いて解散。3日後に再び帰りの護衛を、ということでそれまでは自由時間になりました。気を利かせてオランドさんが宿を紹介してくれましたが、申し訳ない事に私達は【安寧の地】というか【安寧の鍵】でいつでも快適な我が家に帰れますので利用することはないですねぇ……え?旅情緒がない?知りませんよ?
「それじゃあ小さな騎士様?またお守りくださるかしら?」
「はい!テティがんばります!」
なんて微笑ましい一幕も。まぁさておき。
「ほんじゃあ、街の探索していきましょうかね~」
「「「「おー!」」」」
商業ギルドから歩くとすぐに市場になっているので卵、牛乳、そして海産物を求めて食材を売っているお店を見て回る。卵とか牛乳は比較的安価で提供されていますねぇ。
「安いよ安いよー!採れたて新鮮、卵だよー!」「揚げ卵だよー!とろ~り半熟!美味しいよー!」
「バター買ってかないかーい!これで炒め物すると一味変わるぜー!」「グルノーミン名物揚げバター!食ってみてくれー!飛ぶぜ?」
盛況ですねぇ。……なんか揚げバターとかいう化け物カロリーの食べ物名が聞こえたような気がしますが……気のせい気のせい。
「ねぇリンちゃん。揚げバターって何?この世界特有のもの?」
「全然前世でもあったよ?ただね?ミチルちゃん女の子でしょう?太りたくなかったら……あれは食べちゃダメですよ。ある意味飛びます」
「確かに。カロリーとか……バカにならなさそう……うん。やめとく!」
賢明な判断です。店頭の商品チラ見しましたが、流石に大きさはバター一個まるごとってほどではない。1/4くらい?まぁ、日本の市販のバター一箱基準で、ですけど。
私達5人はぶらぶらしながら買い食いをしたり、乳製品を買いあさったり……もう既にこの時点でグルノーミンに来た目的の9割は果たしたようなもんですねこりゃ。うっひょ~!料理の幅が広がるぜ~!
「リンお姉ちゃん……テティ……あの卵さんたべたい」「良いよー?皆も食べる?」
「食べたい!私、半熟卵好きなんだ!」「私は半熟の卵はあんまり……いやでもうーん……やっぱり食べるわ!」「2個ほど、買ってもよろしいですか…?」
1人2個ずつ買って食べた。衣はサクッと、中はとろ~り、非常に美味でした。もっというと、日本の卵よりも味が濃厚で美味しい……かも?なんかTKGも食べたくなってきましたね~?……米と醤油、卵……条件は揃ってるな?あとでやりますかね。仮にここで醤油がなくなっても悔いはない!と言えるかもしれません。いややっぱダメ。醤油と味噌がなくなったら死んじゃいますわ。【安寧の地】の拡張でどうにかなりませんかね…?
そんな感じでホクホクしてた頃……魚介類の区画に来たのですが……なんだかこっちはさっきほど活気がありませんね?全体的に閑散としていますし、露店とかの商品も、なんか少ないような…?
「なんかげんきないねー?どーしたのかなー?」
「ホントねぇ。ここ、港町よね?畜産よりも魚介の方がにぎわってないとおかしくないしら」
「ご主人様、住人の顔も心なしか、心ここにあらず、といった容貌に見えます。何かあったのでは?」
「まぁ、そうだろうねぇ……」
リーデが言った通りだと思うなぁ。コレあれでしょ?ラノベの主人公御一行が港町訪れるあるあるだよ。
「ねぇねぇリンちゃん。コレ、あれだよね?あるあるだよね?」
「そうだね。多分ミチルちゃんの想像通りだよ?……しょーがない。呑気に観光はオシマイかな~……」
せっかく港町に来たのに魚介類食べずに帰るのだけはしたくありませんからね!まぁ、ラノベのテンプレイベントをなぞること。それもまたある種一つの醍醐味ってやつでしょうよ。頻繁に来るのは勘弁ですけどね!
でも冒険者ギルドに行く前に一度街の人たちにも話を聞いてみますか。
「すみませーん」
「うおっ⁉な、なんだい嬢ちゃん?」
「私達、この街の魚介を楽しみに来た観光客なんですけど……どうしてこんなにも活気がないんですか?」
「ああ、それはまた……タイミングの悪い時に来たものだね……実は、沖の方に大きな魔物が出てね……そのせいで漁にもあまり出られず……漁獲量が大きく減ってしまって……中々商品を補充できないんだ。せっかく来てくれたからにはこの街で採れる魚介も食べてほしいんだけどね……」
「教えて下さりありがとうございます。……早く、漁が再開できると良いですね」
「はは、そうだね。」
あー、やっぱりテンプレでしたねぇ。ほんじゃ、冒険者ギルドに向かうとしますかね。……行く必要、ないと思ってたんですけどね~。




