馬車、舐めてましたわ……
はい。異世界生活始めて11年。旅行は初めてな私です。リンちゃんです。
海産物を求めて!違…くはないですけど違った。卵と牛乳を求めて、いざ!海辺の町の《グルノーミン》へ!まぁ、遊びに行くのではなくお仕事ですけどね。……え?お仕事の方がついでだろって?嫌だな~。言いがかりはやめてほしいものです☆ちゃんとお仕事はこなしますとも。きっちりと。文句出ないくらいには。
集合場所はオランド商会の前。一応依頼を受けた後に、事前に食事に関しては気にしなくていいこと、あと子供も連れていくことは伝えてあります。そしたらなんと、道中のテティアちゃんの面倒はオランドさんの奥様が見てくださるとご提案していただいたのでありがたく提案に乗っからせてもらった。奥様子供好きなんだとか。
「皆さんお揃いですかな?それでは改めまして此度の護衛依頼、引き受けていただき感謝いたします。道中含め、数日の間よろしくお願いいたしますぞ」
「はい、こちらこそ、全力で護衛を務めさせていただきますのでよろしくお願いします」
軽く挨拶を交わした後、オランドさんは隣の女性を紹介した。
「紹介いたしますぞ。こちらは私の家内のミヤザです」
「アグリ・オランドの妻のミヤザ・オランドと申します。皆様の評判はかねがね耳にしておりますわ。依頼達成率100%の期待の新人パーティである、と。数日の間ではございますがよろしくお願いいたしますわ」
すごいご丁寧に挨拶されたのでこちらも丁寧に返すべきですかね?ま、自己紹介はしないといけませんね。
「ご丁寧にどうも。ではこちらも軽く自己紹介をば。私はこのパーティのリーダーを務めております、リンです。後ろにいるのが左からリーデ、ミチル、ルミナ、そしてテティアちゃんです。」
「リーデと申します。お見知り置きを」「ミチルです。よ、よろしくお願いします…!」
「ルミナですわ。よろしくお願いしますわ」「テティアです!よろしくおねがいします!」
ミヤザさんはテティアちゃんに自然に近づき、膝を折りテティアちゃんと目線を合わせた。
「まぁ…!あなたがテティアちゃんね?今日は私と一緒に馬車に乗りましょうね」
「はい!ティアもみやざさま?をまもります!」
「まぁまぁ!とっても可愛らしい騎士様ね」
実に微笑ましい場面ですねぇ。
自己紹介も済ませた所で出立の時間となりました。南門を出て街道へ。グルノーミンの街はここから馬車で2日程の距離にあるらしい。道中は一本道、人の往来も盛んだから滅多に盗賊もいないときた。護衛募集する意味はあるのかと疑いたくなってしまいますが、備えあれば患いなしとも言いますからね。
「しかしリン殿、本当によろしいのですかな?食事代はこちらで持つ予定でしたが」
「良いんです。私、【収納】スキルの中にたくさん食料を収蔵していますので!足りなければ最悪お肉は狩ってきますし」
「ほほ!頼もしいですな。しかしそれではこちらが徳ばかりしてしまいます。ですので、ここは対等に《グルノーミン》に着きましたら食事をご馳走しましょう。商人は無料の貸し借りは嫌いなのですよ」
「ん、分かりました。それで行きましょう。」
まぁ食材の補充……肉だけじゃなくて野菜とかも普通にいつでも補充可能なんですけどね?人前で【安寧の地】周りはあまり使いたくないですけど。むしろ肉の方が安定供給できるかは分かりませんってくらいですよ。
「皆さんもせっかくですから馬車に乗ってください。護衛という名目ではありますが、道中は整備されておりますし、盗賊も魔物も滅多に襲ってはきませんので事実上の同行者ですから」
私達はせっかくなのでオランドさんのご厚意に甘えることにしました。まぁ私とルミナさんは魔法で戦うのがメインの人なので馬車からでも撃退できますからね。
なんて。甘い考えで馬車に乗ったの、私は後悔しましたよ。もうすっごい後悔。
***
馬車に乗って1時間ほど。ここまではまだ耐えていましたが……私は異世界基準の整備された道というのを舐めていました。そしてクッションとかもなく、サスペンション……でしたっけ?ほら、衝撃を吸収するアレ。もない馬車も。
私は知識としては道があまり整備されていないことも、馬車がめっちゃ揺れることも分かっちゃいましたがね……実体験は……別ですね……うっぷ。
「リン様、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ」
「ほんとだー、リンお姉ちゃん、だいじょうぶー?」
「ふふ……だい……じょうぶ、ですよ……」
まぁ、簡潔に事実を申し上げれば……酔った。それはもう盛大に馬車酔いしたのです。我ながらここまで馬車揺れに弱いとは思いもしませんでした。最初の10分くらいは良かったんです。20分くらいから段々、『ん?』とはなったんです。そして40分くらいでもう駄目だった。
「リン殿、一度休憩を挟みましょう」
「いえ……それには、及びま…せん。予定……ズレますし…」
「リン、あんた。魔法でちょっと浮いてなさいよ。私はそうしてるわよ?」
それが出来たら苦労、しないんですよぉ~。【大魔法図書館】使えば、いいだけですけどね?今は呼び出すので、精一杯なんですよぉ~……。浮けても維持が、続かないですし……
「ご主人様、こちらをお舐めになられてください。多少は収まるはずです」
リーデから突然1つの飴玉を渡された。琥珀色の綺麗な飴玉を。
「ナニコレ」
「私の魔力を形にしたものです。ご主人様、家精霊の魔力には人体に安らぎを与える効果もあるのです。そしてこちらを舐めていれば気も紛れるかと思いまして」
「ありがと……」
リーデに渡された飴玉を口に含むと、その効果は絶大でした。口の中で飴玉を転がすとだんだん気分が楽になってきました。助かった~。吐き気も一気に収まった気がします。
……待って?今私何舐めてる?リーデの魔力???意味わかんないですけど……まぁいっか(適当)
せっかくリーデが私のためにしてくれたことですし、私のためを想ってやったことなら私に害もないでしょうし。
ちなみにこの時、私は耳を傾ける余裕はなかったので聞いていませんでしたが、ミチルちゃんとルミナさんは今のリーデの行いを見てコソコソ話していたらしいですよ?
***
「あの、ルミナさん。リーデさんのアレ、普通のことなんですか?」
「全然普通じゃないわよ?確かに魔力を形にすることは出来るわよ?普段の魔法の応用で。でも普通はいくら主人であっても自分の魔力飲ませようとしないわよ?」
「え、じゃあリーデさんのやったことって……」
「黙っときましょ。知らない方が良いこともあるわ」
「そ、そうですね……」
みたいな会話をしていたらしいです。あ、やっぱ普通のことじゃないんですね?まぁそんなことはさておき、馬車酔いを(一時的に)克服した私はなんなら外の景色を見る余裕も生まれたので馬車からの眺めを堪能しました。さっきまでそんな余裕なかったのでね!




