ただの気楽なデートだったはず……?
全然平和なお出かけ回になるはずがなぜ、バトル展開に……?
はい。今日限りのお姉ちゃんが一人増えました私です。リンちゃんです。
フェルンさんとのデートをナンパ男共に邪魔される一幕の後。今日は私はデートと称していますけどもデートプランはフェルンさんに完全にお任せしています。彼女いない歴=年齢の私にデートプランなんて考えつかないのでね!
「そういえば気になってたんだけど……リンちゃんっていつも同じ服よね?」
「そうですね。着れればなんでもいいので。これとおんなじのをあと2つ持ってますよ」
「そんなにカワイイ顔してるのに着飾らないなんてもったいないわ!服!買いましょう!」
ということで服飾屋に連れていかれ、私を見て気に入ったのか店主とフェルンさん合同の(私で)ファッションショー開催され数時間程拘束されました。何着か色違いのワンピースを買ってもらいましたとさ。今度からは今日買ってもらったワンピース着ますかね。上にちょっと裾の長いコート羽織れば私の冒険者スタイル完成しますんでね。
と私のファッション事情はどうでもいいので、置いておきまして。数時間のファッションショーの後、お昼ご飯を食べようと言うことになり、街を歩いていると、なにやら甘ったるい匂いが鼻腔を擽ってきた。甘ったるいな~……吐き気を催す感じ……近くに体臭誤魔化すために香水ぶっかけてる人でもいるんですかね……
ただ……フェルンさんはこの匂いを不快には思っていないようで……
「……あら?何かしらこの匂い……良い香りね。……見て、この食堂から漂ってきているみたい。リンちゃん、入ってみない?」
「…………え、ええ。そ、そうしましょうか……」
おかしい。明らかに何かがおかしい。人為的な公害ものだぞコレ。い、いや。人の感性感覚は人それぞれですからね?否定はしませんけどもね?明らかにフェルンさんの様子がおかしいので放っておけない。だってフェルンさんの様子が蜜に釣られる蜂みたいに感じられるのですから。
フェルンさんに連れられ店に入ると驚き、店内には女性客ばかり、いや。なんなら店内には女性客しかいません。いくら何でもそれはおかしいでしょう?店の雰囲気はおしゃれなカフェという感じでもスイーツショップと言う感じでもなく、本当にただの大衆酒場って感じの店。そして周囲の女性を失礼にならない程度に観察してみると、どこか呆けたような、恍惚としたような表情をしている。
それだけじゃない。水が提供されたけどその水を見ると、私の視界に赤い点滅が発光している。これは【第六感】スキルの効果による危険察知…!この店真っ黒!疑いようのないほど真っ黒クロスケだよ⁉
「フェルンさん、この店怪しいです。急いで出ましょう」
「ん~?うふふ。でもとぉってもいい匂いよぉ~?ずっと嗅いでいたいくらいにはぁ~」
ごめんなさいフェルンさん!あとでいくらでも謝るので、【鑑定】
《名称》フェルン・リーストン
《種族》人間 《性別》女 《年齢》23
《レベル》12 《状態》魅了
魅了状態…⁉この匂いにやられたんですね⁉【鑑定】スキルくん!もっと情報プリーズ!魅了状態の解き方をッ!
《魅了状態の解除には強い感情の揺すぶりあるいは物理的衝撃を与える必要があります》
とりあえずフェルンさんの眼前で手を叩いてみますか。所謂猫騙し。せーの、ほいっ!ついでにフェルンさんに私に纏わせてるのと同じ結界をほいさっ!
「……ぅん?あら、リンちゃん?ここは……」
「正気に戻りました!?良かったー、フェルンさん、なんか魅了状態だったんですよ」
「私が……魅了状態?確かに、なんだか甘い匂いを嗅いでからの記憶が曖昧ね……この感じ……魔族、かしら」
魔族ぅ……それってもしかして今回の場合サキュバス……いや女性がターゲットならインキュバスか?どっちでもいいや。(※良くないですそんなこと言うとサキュバスのお姉さま方に殺されます)とりあえず……フェルンさんとのデート邪魔されてイラついてきましたよ私は~!
「お待たせいたしました皆様。本日は当店へようこそお越しくださいました。さぁ、皆様を素敵な夢の世界へ私自身がご案内致しましょう……フフフ……」
出てきたのはまぁ~……顔面偏差値でいけば相当上位に入ってきそうなイケメンが、ホストみたいな恰好で歩いてきた。最後に怪しい笑みを浮かべるあたりが実に悪役らしい。
こいつか。きっとこの店にいる女性は全員手中だと思ってるんでしょうね。私は小声でフェルンさんに言った。
「フェルンさんはアレの術中に嵌ってるふりしててください。【大魔法図書館】演算開始」
「…………分かったわ。リンちゃんを、余計に危険に晒したくはないもの、ね」
「さぁ、麗しのレディたち。どうぞ、こちらへ」
「再現『シャドウエッジ』」
推定インキュバスのイケメンの足元から影の牙が襲い掛かった。
「おやおやッ!まさか、鼠が迷い込んでいたとは驚きですよ。私の事をかぎつけでもしたのでしょうかっ⁉ああ、そうだ。お返ししますよ『シャドウエッジ』!」
「いいえ、偶然居合わせただけです、よっ!再現『スパークルスターズ』」
返ってきた『シャドウエッジ』に対して私は光属性魔法の『スパークルスターズ』という魔法で応戦する。術者の周囲を小規模な光の爆発で攻撃を防ぐ魔法で相殺。
「くっふふ……厄介ですねぇ、あなた。魔法の展開速度が尋常ではない。何者です?『シャドウカッター』!!」
「ただの冒険者、ですよっ!再現『ウィンドバースト』ッ!」
うむ。やりにくい。周りの女性を巻きこまないようする都合上、大規模な魔法は使えない。となると、初級の魔法でやりくりするしかない。どーするか。被害度外視すれば……倒すのは簡単でしょうがそんなことすれば即刻犯罪者落ちだぞ。
「ふふ、中々なお手前でいらっしゃる。まさか私の中級闇魔法を防ぐとは。驚きですよ。貴女実はレディではないのでは?レディならば確実に私の術に抗えないはずですが」
「どっからどう見ても私は少女だろ!失礼な奴ですね⁉」
というか、ん?中級魔法?今ので?私普通に防御以外は初級魔法しか使ってないんですけど?まぁそんなことはどうでもいいですね。
「ふぅ……致し方ありません。奥の手、使うとしましょう。まずはそこのあなた、この武器を使って、あの少女を殺しなさい」
「はい……仰せのままに」
「そちらのあなた、あなたは組み付き動きを封じなさい」
「はい……仰せのままに」
野郎…!お客さんを盾にしやがった!さぁ……どうしようね?下手な行動すると女性たちを傷つける。しかし抵抗しないと皆死ぬよねコレ。
「そして……そうですねぇ。最もその少女に近いあなた、視界を封じてください」
フェルンさんに向けて、そう命令が下された。しかし。
「嫌よ。誰が誰に向かって命令しているのかしら」
「な、なに…⁉なぜ、私の術が効いていない⁉」
動揺。フェルンさんのおかげで相手の心に顕著な隙が生まれた。この瞬間を逃す手はない!
「再現『―――』」
***
「ねぇリンちゃん。最後の魔法、なんだったの?あの魔族が急に怯えたり発狂して挙句気絶しちゃったけど……」
「さぁ?でも、そうですね……きっと、耐えがたい悪夢にでも襲われたのではないでしょうかね?」
事態はなんとかけが人なしで解決した。今回の件の首班だった魔族の男は無事衛兵により連行された。どうやら各地で女性を誑かしては食い散らかしていたらしいのです。王国サイドも手配をしようとしたそうですが、如何せん名前も顔も割れてない状態だったために不可能だったと。そして朝一でフェルンさんにしつこく絡んでいた男達はそいつに脅されてナンパ役をやっていただけなのだとか。
はぁ。まったく。せっかくのデートは午前だけでおしまい。あの事件のせいで午後は事情聴取につきあわされましたよ。呪詛たっぷりで死ーねーばーいいのにって歌ってやろうか。
あの時、結局最後に何があったのか、それは……
***
動揺。フェルンさんのおかげで相手の心に顕著な隙が生まれた。この瞬間を逃す手はない!
【魔法創造】発動。
(セットアップ。名称『ミッドナイトエンド』)
『スキル【魔法創造】の発動に成功しました。スキル【大魔法図書館】に記憶されました。以降【大魔法図書館】からの再現が可能になります』
「再現『ミッドナイトエンド』」
***
この魔法は対象とした単体相手を常闇の空間に精神だけ閉じ込めるのです。そして対象に悪夢を見せる魔法。実は以前に似たような魔法を作ったことがありましてね。それを闇属性版に応用したわけです。結果あの魔族は発狂して気絶し、女性たちの魅了状態も解けたのです。まぁ、無事解決して良かったと思うことにしましょうか……




